大好きな夫の“彼女の存在”を認める妻。早川義夫『女ともだち』に登場する特殊な夫婦のかたち

2020.11.17

文=僕のマリ


大人になってからできた友達というのはいいなあ、とつくづく思う。学生時代からの長い付き合いも素敵だけど、それよりもっと「縁」を感じる。

※本記事は、2020年10月24日に発売された『クイック・ジャパン』vol.152掲載のコラムを転載したものです。


“妻”であり“親友”。出産報告は「我が家に“仲間”が増えました」

6歳年上の友だちとは2年前に同人誌即売会で知り合ったのだが、いまでは一緒に日記集を作る相方になった。そして、彼の妻とも友だちになり、3人で食事をしたりお茶したりする時間がとても落ち着く。ふたりともそれぞれの良さがあるのだが、夫婦揃っているときに醸す空気が特に好きなんだと思う。「いつも一緒ですね」と言うと「我らは友だちがいないので……」と自虐するが、いつも幸せそうでわたしもうれしい。

早川義夫著『女ともだち』を読んだ。結婚しているにもかかわらず何度も彼女を作り、妻である「しい子」こと靜代もそのことを許している、特殊な夫婦の形が描かれたエッセイ。それでもなお、本作には亡き妻への愛情がこぼれ落ちている。

しい子は浮気を許すどころか、夫が女の子に嫌われないように助言したり、彼女にあげるプレゼントを見繕ったりするほどおもしろがっていた。そんな余裕をみせる一方で、「主人のことが大好きなの」と他人にのろけることもあったそうで、ますますしい子がわからなくなる。

著者は女好きで、スケベであることを堂々と公言している。20代の女性である自分が読んだら不快になるような内容のはずなのに、ここまで実直なことを書けるほうが高潔で美しいと感じた。ありのままの自分を見せられるという幸福は、その最中にいるときにはなかなか気づけない。そんな切なさも募った。

先日、相方に子どもが生まれた。「まだ公にはしていないのですが」と妊娠したことを教えてくれたときは誇らしい気持ちになった。「子どもがほしい」なんてひと言も聞いたことはなかったし、そんな話が出たこともないけれど、素直な気持ちで祝福できたし、目が潤んだのをよく覚えている。

『女ともだち』を読んで、ふたりのことをすぐに思い出した。以前、相方が「妻は親友でもある」と言っていたことが印象的だったからだ。たしかにふたりはいつもふざけ合っているし、気の合った幼なじみのような関係にも見える。恋愛の甘さとはまた違った、強い絆と結束。

「妻が頑張ってくれて、我が家に仲間が増えました」と彼がSNSで報告している一文を見て、はっとした。よくある「子どもが生まれました」「家族が増えました」という言い回しではない。子を「仲間」と呼んでいることに、むしょうに感動した。うまくやっていけると思う。

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僕のマリ

(ぼくのまり)1992年生まれ、物書き。犬が好き。2018年、短編集『いかれた慕情』を発表。ネットプリントで印刷できるエッセイをたまに書いている。

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