今までは人間のアイドルが集結していたイベントだった、と書かなければいけなくなった。
世界最大級を謳うアイドルの祭典『TOKYO IDOL FESTIVAL』(以下TIF)。各地からこのイベントを目指して努力をつづけるアイドルは多い。2010年から開催されており、今年は11年目にして初のオンラインライブ。出演するラインナップにはAKB48、ももいろクローバーZ、でんぱ組.incなど、アイドルにそこまで詳しくない人でも知っているであろう有名メンツも集結している。
今年のTIF2020では、バーチャルYouTuber・VTuber・バーチャルアイドルがかなりの数参加している。VTuberはアバターを用いて活動をしているため、ビジュアルとしては「2次元」だ。一気に「アイドル」の概念が、次元を乗り越えた。
「アイドルファン層」と「VTuberファン層」はあまり一致していない。TIFへの参加について「推しがすごいところにお邪魔しにいく」という意見が、VTuberファンのSNSでは見受けられる。もっとも、この取り組みは単に話題だからとミックスしたわけではないだろう。「アイドル」というエンタテインメントの意義に立ち返ってより深化させる意志のある企画だと思いたい。そのための準備と決意は去年すでにできていたからだ。
目次
バーチャルアイドル「えのぐ」の挑戦
TIF2019にバーチャルアイドルとして、ひと組だけステージに立った少女たちがいた。岩本町芸能社所属の「えのぐ」だ。ラインナップにひと組だけ2Dイラストで混ざっており、非常に目立っていた。アウェー感がものすごい。
彼女たちはガッチガチの正統派のアイドルとして2017年から活動をつづけてきた。各地でヘッドマウントディスプレイをつけたファンと会話する地道な握手会的活動からはじまり、メンバーの参入、ファーストライブ前のメンバー休止と引退、AR3Dでのライブという特殊な舞台、そしてメジャーデビュー。アイドルグループとして苦楽を味わいながら、歌とダンスを武器にまっすぐにファンの前に立ちつづけてきた。
TIF2019に来ていた観客で、彼女たちを知っている人はそこまで多くなかった。えのぐ側も「TIFに出るえのぐってなんだろう?」という声がSNSにあったことを確認済みで、それを覚悟の上でより多くの人に知ってもらうことも目的だと事前放送で語っている。彼女たちはバーチャルであるということは武器にしない。リアルのアイドルと同様に、歌とダンスでの表現を掲げ、唯一のバーチャルアイドルとしてTIFで観客の前に立った。
実際の評判がどうだったのかは統計を取れないのでわからない。ただリアルアイドルの中に入ってきっちりアイドルとしてのパフォーマンスをやり遂げたのは事実だ。
VTuberファンの間で、えのぐの活躍は大ニュースだった。あのTIFにバーチャルで参加したなんて。人間に混じってアイドルのひとりとして認められるんだろうか。えのぐファンは彼女たちの真摯で血のにじむような努力を見てきているから(本当に山あり谷ありだった)、心からえのぐを応援していた。この一連の流れ自体が、立派に「アイドル」の生き様だった。
『えるすりー』とバーチャルアイドル
TIF2020の前に、ふたつ大きなバーチャルアイドルイベントがあった。ひとつは『VILLS』。正式に「アイドルイベント」とは銘打たれてはいないが、普段からバーチャルアイドル活動をしているメンバーが数多く集結し、パフォーマンスを繰り広げた。ステージが15分くらいと短めで、わざわざ舞台の奥から出入りしている(本来バーチャルだから、その移動演出はないほうが遥かに技術的に簡単だ)あたり、かなり意図的にアイドルイベントのやり方を踏襲している。
もうひとつは『Life Like a Live』通称『えるすりー』。こちらは「バーチャルならではのやり方で、バーチャルアイドルが世界を盛り上げていきます」と銘打っている、完全なバーチャルアイドルフェスイベント。バーチャルらしい自由自在な映像をフル活用し、派手な演出が飛び交った。
配信プラットホームはSHOWROOM、SPWN、niconico、MixChannel、bilibiliと多岐にわたり、企画ステージ、バックステージ、同時視聴、グッズ、運動会と内容盛りだくさんな4日間のイベントになった。
『えるすりー』には、えのぐと共に中心として活動していた3つのバーチャルアイドルグループがある。彼女たちは今回のTIFでも活躍するのでここで紹介しておきたい。
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