『日本沈没2020』を観るべき4つの理由。日本社会の崩壊と再生に彩られた物語
湯浅政明監督が手がけるNetflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』。アニメーション制作に没頭する女子高生の姿を瑞々しく描いた『映像研には手を出すな!』の次に彼が取り組んだのが、小松左京の大ベストセラー小説『日本沈没』(1973年)のアニメ化だ。
急激な地殻変動により“日本の国土が沈没してしまう”という基本設定以外は大胆なアレンジが施され、現代における日本という国家とそこに暮らす人々についてフォーカスが当たった内容となっている。
ユースカルチャーの変化を巧みに取り入れてきた湯浅監督らしい描写や演出は本作にも継承されており、意外にも思えた湯浅作品×ディザスターSF、という組み合わせがバッチリとハマった一作だと言えるだろう。その『日本沈没2020』の魅力を、「主人公」「都市サバイバル」「ユースカルチャー」「湯浅政明」という4つの視点から紐解いていく。
目次
国際色豊かな「武藤家」の視点から見る『日本沈没2020』
湯浅版『日本沈没2020』と原作との大きな変更点であり、さらに本作の核となるのが、物語の視点を科学者や為政者の立場からではなく、武藤家という一市民に定めたことであろう。
主役となる女子中学生・武藤歩は、母がフィリピン出身、父が日本人のミックス。冒頭では、陸上選手として強化指定選手に選ばれるなどその将来を嘱望されており、オリンピック出場を目指して充実した日々を送っている。
彼女の弟である剛はあまり日本に対して愛着がなく、IT先進国であるエストニアをはじめ、携帯ゲーム機を通じて海外にネットワークを持っていることが示唆される。武藤家の視点は純日本家庭と比較してグローバルであり、それゆえ、こうした国家的な窮地に立たされた際には差別されてしまう可能性にも言及されているのがポイント。
特に歩は、陸上選手として国家からは「優遇」されているものの、日本人という立場からは「不遇」であるシビアな現実を、天災の当事者となったことで実感していくのだ。それを私たちは、「フィクションだから」と自信を持って切り捨てることができるだろうか?
サバイバル作品の視点から見る『日本沈没2020』
東京を襲った大地震により、武藤家は一瞬にして日常を失ってしまう。なんとか生き延び、フィリピンから帰国したばかりの母も含めて再集結した家族は、幾人かの同行者と共に東京からの脱出を試みる。
歩の父・航一郎は、希望を失わない旺盛なバイタリティとサバイバル術に長けた人物で、しっかりと家族を牽引するだけでなく、都市崩壊というシリアスで目を背けたくなる物語をも牽引してくれるポジティブな好人物として視聴者には伝わる。
そうした航一郎の存在感に目が行く序盤の内容は、アニメ『東京マグニチュード8.0』や、その参考資料となった古屋兎丸のマンガ『彼女を守る51の方法』にもつながる、「災害が大都市を襲ったとき」にどのような心構えでいるべきか、というひとつの指標にもなり得るものだ。
ただ、それが『日本沈没2020』においては序章でしかないのを、ほどなくして思い知らされることにもなるのだが……。
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