“パンデミック収束後”の世界を描く感染系ゾンビ映画!“アフターコロナ”の必見作
地球規模のウイルスの感染拡大を描き、現在の新型コロナウイルスのパンデミックを予言していたような2011年の映画『コンテイジョン』が動画配信サイトで人気だという。
そして、本日3月20日に封切られたゾンビ映画『CURED キュアード』で描かれているのは、“パンデミック収束後”の世界。ウイルス回復者への差別が蔓延する世界を描いたこの映画から、我々が学べることは多いはずだ。
ゾンビ映画と結びつき、劇的に増殖したウイルス・パンデミック映画の系譜
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。世の専門家たちの多くが予想外と語るほどの猛スピードの伝播力で。いったい、このパンデミックはどこまで拡がり、いつ収束するのか。そしてパンデミック後の世界はどうなっているのか。現時点でその確かな答えを持っている人はどこにもいないだろう。
思えば、今まさに私たちに恐怖にも似た不安をもたらしている“未知なる新種ウイルスのパンデミック”という現象は、数多くのホラー映画で扱われてきた。ウイルスや疫病の恐怖を描いた作品は古くから存在するが、とりわけゾンビ映画と結びついてから劇的に急増した。
ゾンビ映画は大まかにふたつの潮流がある。ひとつは『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968年)から始まったジョージ・A・ロメロ監督の一連のシリーズに代表される古典的なスタイル。墓場から超自然的に蘇った死者たちが、のっそりと歩いて生者に襲いかかってくるロメロ系ゾンビは、TVシリーズ『ウォーキング・デッド』(2010年〜)、来る2020年4月3日公開のジム・ジャームッシュ監督の新作『デッド・ドント・ダイ』(2019年)などに受け継がれている。
もうひとつの系譜は、謎のウイルスをモチーフにした“感染系”ゾンビ映画だ。こちらのゾンビは一度死んで蘇るのではなく、人間を凶暴化させるウイルスに蝕まれた生者がそのままゾンビと化す。また、身体能力が異常に高い感染系ゾンビは猛ダッシュで間合いを詰めてくるため、ロメロ系ゾンビのように武器や逃げ場を探す時間の余裕を与えてくれない。ダニー・ボイル監督の『28日後…』(2002年)、ザック・スナイダー監督の『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)が登場して以降、たちまち感染系ゾンビは21世紀におけるこのジャンルの主流となった。
破竹の勢いで増殖した感染系ゾンビ映画には、さまざまな状況設定の作品がある。それらの中で筆者が最も驚いたのが、スペインのファン・カルロス・フレスナディージョ監督がイギリスに招かれて撮った『28週後…』(2007年)だ。前述した『28日後…』の続編であるこの作品は、題名のとおりウイルス感染発生から28週間が経過したロンドンを舞台にしている。
パンデミックはすでに収束し、市民は日常生活を取り戻しつつあるのだが、恐ろしい疫病の特効薬が作られたわけではない。なんとイギリス全土を席巻した大量のウイルス感染者たちは皆、飢えによって死に絶えてしまったのだ! 前述したように感染系ゾンビはあくまで生者なので、放っておけばいずれ飢え死にするというのは極めて“現実的”な設定である。ゾンビという怪物は半永久的に現世をさまよい続ける、と信じ込んでいた筆者にとって目からウロコであった。
社会派の視点を持つ最新作『CURED キュアード』が追求した“恐怖の根源”とは?