お笑いコンビに、相方の魅力を語ってもらう連載「魅惑の相方」。
第3弾は銀シャリ。『M-1グランプリ2016』優勝後も、日々漫才を進化させ続け、王者の名に恥じぬ生粋の漫才師としてお笑い界を先導している。
先手の鰻は取材冒頭、橋本が知らない“褒め”が出ないのではないかと懸念していた。そんな彼が放つ言葉や表情からは、「取材用に話しているのではなく、心底思っている」という、嘘偽りない素直な感情が伝わってきた。
目次
橋本が知らない“褒め”は、もうない?
──相方の魅力を語っていただく連載の取材になります。
鰻 この依頼が来る前に、たまたま第2弾の天竺鼠の記事を見てたんですよ。彼らと付き合い長いけど、知らん話もあったりして……逆にプレッシャーです。僕らの場合、プライベートでも普段からめっちゃしゃべるんですよ。電話もするし。だから、橋本が知らない“褒め”がないんですよね。事前に全部言うてもうてる。
──普段から直接褒められるんですね……! それはお互いですか?
鰻 両方言いますよ。橋本も僕が出てる番組をよく観てて、「あれおもろかったなあ」とか言いますし。
──橋本さんが鰻さんのことを褒めているのはよく拝見するのですが、逆もあるというのが正直意外です。
鰻 端から見たらわかりづらいと思います。僕、人に干渉しないんですよ。「ここは口に出して言うけど、ここは言わへんのや」とかのズレもあるらしくて。
──以前『漫才三唱』(銀シャリ、三四郎、カミナリの3組で定期的に行っているライブ)で、鰻さんが、橋本さんにオススメしてもらった飲食店に行きはするのに、行ったことを橋本さんに言わないというエピソードを思い出しました。
鰻 行ったことを完全に忘れてて(笑)。橋本に「あの店行ったんか?」って聞かれて、「あー、そういえば行った」って。そういう変なズレがあるんで、橋本はしんどいと思います。ただ、橋本のグルメ感覚は間違いないっす。最近も大阪での仕事終わり、「ここのラーメン屋うまかったで」ってLINE来ました(笑)。
──橋本さんのグルメなところは、同じものを好んで食べる鰻さんとは違う一面ですね。
鰻 そうです、僕は同じものしか食べない(笑)。チェーン店人間、安定の味。
銀シャリは“感覚が一緒の正反対な奴”
──漫才を拝見していると、銀シャリさんは今が特に仲がよさそうだなとも感じるんです。
鰻 僕ら、仲悪いときってないんですよ。仲よく見えてるとしたら、『M-1』が終わって、時間ガチガチのネタを作らなくてよくなったから、だんだん和らいできた先が今なんだと思います。
──過去に、大きいケンカなどは?
鰻 初期は細かいネタの揉め事はありましたけど、覚えてないくらいですね。橋本と僕は3歳違いで出身地も違って、接点はないけど、おもしろいと思うことの先が一緒だったんですよ。だからそのケンカも、目標点は一緒で、そこにどう行くかで揉めてただけやったんですよね。自転車でいうたら、どの姿勢でどう漕いだら速いかで揉めてるだけで、スピード出したいのは一緒みたいな。
──嫌いにならないケンカですね。
鰻 全然ならないです。ふたりとも切り替えが早いのか、揉めたあともすぐ雑談してましたね、ずーっと。楽ですよね、なんか。
──ふたりとも、性格的に似ている部分もあるんでしょうか? 実は、正反対だと思っていたんですが……。
鰻 正反対やと思います。ただ、感覚が一緒の正反対な奴みたいな。ふたりとも曲がらない性格っていうのもあるけど、ホンマに違うってなったらどっちも曲がって、謝るんですよ。その素直さがあります。今となっては謝るのも早いですよ、昔はゴチャゴチャしてましたけど(笑)。
──橋本さんの魅力っていうよりも、ふたりの共通の魅力が知れました(笑)。
鰻 普通、似てるとは思わないんですけどね。外見も全然違いますし。
橋本は「日本語検定」師範代
──鰻さんはほんわかしたビジュアルのイメージが強いので、ラジオを聴いていると意外だなと思うことが多いです。企業のサポートセンターにすぐお問い合わせしたりとか……。
鰻 クレーマーですよね(笑)。外見と中身が違うんですよね。外見はニコニコしてて優しそうとか思われがちなんですけど、そんなこと全然ないですからね(笑)。まあ、優しくないこともないし、ニコニコしてないこともないから難しいんですけど……7:3ぐらいですかね。
──7でニコニコ?
