CDは役割を終えてしまったのか?ミュージシャンが振り返る「コンパクトディスク」の現在(小宮山雄飛)
定額で聴き放題の音楽配信サービス=サブスクリプションが浸透し、実体を伴ったフィジカルとしてはレコードやカセットテープの人気に押され気味の「CD(コンパクトディスク)」。
2022年9月14日、通算10枚目のアルバム『Island CD』をCDでリリースするホフディラン。そのメンバーで、かつて「Compact Disc」という楽曲の作詞・作曲を手がけた小宮山雄飛が、自身の体験を交えつつ、1982年に誕生したCDという音楽メディアの本質に迫る。
「CDはそのうちなくなる」と言われつづけて10年
9月14日にホフディランがニューアルバムを出します!
僕はここ数年アルバムを発表するたびに「CD(=フィジカル)で作品を出すのはこれが最後になるかもな……」と思っていたので、2022年にまだCDという形あるもので世に作品を出せるというのは、とてもうれしいことです。
「CDはそのうちなくなる」と言われつづけて、はや10年以上。意外とまだ残っているCD。でもやっぱり、この先とても心配なCD。アルバム発売を機に、そんなCDについて改めて考えてみたいと思います。
なお、CDを語るという都合上、ここまでもそうですが、これからも文章の中にCDという2文字がやたらと出てきます。なんか落ち着いて文章全体を眺めてみると、日本語の文章の中に、そこだけアルファベットでCDという文字が異常にたくさんあって、ちょっと気持ち悪いというか、CD酔いしちゃいそうな記事ですが、それ気にし始めると、ホントにゾワゾワしてきますから、気にせずに読み進んでくださいね。
できるだけその2文字を使わないようにがんばりますから(それも本末転倒だな)。
というわけで、あの円盤型で、光が反射して、音楽のデータが入ってて、ベランダに吊るしておくとカラスとかの鳥が怖がって寄ってこないともいわれているアレについてですが。って、毎回こんな感じに書くと、文章がかなり長くなっちゃいますね。こんな長い説明をCDというたった2文字に省略できるなんて、やっぱりCDってすごいですね。
すいません、名称だけで引っ張り過ぎました。
初めてのCD体験!?
ちゃんと内容のある話をしましょう。CDが初めて世間で発売されたのは1982年だそうです。僕が小学校3年生のときですが、正直そのころにCDというものが世に出ていたという記憶はまったくありません。
僕が小学生のころはまだまだレコードのほうが一般的で、小学生にとってはそのレコードすら気軽に買えるものではなかったので、エイベックスの創業者の松浦勝人氏がバイトしていたことでも有名な「友&愛」などの貸レコードチェーンでアルバムを借りて、家でカセットテープにダビングして聴くという方法で音楽を楽しんでいました。
そこから、少しずつCDは普及していくのですが、「高音質」ということを押し出し過ぎていて、値段がレコードより高いこともあり、本気で音にこだわる音楽マニアだけが買う高嶺の花のような存在だったのを覚えています。
また、レコードのように針飛びをしない、というのも売り文句のひとつで、それは光で音の信号を読んでいるからなんだと。まだCDを持っていなかった人の間では、その話に尾ひれがついて、「CDというのはどんなに傷がついても音が飛ばないらしい」という都市伝説までありました。
何を隠そう僕の友人もその伝説を信じていたひとりです。友人がCDプレイヤーを買ったというので、初めてCDの音を聴いてみようと友達数名が彼の家に集まりました。彼は、集まった友達の前で、わざわざ初めて買ったCDの盤面にトンカチで傷つけて、「CDってこんなにしたって、ちゃんと聴けるんだぜ、すごいだろ!」とドヤ顔でそのCDをプレイヤーに入れました。
しかし、音が飛ばないどころか、そもそも1曲目のイントロすらかからない、完全な鳴かず飛ばず状態。音ではなく本人が飛び上がって「あれ嘘だったのかよー!!」とわめき散らしていました。
思えば、本来はあのときが、僕が生まれて初めてCDの音を体験する出会いの瞬間のはずだったのですが、聴こえてきたのは友人の叫び声だけでした。その後、いったい自分が初めて聴いたCDがなんだったのかが記憶にないのは、それだけあのときの友人の叫び声が印象的だったんでしょう。
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