『M-1グランプリ2020』2回戦のおすすめネタ7選

2020.11.18

文=かんそう 編集=鈴木 梢


『M-1グランプリ2020』は予選ネタ動画がYouTubeで配信されており、2回戦に進出した500組の全ネタを観られるようになっている。ということは、お笑いファンにとっておもしろい芸人が次から次へと現れるお笑い無限ループに突入したと言っても過言ではない。今回はその中でも特に衝撃を受けたネタを紹介したい。

ヤーレンズ『花屋』

2011年結成、楢原真樹と出井隼之介のコンビ。特筆すべきはその安心感。楢原の軽快なボケと出井の絶妙なツッコミ、いい意味で緊張をまったく感じさせない力の抜けた漫才は「一生観ていられる」。

ふたりがただかけ合いしているだけでもじゅうぶん過ぎるほどおもしろいのだが、今年はコント漫才としての完成度が素晴らしく「花のニクマサ」の掴みから終盤に「花をタコ糸で縛る」→「肉のハナマサ」に帰結していく流れが最高だった。

蛙亭『焼き鳥屋』

2011年結成、岩倉美里と中野周平のコンビ。ポップな見た目に油断してるといきなりうしろから刺されるような意外性を秘めたネタが特徴だが、今回はたとえでもなんでもなく本当に「うしろから刺された」。その仕かけがウケるのもふたりの繊細で絶妙な演技から生まれるネタへの没入感の高さがあってこそだと思った。ぜひお茶の間でこのネタを披露して、悲鳴と爆笑をかっさらってほしい。

シンクロニシティ『英会話』

2017年結成、西野諒太郎と吉岡陽香里のコンビ。異常に滑舌がいい西野と異常に暗い吉岡、結成3年目にもかかわらず、ほかの人間では成立しない「このふたりにしかなし得ない漫才」を確立しているのが本当に恐ろしい。ひと言目を発した瞬間から一瞬で「こういうコンビだ」と理解させる役割の徹底ぶりがすごい。

中盤、”No”と”Shut Up”のみで英会話を成立させるボケをキーにしてシームレスに「嫌です」「黙れ」の日本語転換して会話をするくだりは何回観てもおもしろい。キャラクター性のみならずネタの流れが徹頭徹尾美しく、後半にかけてどんどんギアが上がっていく。

インポッシブル『オリンピック』

2005年結成、えいじとひるちゃんのコンビ。15年間、叫び、血を流し、臓器を出し、コンビ名のとおり命を削って爆発しつづけているあらゆる芸人の中で最も「ソーシャルディスタンスが似合わないコンビ」。

ひるちゃんがさまざまなオリンピック競技に挑戦するもすべて失格になるという元は数年前からあるコントだが、ふたりのやりとりが加わったことで圧倒的なライブ感が生まれて確実に破壊力が増していた。最後のツッコミで相方をステージ外まで吹っ飛ばして絶命させるのは絶対にインポッシブルにしかできない。

Dr.ハインリッヒ『砂漠』

2005年結成、幸と彩のコンビ。そのテーマの壮大さと、ネタの異次元性でたびたび「文学」と評されるDr.ハインリッヒの漫才。別世界に飛ばされ、脳と脳の勝負を挑まれてるような気持ちになる。毎年1ミリもブレることなくその世界観を貫いてきたふたりだが、今年はかなりすごい。

砂漠を歩く、蟻地獄に落ちる、世界一長い商店街を歩く……といったように、いかにも伏線が散りばめられた状況と出来事の説明がつづく。しかし最終的な落としどころでブレなさを改めて感じさせられる。すごいとしか言いようがない。なんだこれは。

真空ジェシカ『商店街ロケ』

2012年結成、川北茂澄とガクカワマタのコンビ。とにかく引き出しの多さとバリエーションが異常で、死角から飛んでくるフリッカージャブのようなカワマタのボケと、川北の嘆きにも似たエモーショナルあふれるツッコミ、毎年すごいが今年は特に洗練されていて1ボケ1ツッコミ最初から最後まで全ておもしろい。

しかもただおもしろいボケとツッコミを散りばめているだけじゃなく、「偏った政党のポスターが多い」、「年寄りから多く取ろう」、「憲法撤廃」のポスター、「ジャンプの掲載順と同じ並び」、「わけのわからない迷走した店が増える」、「出口が近そう」などボケがつながっていくのは圧巻。

モグライダー『郷ひろみ』

2009年結成、芝大輔とともしげのコンビ。自分たちの決めたルールでどんどんがんじがらめになっていくともしげと、ミスをひとつも逃さず鬼のようなキレ味でツッコみつづける芝、どこまでがネタでどこからがアドリブなのかモグライダーでしか味わえない「生感」は唯一無二、一度ツボにハマると抜け出せない圧倒的な中毒性がある。

今年は「郷ひろみは朝起きてから家を出るまで1ひろみから5ひろみに仕上がってくる」という謎のネタで、全裸の郷ひろみが何度も外へ出ていくくだりは「永遠に笑える」。決勝でモグライダーのネタを観て今田耕司が笑い過ぎてハンカチで涙を拭いているシーンが観たい。

紹介したネタ以外にも数え切れないほどのお笑い芸人が死ぬほどおもしろい漫才を披露している。できれば「500組全員決勝行ってほしい」とさえ思う。だからこそ誰が行っても最高の『M-1グランプリ』になることは間違いない。12月20日はテレビの前で伝説を見届けたい。


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