前代未聞の映像体験!“死”と真正面から向き合ったアニメーション『ミッドナイト・ゴスペル』とは?
ドラッギーな映像が話題となっているNetflixオリジナルのアニメーション『ミッドナイト・ゴスペル』。なんといっても注目なのが、「ポッドキャストのアニメーション化」という特殊な構成だ。
そして、気鋭のアニメーション評論家の土居伸彰は本作を「死と繰り返し出会うことによる変容の物語だ」と評する。ポイントは最終話となるエピソード8にあるのだとか――。
目次
世にも珍しい「ポッドキャストのアニメーション化」
2020年4月20日、Netflixにてシーズン1が公開されたシリーズ『ミッドナイト・ゴスペル』は、アニメーションとして珍妙で、しかしその独特さが持つ必然性によって、観る者の心に深く刻まれる。
本シリーズは、2010年代、世界を席巻したアメリカのアニメーション・シリーズ『アドベンチャー・タイム』の生みの親ペンドルトン・ウォードが、俳優・コメディアンのダンカン・トラッセルと組んで制作したものだ。トラッセルのポッドキャスト『ダンカン・トラッセル・ファミリー・アワー』のファンだったウォードがトラッセルに熱烈なアプローチをしたことで成立した企画である。
本作は、ほぼ類例のない「ポッドキャストのアニメーション化」であるという点において珍しい。そしてさらに、そのアニメーション化の仕方、何よりも映像と音声との関係性が、その珍妙さをさらに押し進める。
クロマティック・リボンと呼ばれる次元宇宙において、主人公の若者クランシー(トラッセル本人が声を演じる)は、ポッドキャストの宇宙版「スペースキャスト」を行う。マルチバース(多元宇宙)・ジェネレーターで作り出した星にアバターをまとって訪問し、その星の住人をゲストとしたインタビューを全宇宙に配信するのである。各エピソードでは、過去、トラッセルのポッドキャストに出演したなんらかの分野の専門家が招かれ、クランシー=トラッセルと対話する。かつてのポッドキャストを「再演」するのだ。ただし、後述する特殊な状況に置かれながら、である。
「ポッドキャストを『インディ・ジョーンズ』を組み合わせた」ようなもの
インタビューや対話を再演しアニメーション化するという試みは、実はそれほど珍しいものではなく、「アニメーション・ドキュメンタリー」というジャンルによく見られるものである。それらの作品では一般的に、アニメーションが音声の挿絵のような役割となることが多い。
一方、『ミッドナイト・ゴスペル』はそうではない。映像と音声はそれぞれ別々の話を語るのだ。まるでひとりの人格が分裂するかのごとく。実際、レコーディングに招かれたゲストたちは「分裂」を要求される。ゲストは専門的な話をしながら、一方でその話の内容とは直接的には関係のない、奇妙な星の住人が立ち向かうアドベンチャーを演じるのだ。そんな本シリーズの映像と音声の関係性について、制作者たちは「(専門的な内容の)ポッドキャストを『インディ・ジョーンズ』と組み合わせた」ようなものと評している。
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