ドヤ顔中学生、おでんツンツン男…「ネットのおもちゃになっても人生は続く」バキバキ童貞の回顧録
バキバキ童貞のふたつ名でYouTube界を騒がせるお笑い芸人・ぐんぴぃがジャンルレスに活動する激動の日々で見つけた初体験を振り返る。
※この記事は『クイック・ジャパン』vol.165 (2023年2月28日より順次発売)掲載のコラムを再編成し転載したものです。
ぐんぴぃ
1990年生まれ。福岡県出身。タイタン所属のお笑い芸人。お笑いコンビ春とヒコーキのボケ担当。相方は土岡哲朗。YouTubeチャンネル『バキバキDT【バキ童】』はチャンネル登録者数40万人を超える(2023年2月現在)
「その人はネットのおもちゃ箱に入っている?」
どうもバキバキ童貞です。街頭インタビューで自身の性経験が拡散されて、辱めを受けたことがキッカケで動画投稿をはじめた者です。そんな『バキ童チャンネル』の登録者が先日40万人を超えました。「童貞」「ネットの暗部」などとニッチすぎるコンテンツ街道をひた走っているだけに、にわかには信じがたい数字です。40万人って長崎市や宮崎市、岐阜市の人口に匹敵するらしいです。ネット上には「最悪」を求める人が一定数以上いるんですね。
バキ童チャンネルが伸びた一因として「ネットのおもちゃコラボ」があります。僕のように意図せぬ形でネットに拡散されてしまった人(=ネットのおもちゃ)にお話を伺うという趣旨の企画です。余談ですが「ネットのおもちゃ」という名称は、アキネイターで僕を呼び出そうとプレイしていたとき、ランプの魔人が最後に「その人はネットのおもちゃ箱に入っている?」と質問してきたことに端を発しています(「はい」を選択するとぐんぴぃが表示されます。AIに心はないのか)。
このコラボで出演してもらったのは「自己防衛おじさん」「日体大コールの人」「おでんツンツン男」など。ネットで一度は見かけたことはあるけど、どんな人となりかはわからない。そんな方々に焦点をあてた、TV番組やほかのYouTuberにはできないコンテンツです。いや“見向きもされない”が正しいですね。きっとブルーオーシャンすぎて魚がいないと思われていたのです。もし万が一真似されようとも、彼らと同じ目線で話せる人間は少ないはず。僕だから聞ける話が絶対ある、と信じてはじめました。
最初に投稿したのが自己防衛おじさんとのコラボでした。彼は「街頭インタビューにしてはオラつきすぎている」様子が面白がられて拡散された男性です。しかしお会いするとかなり物腰の柔らかい紳士的な方でした。意外すぎる。じゃあなんでインタビューではオラオラな受け答えをしたんですか?と尋ねると「直前に病院で痛い注射を受けた。それでとにかくイライラしていたので、あんな怖いインタビューになってしまった」とのこと。なんとも可愛らしい真相に腹を抱えて笑いました。それからたくさんの局地的有名人に会いました。「チャリで来た。」のプリクラの人とか。現在は飲食店を経営している立派な方になってました。
ネットのおもちゃになってからも人生は続く。当たり前ですけど、みなさん活動されています。
ネットのおもちゃにはいろいろな悩みがある
昨年12月には「ネットのおもちゃコラボ」を2本撮りました。ひとつは「幸せならOKです」と語る男性。眞子さまの婚約報道に対して「推しの眞子さまが結婚? ショックです」「でも幸せならOKです」と笑顔でサムズアップする画像は、ネットをやってたら知らない人はいないんじゃないか、というぐらい拡散されました。彼はネット上では好印象を持たれています。僕も聖人君子的な方だと考えていました。
しかし本人にその旨を伝えると、彼の弁には明らかな困惑が滲みました。「ぼくって、言われてるような良い人じゃなくて。ただの女好きですよ。風俗とかも全然行くし。でもネットでは彼のようになりたい、尊敬してるって書かれて。やりづらかったです、正直。だから今までも雑誌の取材とかあったときは結構そういうダークな部分、普通の男ですよっていうのは伝えてるんです。でも結局全部カットされてきて」「だから今回のYouTubeでそういう好印象を消したい。善人として扱われるのは疲れたんすよ」
ネット上で印象が悪い人が実は良いヤツ、というケースが多かったので、その逆パターンは初めてで新鮮でした。ネットのおもちゃにはいろいろな悩みがある。彼とは撮影後に飲みに行って、ここでは書けないような話で楽しく盛り上がりました。
もうひとつのコラボは「ドヤ顔中学生」と呼ばれる男性です。ソシャゲに課金する大人が増えているというニュースに対し「ゲームっていうのは暇つぶしのためにあるのであって」「その暇つぶしにお金をかけているようじゃこの先心配」とドヤ顔で答えた中学生。彼の画像はゲーム愛好者の前に幾度となく現れ、目の敵にされてきました。僕もアンチのひとりです。彼がインタビューを受けたのは2012年。中学生だった彼は立派な大学生に成長していました。東京大学に進学したそうですよ。「あのゲーム嫌いな中学生がどういう将来になるか楽しみだぜ」と負け惜しみで書き散らしたネット民たち、大敗北です。
しかし、話を聞くと衝撃の連続でした。なんでも、あのインタビューは前後が切り取られているそうなんです。ドヤ顔中学生は飄々と語ります。「実はインタビュー当時ね、僕もゲームに1万円ぐらい使っちゃってたんです。だから、あくまで“どうしようもない自分”に対して『ゲームにお金をかけるようじゃ心配』って答えたんです。それが上の句だけ切り取られてしまって、ゲーマーに喧嘩を売るような映像になっちゃったんです。本当は自虐なんですあれ」
驚愕の事実。僕のようなゲーム民が目の敵にしてきたあの少年は味方だったのか。今はウマ娘にめちゃくちゃ課金してるらしいですよ。ドヤ顔中学生の嫌疑を晴らせたのはかなり良かったです。ネットのおもちゃコラボは今後も続けていきます。ひとつ気がかりなのは、街頭インタビューで人生が狂った人がいなかったことです。みんなそこそこ平和に生活しています。僕も早くバキ童を卒業して平穏な暮らしに戻りたいよ……。
『クイック・ジャパン』vol.165
2023年2月28日(火)より順次発売の『クイック・ジャパン』vol.165は、表紙登場のえなこをはじめとした人気コスプレイヤーが多数在籍するPPエンタープライズ所属のコスプレイヤーへ取材を実施。 華やかなイメージの一方、あまり語られることのない本人たちのストーリーを徹底的に掘り下げた、60ページの読むコスプレイヤー特集となった。
また、今泉力哉監督により実写映画化されたマンガ『ちひろさん』(安田弘之作)の小特集も掲載。そのほか、2021年に『万事快調 オール・グリーンズ』で第28回松本清張賞を受賞した小説家・波木銅による新連載「ニュー・サバービア」がスタート。いつも以上に読む企画がそろった。
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