大喜利を極めし者たちの頂上決戦『AUN ~コンビ大喜利王決定戦~』3年間の軌跡とその魅力とは
1月21日(日)に開催された第7回『AUN ~コンビ大喜利王決定戦~』(以下、AUN)。大喜利といえば通常、お題に対してひとりで答えて笑いを取る形式だが、『AUN』はコンビ大喜利であり、ふたりが連続して答えることで笑いを取る形式となっている。
大会は2020年にスタートし、これまでに全7回が開催された。第5回からは予選も開催されている。真空ジェシカが第1〜3回、第5回で優勝し、圧倒的な力を見せつけているものの、第4回優勝のサツマカワRPG&Yes!アキト、第6回優勝のこんにちパンクールをはじめ、多くの実力者たちが熾烈な争いを繰り広げている注目大会だ。
本記事では全大会の様子をその目で見たブロガーのかんそうが、『AUN』のこれまでの歩みと全体の魅力を語る。第7回の配信アーカイブの購入を検討している人も、『AUN』を知らない人も、ぜひ参考にしてもらいたい。
※『第7回 AUN 〜コンビ大喜利王決定戦〜』のアーカイブ視聴チケットは2月4日(日)20時まで販売中です
大会や出場者の魅力と、これまでの『AUN』
『AUN 〜コンビ大喜利王決定戦〜』をご存じだろうか。これはただの大喜利ライブではない。通常、ひとりでやるはずの大喜利にコンビで挑み日本一を決める、大喜利を極めし者たちによる血で血を洗うタッグトーナメントだ。
ひとつのお題に対してふたつ回答を重ねる「コンビ大喜利」、しりとりになるように回答をつなげていく「しりとり大喜利」、制限時間60秒でコンビ交互に回答していき終了時に回答権を持っていたコンビが負けとなる「時限爆弾大喜利」、特殊な環境での前説漫才を即興で作り披露する「前説大喜利」など、ひとりがおもしろいだけではけっしてウケることができないお題に対し、コンビで瞬時に最適解を出していく。この形式が成り立つということ自体が、『AUN』出場者たちの大喜利力を表している。
ひと口に「阿吽」と言っても、それぞれの呼吸の合わせ方に個性が滲み出るのがこの『AUN』のおもしろさ。和気あいあいと相談しながら回答を決めていくコンビもいれば、片方の回答をチラ見してほぼ言葉を交わすことなく合わせる達人の雰囲気をまとったコンビもおり、まさに千差万別だ。
コンビ仲と大喜利のクオリティを見事に両立させている“THE・AUN”ママタルト、お題が読み上げられている最中にすでに回答を書き込む大喜利バーバリアン・サツマカワRPG&Yes!アキト、起承転結の美しい回答から突然耳を疑うほどストレートな下ネタをブチ込んでくるAマッソ、奇怪な行動ばかりではなく大会を重ねるごとに急激な成長を見せるランジャタイ、己のキャラを活かした心技一体の大喜利をするケビンス、大喜利のクオリティがどうでもよくなるほど試合の外で爪あとを残し続けるカナメストーンなど、どのコンビも特色を活かしながら、見事な回答を重ねていく。
その中でも異色の存在として『AUN』に新たな風を吹かせたのが、大喜利集団・こんにちパンクール。それぞれがコンビニ店員やWEB漫画家などで活動する傍ら、さまざまな大喜利ライブに出演している7人組YouTuberだ。第6回大会では、お笑いトリオ・ハチカイ(現在は解散)の警備員と、メンバー最年少のぺるともが出場し、大喜利に取り憑かれた大喜利狂いとしか言いようがないほどの勢いで名回答を連発。初出場にして初優勝という快挙を成し遂げた。
そして、『AUN』を語る上で絶対に外すことのできないコンビといえば、これまで開催された6回すべてに出場し、そのうちの4回で優勝している真空ジェシカだろう。ガクと川北茂澄、どちらもフリからオチまで担当できる器用さを持ちながら、漫才の源流を感じさせるコアなワードを用いた回答から、テーマに沿った局所的なあるあるの回答、確実にポイントを取りに行く言葉遊びの回答まで、投げられる球種も豊富、かつそれを連発できるという高性能ぶり。まったく隙がない。
第4回と第6回大会ではサツマカワRPG&Yes!アキトとケビンスに破れ優勝を逃したが、『AUN』における山王工業、立海大附属、神龍寺ナーガが真空ジェシカといえる。もはや「いったい誰が真空ジェシカを倒すのか」がAUNのひとつの見どころになっている。
もうひとつの魅力、長尺の「登場ボケ」
また、この大会のもうひとつの魅力でもあるのが「大喜利が始まるまでが異常に長い」というところだ。毎回出演者たちが「登場ボケ」をし、MCのバイク川崎バイクを困らせていく。
たとえば、第2回大会の「ランジャタイ vs Aマッソ」では、伊藤幸司は目隠しをしたゲゲゲの鬼太郎、国崎和也はナンチャンに扮し、ひとしきり暴走したあと、トーナメント表の仁王像をナンチャンにし、加納はトーナメント表をDA PUMPに書き換えるなどしたあとに、赤いスニーカーを履き伊藤との交際を匂わせていた。一切大喜利が始まる気配がなく、1問目がスタートするまで10分のロスが生じ、結果ほとんど回答しないまま勝敗が決着してしまうという事件があった。
第4回大会の「カナメストーン vs サツマカワRPG&Yes!アキト」では、カナメストーンはまだ1回戦にもかかわらず、優勝賞品の「クイック・ジャパン8ページ特集+QJWeb連載企画+旅行券3万円分」と書かれたパネルを掲げながら登場し、対するサツマカワRPG&Yes!アキトは、武装した状態で「AUNはどんぐりを返せ」と書かれたパネルを持ちながら登場し、どんぐりたけしを拉致したとされる『AUN』に対して激しく抗議していた。
あまりのしつこさに、バイクも再三「このライブは大喜利ライブです」と観客に忠告するなど、各芸人たちにとってはメインと言っても差し支えがないくらいに、登場ボケへの執念は半端ではない。
さらに、前述した「登場ボケ」は真空ジェシカが始めた遊びと言っても過言でなく、逆ニッチェ、インフィニッチェ、無ッチェ、2ニッチェ、デジタルニッチェ、彼岸島ニッチェなど、お家芸となった「ニッチェ」を筆頭に、彫りが深すぎてチンチンみたいになった男、サワムラー、滝沢カレンの秘密基地と、そのレパートリーはほぼ無限。大喜利だけでなく、登場ボケの絶対王者として『AUN』の頂点に君臨している。次は何ッチェが召喚されるのか、その答えは川北しか知らない。
大喜利の最高峰にして、登場ボケの最高峰でもある『AUN』。ほかでは味わえない唯一無二のお笑いライブをぜひ体験してもらいたい。
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