『愛がなんだ』今泉監督の新作が2週連続で公開!“恋愛”とはいったい何?

2020.1.23
映画『mellow』01

文=宮田文久 編集=森田真規


交差する片想いを描き、若い女性たちから圧倒的な支持を得て2019年に大ヒットを記録した恋愛映画『愛がなんだ』。それを手がけたのが、今最も忙しい映画監督と言っても過言ではない今泉力哉だ。
2020年公開だけでも少なくとも3作の監督を務め、しかもそのうち2作がこの1月に公開される。1月17日に公開された田中圭主演の『mellow』に、男性カップルのドラマを描いた1月24日公開の『his』である。
ここでは「恋愛映画の旗手」と呼ばれる今泉作品の魅力について、今泉監督へのインタビュー経験もあるフリーランス編集者の宮田文久氏に分析してもらった。


今泉力哉はなぜ「恋愛映画の旗手」と呼ばれるのか?

あなたが誰かのことを想うとき、他の人は邪魔だろうか。あるいは、社会は?

たしかに1対1の、ふたりの間によけいなものが挟まらない関係のほうが、真っすぐで、純粋に感じるかもしれない。特に恋愛においては。

友人、家族、学校、職場、そして目に見えない世の中の規範や倫理。人が人のことを想うとき、この世界にはたくさんの雑音が満ちていて、ときに私たちの恋路を妨げているように見える。

でも、だとすると、1月17日に『mellow』が公開され、そして1月24日に『his』の公開が控える今泉力哉監督が「恋愛映画の旗手」と呼ばれていることは、とても不思議に思えてくる。

もちろん、過去の作品の多くは恋愛映画だった。『愛がなんだ』、『アイネクライネナハトムジーク』、『パンとバスと2度目のハツコイ』……。岸井ゆきのと成田凌、三浦春馬と多部未華子、深川麻衣と山下健二郎(三代目 J SOUL BROTHERS)と、そこではとても魅力的な男女が描かれてもいた(いわゆる恋愛映画ではないだろうが、『退屈な日々にさようならを』の松本まりかも印象的だった)。

しかし、その上で不思議なのだ。なぜならこれらの「恋愛映画」には、純粋な二者関係ではないものがたくさん描かれているのだから。

誰かがふたりでいると、すぐもうひとりがスクリーンに映り込んでくる。今泉作品の、3人(以上)のシーンの多いこと! 過去作品でも特徴的だったが、新作を観ていると、さらに目を見張るものがある。

それなのに、果たしてなぜ、「恋愛映画」として人の心を捉えるのだろうか。いったい私たちは、誰に、何に恋をしているのだろうか。

「ほとんどの好きって気持ちって、表立ってやりとりされないものでしょ?」――『mellow』

映画『mellow』(メロウ)予告編

いくつかの恋愛模様が柔らかなタッチで紡がれていく『mellow』では、予告編にもあるように、主人公の花屋・夏目誠一(田中圭)が客である青木麻里子(ともさかりえ)に告白されるシーンで、なぜか麻里子の夫が横にいて、観客のクスクスとした笑いを誘う。

古川木帆(岡崎紗絵)が店主を務めるラーメン屋、浅井宏美(志田彩良)が佇む中学校の屋上――さまざまな場所で、誰かが誰かと二者関係を結びそうになるときは、必ずといっていいほど別の第三者が、ひょっこりと顔を出す。

それって三角関係では?という人もいるかもしれないが、そうしたドロドロしたイメージとは少し違う。「私も最初からこの世界で一緒に生きていますが、何か?」と言わんばかりに、自然とその第三者(たち)は登場するのだ。

『mellow』の人々の関係性は、こうやって刻々と変わっていく。「ほとんどの好きって気持ちって、表立ってやりとりされないものでしょ?」とは劇中の台詞だが、干渉し合う波紋のような静かなダイナミズムが、全編を貫いている。

同性愛というテーマも自然と社会性を帯びていく

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宮田文久

(みやた・ふみひさ)フリー編集者。1985年、神奈川県生まれ。Ex.株式会社文藝春秋(「淑女の雑誌から」担当時は、机上がハードなレディコミであふれた)。博士(総合社会文化)。雑誌『DISCO』編集人、イベント『わたわたフェス』主催。インタビュアーとなる機会も多く、2016年の独立以降では、一柳慧、細..

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