血筋は必要なく、性別や出自も関係ない
ディズニーがやるべきなのは、「これから先はディズニーのスター・ウォーズを作ります」という意思表示だった。旧作から引き継ぐべき要素は引き継ぎ、置いていく要素は置いていき、時代に合わせてアップデートしながら、新しいスター・ウォーズの物語を紡いでいきますよ、という宣言である。そういう目線で『最後のジェダイ』を観ると、ディズニー自体の意思表示と物語のメッセージが噛み合った作品であることがわかる。
ルークは老いてなお自らの行動や後進の育成について悩み、そこに霊体となったヨーダが現れる。悩むルークのため、あえてヨーダはジェダイのレガシーに雷を落とし、すべてを焼き払ってみせることで過去に囚われないことがいかに重要かを説く。継承するとはどういうことか。失敗も成功もすべて詰め込んで、変化しつづける新たな世代に期待を託す。それこそがジェダイのありようであると、ヨーダは悩みつづけるルークを諭す。
おれはこのシーンに感銘を受けた。そしてレイとカイロ・レンがスノークとの謁見の間で荒々しく共闘し、一瞬の間だけ光と闇が混交するシーン、レイが「何者でもなかった」ということが明かされるシーンも大好きだ。ライトサイドもダークサイドも関係なく、倒すべき敵を倒し前に進むべきときは進む。そしてそのためには血統(つまり蓄積された過去)は不要であるという明確なメッセージ。これは今までのスター・ウォーズでははっきりと提示されていなかったものだ。
ジェダイたるためにはスカイウォーカーの血筋は必要なく、性別や出自も関係ない。受け取るべきものを過去から受け取る心のありようと、それでも前進する姿勢にこそ、ジェダイの精神は宿る。おれはそのメッセージを、「『フォースの覚醒』では久しぶりだったからファンサービスに努めましたけど、これからのスター・ウォーズはこういう感じでいきますよ。ついてきてくださいね」というディズニーからの宣言だと受け取った。非常に現代的なメッセージだと思ったし、新たなスター・ウォーズをやっていくぞという気概を感じた。
『最後のジェダイ』が酷評された理由
そんなメッセージが込められた作品だと思うと、カント・バイトの何者でもない飼育係の子どもが、ヒョイとフォースを使ってほうきか何かを手に取るラストシーンも、なかなか感動的である。次の時代の銀河は、何者でもない者たちによって作られるのだ。君たちは誰でもジェダイになれる。そんな希望が込められたラストだったと思う。
このメッセージとあのラストがあればこそ、おれは『最後のジェダイ』に無数にある粗に目をつむるつもりになった。「なんだこれは」と言いたくなるところも山ほどあるが、今までスター・ウォーズが伝えてこなかったまっとうなメッセージを伝えようとした結果だと思えば、いろいろなひどいところもチャーミングに見えてきたのである。
一応シリーズが完結する直前というタイミングで、これだけ野心的な内容の映画を投げてきたというのは、制作サイドにとっても相当な冒険だったことと思う。そして冒険的な内容だったからこそ、公開当時『最後のジェダイ』は酷評されたのだろう。スター・ウォーズを観るのは、別に冒険したいファンだけではなかったのだ。その結果として『スカイウォーカーの夜明け』がどうなったのか。観たい人はもうとっくに観ていると思うけど、発売が開始したソフトを通してもう一度確かめるのも、それはそれで乙かもしれない。
『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』
MovieNEX(4,200円+税)発売中、デジタル配信中
(C)2020 & TM Lucasfilm Ltd.
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』
MovieNEX(4,200円+税)、4K UHD MovieNEX(8,000円+税)、DVD(数量限定/2,800円+税)発売中
<同時発売>
『スター・ウォーズ スカイウォーカー・サーガ 4K UHD コンプリートBOX(数量限定)』(50,000円+税)
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 4K UHD MovieNEX』(8,000円+税)
デジタル配信中
(C)2020 & TM Lucasfilm Ltd.
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