『生勇者ああああ』はなぜ『ピラメキーノG』を復活させ、2011年にタイムスリップしたのか。

2020.7.9

文=板川侑右 写真・編集=鈴木 梢


アルコ&ピースがMCを務めるテレビ東京の『勇者ああああ』。お笑い芸人やちょっと変わった著名人たちが登場する、ゲームが絡んでいればなんでもありのゲームバラエティ番組だ。

そんな番組がある日、初の有料オンラインイベントを生配信することになった。『テレ東 無観客フェス 2020』と題し、テレビ東京が人気番組を中心とした日替わり企画を9日間生配信することになったのだ。『勇者ああああ』企画は、7月1日水曜日に配信が決まっていた。しかしその決定が下されたのは、配信日のわずか1カ月前のことだった。

1500円のチケット代を払った番組ファンたちを喜ばせるべく同番組の演出・プロデューサーの板川侑右が考え抜いた先にあったものは、いったいなんだったのか。『生勇者ああああ~無観客生配信って聞いたんで面白いけど地上波でボツにしてた企画、ちょっと試してもいいですかライブ~』が配信されるまでの1カ月と、板川のAD時代を振り返る。

決まらない出演者と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

この記事を書いている今現在、僕は翌日に開催が迫った番組初の有料オンラインイベント『生勇者ああああ』の準備で大忙しである。

会社から今回のイベント制作の依頼があったのはわずか1カ月前のことだ。かなりの急発注ではあるが、チケット代1500円を払ってくれた番組ファンの思いを考えるとテキトーな物は作れない。僕自身、大学生のときに1500円払って観に行った知り合いの演劇があまりに退屈で、帰宅後に5000文字を超える罵詈雑言をmixiに投稿した経験があるので「有料」という言葉の重みはじゅうぶんに理解しているつもりである。

とはいえ短い制作期間だと弊害も出てくる。一番の問題はキャスティングで、開催日がギリギリであればあるほど人気者がなかなかハマらない。とりあえずMCであるアルコ&ピース、準レギュラーのペンギンズ・ノブオ、そして番組のスーパーエースであるラブレターズの3組のスケジュールは押さえたが1500円の満足度にはまだまだ足りない。居酒屋のメニューでたとえるなら「枝豆」「たこわさ」「梅水晶」ぐらいのいろんな意味でしょっぱいラインナップである。

しかしここからキャスティングはまさかの難航。マヂカルラブリーをはじめとする“番組でハネた”面々がライブやら収録やらでことごとくハマらない。一番心が折れたのはキャスティング担当のAPから

「ななまがり森下直人さん……終日スケジュールないそうです」

と、報告を受けたときである。さすがの僕も「そんなに忙しいわけねえだろう!」と激昂。ムーシー藤田すらキャスティングできない自らのブッキング力の低さを激しく悔やんだ。

※ムーシー藤田
ななまがり森下扮する架空ものまねタレントの名前。

こんなに悔しいのは3年前に番組内の企画「コマンド危機一髪」のゲストブッキングでこれまたキャスティング担当のAPから

「マシンガンズさん……テレ朝と裏かぶりでNGだそうです」

と、言われたとき以来である。そのときも僕は「マシンガンズが忙しい世界線なんか存在するわけねえだろう!」とまあまあ激昂したのを覚えている。

番組でおなじみのメンバーがハマらない以上、おなじみの企画をやることはできない。早急にライブ用の新企画を考案しなければ、そんなことを会議で話していると突然、放送作家の岐部昌幸がこんなことを語り始めた。

「僕、この歳になるまで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観たことなかったんですよ。この前やっと『金曜ロードSHOW!』で観たんですけど……あれおもしろいですね〜!」

映画界を代表するあのSF超大作を42歳になるまで一度も観てなかったという衝撃の告白。「デロリアンがタイムトラベルをするためには1.21ジゴワットの電力が必要」という30年前の映画談義を2020年に嬉々として語るマーティ・岐部・マクフライの登場に会議は大いに沸いた。そしてそのとき、僕の頭の中にも「タイムスリップ」をテーマにした新企画案が浮かんだ。そういえば僕にも13年間のテレビマン人生の中で戻りたい瞬間があったと。

お蔵入りになった『ピラメキーノG』最終回


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