ドラマ『ホタルノヒカリ』から考える、自宅の中に「がんばらなくていい場所」を作ることの必要性

2020.4.27

文=早川大輝 編集=鈴木 梢


気軽な外出が難しくなり、1カ月以上経つ。ほとんどのことを家の中で行わなければならなくなり、特に「仕事を家に持ち込みたくない」と思っていた人にとって在宅ワークは大きなストレスだろう。ライター早川大輝が、ドラマ『ホタルノヒカリ』から、働く人々が自宅で過ごす際のヒントを考える。


『ホタルノヒカリ』における自宅の価値

新型コロナウイルス感染症の拡大を転換点に、これからの自宅のあり方が問われている。

自宅でのリモートワークが前提となる仕事も増えるかもしれないし、そうでなくても、有事の際に自宅で仕事ができる環境が求められてきそうだ。すると今までは「住」の機能さえ満たしていればよかった自宅環境に、「働」の機能が必要となる。自宅に仕事を持ち込みたくない人からすると困った話だと思う。

ドラマ『ホタルノヒカリ』の主人公・雨宮蛍(綾瀬はるか)の自宅が、「家に仕事を持ち込まない」という意気込みを感じる造りだったことをふと思い出した。

映画 ホタルノヒカリ(プレビュー)

2007年に同名マンガを原作にドラマ化された本作は、「干物女」と呼ばれる女性の恋を描き、大きな反響を生んだ。このドラマで描かれた「干物女」とは、いろんなことを面倒くさがって適当に済ませ、恋愛を放棄する、干物みたいに干からびた女性の意味。蛍は外で華やかなOLを装っている一方で、家ではジャージ姿にちょんまげ頭、ひとりでビールを飲みながら縁側でゴロゴロする生活を送る。

職場と自宅でのギャップの大きさに蛍の干物女たるゆえんが表れるが、それはつまり、彼女は自宅に帰れば仕事のことは一切忘れてしっかり休めているということだ。

部屋の至る所に洗濯物が干され、飲み干したビール缶は出しっぱなし、使用済みのタオルなどさまざまなモノが取っ散らかり、部屋に仕事の気配がまったくない。作中で人から「あり得ない」と揶揄されるほどの汚部屋ではあるが、本人にとってはとても切実な空間でもある。蛍にとって自宅とは、「がんばらなくていい場所」なのだ。

自宅の中にも「がんばらなくていい場所」が必要だ


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

早川大輝

(はやかわ・だいき)92年生まれ。WEB系編集プロダクションを経て、フリーの編集者/ライターとして独立。生粋のテレビドラマっ子であり、メモ魔。インタビュー記事の企画と編集、たまに執筆をしています。

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森田美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。