ツイッター連載で大きな話題を読んだマンガ「100日後に死ぬワニ」が、アニメーション映画『100日間生きたワニ』(7月9日公開)としてスクリーンに登場する。
この映画で主人公のワニの声優を務めているのが、神木隆之介だ。実は彼は、宮崎駿、細田守、新海誠、庵野秀明という巨匠たちの作品で声優として起用され、日本のアニメーション映画に欠かせない存在なのである。
ライター・相田冬二による連載「告白的男優論」の第8回は、神木隆之介のボイスアクトの魅力に迫る。
※この記事は映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の結末までの内容を踏まえて書かれたものです。未見の方はご注意ください。
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神木隆之介の表現が、エヴァを終わらせた
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の最後の場面で驚いた人も多かったのではないか。あるいは、エンドクレジットで。
主人公、碇シンジ、その数年後をボイスアクトしていたのは、神木隆之介だった。
ラストシーン、おそらくは28歳のシンジ。そのセリフはわずか3つのみ。ごく数秒の登場とはいえ、「行こう」という言葉が、四半世紀にわたったシリーズを鮮やかに締め括った。
このエピローグのためにシンジの代名詞といっていい声優、緒方恵美ではなく、神木が召喚されたことの意味を深く受け止める必要がある。
エヴァは14歳のシンジの物語だ。だから、28歳のシンジなのであれば声変わりもしているだろう。女性声優から男性声優にチェンジすることは不思議なことではない。
だが、これだけの歴史を抱えるアニメーションである。シンジの声は、すべての観客の聴覚記憶に緒方恵美として記録されている。ベテラン、緒方なら28歳のシンジの声を表現することも可能だっただろう。
しかし、『シン・エヴァ』は大団円の結末を神木隆之介に託した。
パラレルワールドなど、さまざまな解釈が成り立つが、いずれにせよ、この国民的シリーズは、そのピリオドを打つにあたって、神木の声を必要とした。
こう表現することもできる。
声優、神木隆之介の表現が、エヴァを、ついに終わらせた。
宮崎駿、細田守、新海誠、庵野秀明に起用されている理由
アニメーション映画における神木隆之介の突出した活躍ぶりは、宮崎駿、細田守、新海誠、そして庵野秀明という四大作家すべてを制していることに端的に象徴される。
宮崎自身が「最も重要な自作」と公式に表明している『ハウルの動く城』におけるハウルの弟子マルクルは、作品世界を支えるキーパーソン。神木は宮崎の『千と千尋の神隠し』をはじめ、数々のスタジオジブリ作品にも起用されている。
細田守の『サマーウォーズ』では、主人公、小磯健二役に抜擢された。激動の物語を、見事泳ぎ切った。
そして、新海誠の『君の名は。』でも主演。女の子と男の子が入れ替わる構造の中で、卓越したボイスアクティングを披露した。
ここに、庵野秀明『シン・エヴァ』を加えるなら、いかに声優、神木隆之介が信頼されているかがわかるだろう。
これら4作の共通点を挙げるなら、【変化】だろうか。ある凝縮された体験を通して、もたらされた平明な変容を、神木は声で形にする。
別人に成るわけではない。それは、ちょっとした成長だ。新しい価値観が少しだけプラスされ、心の容積メモリがアップした魂。そのありようを、バイブスで伝えてくれる(『シン・エヴァ』は【変化後】)。
もうひとつ重要なことがある。
『サマーウォーズ』も『君の名は。』も真夏に公開されている。つまり、夏休み映画。
夏休みとは、経験と、【その先のセカイの予告編】である。つまり、現在と未来が同時にある。神木隆之介は、現在というものが未来を内包していること、そして、胎動と発芽の予感を、声で表すことができる。
無意識のときめき。
いや、無意識こそがときめきなのだと、教えてくれるような声。
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