唯一無二のノンフィクション漫才師、ウエストランド

2020.12.30

文=かんそう 編集=鈴木 梢


かつてはアルコ&ピース、パンサーと共に『笑っていいとも!』の準レギュラーにも抜擢され「ネクストブレイク芸人」とまで言われたウエストランド。傷つけない笑いがよしとされる今の時代において、まわりどころか自分すら無作為に傷つける笑いを12年間やりつづけている唯一無二の悪口漫才師。

『M-1グランプリ2020』では惜しくも優勝を逃したが、最後の最後に出てきてただただ言いたいことをぶちまけて去っていくその姿は改めて世間に「ウエストランド」の名前を知らしめた。その魅力に少しでも迫っていきたい。

「ネタのおもしろさ=人間のおもしろさ」

今大会で「最も印象に残った芸人は誰か」と問えばウエストランドの名前を挙げる人も少なくない。

『JUNK おぎはやぎのメガネびいき』(TBSラジオ)では「あんな出番(ラスト)で出るのがかわいそうなくらい小者なんだから、絶対にラストに出てくる奴らじゃない。でも小者ながらにおもしろかった」と労いの言葉をかけていたし、『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)内でもDJ松永が「最高」「大好き」と公言していた。悪口漫才師を欲している人間は確実に存在している。

「かわいくて性格のいい子はいない」

「お笑いは今まで何もいいことがなかった奴の復讐劇」

は確実にM-1グランプリ2020屈指のパワーワードだったし、日常生活の至るところで「え……? いないよ……?」と思うことが増えた。誰もが自動ブレーキつきエコカーで走る道路をトゲつきの改造車で逆走する彼らの漫才は疲れた身体と心にズッポリ突き刺さり大きな傷と同時に大きな「癒やし」にもなった。「毒は薬にもなる」ということが改めて証明された。

彼らの漫才のすごさは、「ネタのおもしろさ=人間のおもしろさ」に直結しているというところにある。自分自身を極限までさらけ出す、まさに唯一無二の「ノンフィクション漫才」、それがウエストランドだ。たとえば、お笑いファンの間ではもはや伝説となった「いぐちんランド」。あの事件を経て、ウエストランド井口浩之という人間のおもしろさは確実に増していたし、あれがなければM-1決勝は叶わなかったのではないかとさえ思う(現に準決勝で自虐的に「いぐちんランド」をネタにし会場の空気を一気に自分たちのものにした)。

件のオールナイトニッポン0でDJ松永が「(井口の言葉は)魂乗っかり過ぎてた。マジでブルース。ブルースかつヒップホップ」と評してたように、ある意味ウエストランドの漫才は己の怒り、悲しみ、憎しみといった感情を純度100%でぶつける「歌」でもあるのかもしれない。

ふたりのしゃべりの比重の差


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