『アンという名の少女』1話。原作まんまのアンだ!だが、ジェンダーの問題と勇敢に闘う現代のアンなのだ



コンプレックスをごまかさないアン

なんといっても主人公アンが、素晴らしい。

駅のベンチに座ってるシーンを見て、「わーーーーアン、アンがいるーーー!」と歓喜したファンも多いはず。

「11歳」「小さな顔は青白くて、肉が薄く、そばかすが散っている」「口は大きいが、目も大きく」「額が広く豊か」(『赤毛のアン』松本侑子訳/文春文庫)

「11歳」「小さな顔は青白くて、肉が薄く、そばかすが散っている」「口は大きいが、目も大きく」「額が広く豊か」まさにアン!Netflixオリジナルシリーズ『アンという名の少女』シーズン1~3独占配信中
「11歳」「小さな顔は青白くて、肉が薄く、そばかすが散っている」「口は大きいが、目も大きく」「額が広く豊か」まさにアン!Netflixオリジナルシリーズ『アンという名の少女』シーズン1~3独占配信中

読者の脳内イメージが具現化したアンが、そこにいる。「とても不器量だから」と本人がコンプレックスに感じているアトリビュート(属性)をごまかさずにしっかりと実写化した。

高畑勲のアニメ版アンと『アンという名の少女』のアンが、あまりにもそっくりなので、アニメのパクリなんじゃないかという珍説も見かけるほど。

いやいや、どちらも原作のイメージを大切に守った結果なのだ。

「主人公があの外見では観る気しない」とネットに書き散らされたルッキズムには、「あなたなんか、無礼で、礼儀知らずで、思いやりがないわ!」と言い返しておく。
観れば、アンを演じたエイミーベス・マクナルティが、見事に「この寄る辺のない女の子の体には、並々ならぬ魂が宿っている」ことを表現していることがわかるのだから。

マリラやリンド夫人も、原作のイメージどおりと言っていいだろう。

マシューは、なじみのある「そうさな」(村岡花子訳、松本侑子訳)「そうさのう」(高畑勲版)がないのがちょっと寂しい。

が、この部分は翻訳の変化。「そうさのう」と訳された「Well now」のセリフはドラマでもちゃんとしゃべっている。今回の吹き替えでは「うーん、なんだろうな」等と状況に合わせて訳されているのだ。

だが、今夜NHKで放送される第2話の「運命は自分で決める(後編)」を観ると、原作ファンは「マシューーーー!」と驚きの声を上げるだろう。マシューのイメージを超えてしまう。なにしろ、あのマシューが!!! って、ネタバレになっちゃうな、まだ観てない人のために内緒にしておこう。

『赤毛のアン』L.M.モンゴメリ 著、松本侑子 訳/文藝春秋。詳細な注釈がついた新訳版
『赤毛のアン』L.M.モンゴメリ 著、松本侑子 訳/文藝春秋。詳細な注釈がついた新訳版

ドラマで追加されたいいセリフ

「女の子が農場の仕事をやっちゃいけないなんておかしい。女の子は男の子よりいろんなことができます。おばさんは自分が何もできないと思うの。そんなことないでしょ」

マリラに「農場を手伝ってもらいたいから女の子はいらない」と言われ、アンが反論する場面。

原作では言い返さない。このドラマのオリジナルのセリフである。原作『赤毛のアン』もジェンダーに関して意識的だが、ドラマ版ではもっと明確な主張として現れる。

このセリフのあと、アンを置いておけるかどうかマリラとマシューは議論になり「(アンは)役に立たない」「わたしらが役に立つかも」と語り合う原作にもある名シーンにつながるのだ。

今夜の放送は「運命は自分で決める(後編)」。Netflix版の第1話89分をNHKの放送では2話に分けた。その後半。盛り上がるよ。

アン「この壮麗な景色にうっとりしています」マシュー「危ないよ気をつけて」Netflixオリジナルシリーズ『アンという名の少女』シーズン1~3独占配信中
アン「この壮麗な景色にうっとりしています」マシュー「危ないよ気をつけて」Netflixオリジナルシリーズ『アンという名の少女』シーズン1~3独占配信中

『アンという名の少女』

原題:Anne with an “E” 制作:2017年 カナダ
原作:L・M・モンゴメリ
製作総指揮:モイラ・ウォリー=ベケット

キャスト
アン・シャーリー(エイミーベス・マクナルティ)(上田真紗子)
マリラ・カスバート(ジェラルディン・ジェームズ)(一柳みる)
マシュー・カスバート(R・H・トムソン)(浦山迅)
ダイアナ・バリー(ダリラ・ベラ)(米倉希代子)
ギルバート・ブライス(ルーカス・ジェイド・ズマン)(金本涼輔)
レイチェル・リンド(コリーン・コスロ)(堀越真己)
ジェリー・ベイナード(エイメリック・ジェット・モンタズ)(霧生晃司)

Netflixオリジナルシリーズ『アンという名の少女』シーズン1~3独占配信中
NHK総合で日曜の午後11:00から全8回

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米光一成

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米光一成

米光一成 (よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ..

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