鰻 いや、3ニコニコです(笑)。しかも“アホ”も入ってますし、“直感”みたいなのも入ってますし、そのへんが入り混じっててややこしいんですよね。
──橋本さんはそこをすべて理解して、うまく操ってるんですね。
鰻 よく操ってくれてると思ってます、ホンマに。語学力もすごいですもんね。日本語をうまく使いこなす力、100%です。
──橋本さんは学もありますよね。
鰻 ありますよね。本人は「エスカレーターで大学行ってるし、俺はそんなに頭よくない」ってよく言ってますけど、めっちゃ本も読んでますし。でもね、組み立てのころはそんなに読んでなかったんですよ。だから、もともとのしゃべりもすごいんですよ。
──もともとしゃべりの能力があるところに、プラスで本の知識が加わって。
鰻 だから物事を的確に表現できますよね。みんなが脳で想像できひん絵を、橋本がしゃべりで表現できるから、めちゃめちゃありがたいです。僕が言葉足らずで伝えられないことを、橋本を通せば全部まわりに伝わるんで。
──確かに、鰻さんのエピソードトークが、橋本さんのサポートによってさらに情景が思い浮かぶことがあります。
鰻 そうなんです! それがホンマにありがたいんです。僕のしゃべりだけじゃ、ほとんど「何言うてるんや」ってなるんですよ。日本人向けの日本語検定があってもいいと思うんですよね。どれだけ日本語使えてるのか、この説明どんだけうまいか、みたいな。これって日本人の中でもめちゃめちゃ差あると思う。
──橋本さんはその「日本語検定」群を抜いてそうですね。級越えて段とか。
鰻 段以上、もう師範代。
リズムが心地いい「JITTERIN’JINNみたいなしゃべり方」
──その能力って、漫才をする上でも大事なことですよね。
鰻 いっちばん大事です。
──コントは絵で情景を伝えることもできますけど、漫才はそれを観客が想像で補う必要があるので、よりその力が必要となるというか。
鰻 そう、橋本はその力がすごいんです。で、それだけじゃなくて、しゃべりのリズム感もすごくて。橋本が2回同じことを言おうが聞いていられるんですよ。「あなたが私にくれたもの~♪」っていう歌(JITTERIN’JINN「プレゼント」)とか、ずっとループするけど聴いていられるじゃないですか。橋本のしゃべりもそんな感じ。ループしても聞いていられる、JITTERIN’JINNみたいなしゃべり方(笑)。
それぐらいなじみのある、心地の良い口調、声質、全部兼ね備えてると思います。講演会とかしてもずっと聞いてられるんじゃないですかね。嫌にならないですもん。しゃべりが心地いいって、すごいですよね。
──ツッコミということもあるので、内容的には強いことを言うときもありますが、それすらも嫌悪感が生まれないですよね。それは持って生まれたセンスと努力……?
鰻 そうですよね、そのふたつでしょうね。それと、橋本は声のボリュームも詳しいです。「この場の声量に合ってない!」みたいなのがすぐわかるんです。その日の鰻の調子が、声量でわかるって言うてました。
──絶対音感みたいなものなんでしょうか?
鰻 本人は、ホンマに絶対音感ある人がいるんだからそんなん言うたらアカンとは言うてます。
──謙遜が。歌も上手ですもんね。
鰻 歌うまいです。けど本人は「まだまだ上いっぱいおる」って言うて。めちゃめちゃ謙虚してますね(笑)。
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