ディグ界の幻影旅団「lightmellowbu」が発見したブックオフというサンクチュアリ
サブスク全盛の今でも(だからこそ?)、レコードを掘るディガーはたくさん存在しています。そして、90年代以降に古今東西のレコードをディグすることが一般化して20数年、今では強者たちはアジアなどまだまだ堀りがいのある地域に注目しているようなムードもあります。
しかし、「lightmellowbu(ライトメロウブ)」という謎の集団によって書かれた書籍『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』の刊行によって、その状況は一変するかも……しれません。「ブックオフというサンクチュアリ」とは――。
ブックオフ巡りには、精神的なリラックス/デトックス効果がある!
最近、わたしはブックオフ巡りを再開させた。仕事でくたびれると、帰宅途中の駅にある店舗を調べ、夜遅くまで開いている店へと駆け込む。何をしているのかといえば、290/510円という格安(消費税増税に伴って値上げされたものの)で売られているCDが差さった棚を端から端まで眺めているのだ。
仕事のことなど忘れ、雑念を取り払い、頭の中を空っぽにしてCDの背を凝視することに集中する。目ぼしいものがあれば引っつかんで、棚から引き抜く。脚立に乗ったり、降りたり……。最後は山積みにしたCDを吟味し、財布と相談をしながら厳選、そしてレジへと運ぶ。これをやるだけでずいぶんと精神的なリラックス/デトックス効果を得られることに気づいた。心を無にして臨む一連の行為は、まるで礼拝か写経のよう。
そう、ブックオフは私にとって、サンクチュアリになりつつある。
というのはまあ、半分冗談(半分本気)。今回は、そんな風にブックオフでCDを掘りつづけてきた猛者たちによる著書を紹介しよう。2020年1月にDU BOOKSから刊行され、ディグ界を震撼させている『オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド』である。
本書は「lightmellowbu(ライトメロウブ)」という集団によって書かれている。ブログ「ディスクレビュー」を根城にし、主にTwitter「@hukihuki5」を介してつながっている彼ら。現在、全国各地のディガー総勢15名が「bu員」として名を連ねる、ディグ界のアベンジャーズないし幻影旅団……。それが、lightmellowbuだ。
書名やbu名から察せられるとおりに、bu員たちが掘っているのはシティポップやAOR、そしてライターの金澤寿和が提唱する「Light Mellow」的な観点から聴くことができる、主に90年代のCDである。音楽史的な価値をほとんど認められることなく、アーカイブされていないそれらの音盤を、わずかな情報と経験、勘を頼りに掘り出す。数多の駄盤に時間とお金とを溶かし、涙を飲みながら。