今、改めて考えたい「心のケア」。阪神・淡路大震災の最前線で尽力した精神科医・安克昌の姿から学べること
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で、被災者の心のケアに奔走した精神科医・安克昌。
彼の著書をもとにして、2020年1月にNHKで放送されて話題となったドラマが、『心の傷を癒(いや)すということ《劇場版》』として2021年1月29日に封切られた。
新型コロナウイルス感染症により社会が激変し、身近な人にすら寄り添うことが難しくなっている今だからこそ、改めて「心のケア」について考えていきたい──。
自分のつらい体験がわかってもらえる
阪神・淡路大震災から25年経った2020年、NHK大阪放送局で制作されたあるドラマが話題となった。
『心の傷を癒すということ』というこのドラマは、阪神・淡路大震災で被災者の「心のケア」に尽力した精神科医・安和隆の生涯を描いたものだ。ドラマは全4回の放送にもかかわらず、「主演の柄本佑さんの患者さんへの振る舞い方や話し方に癒される」「避難所のシーンは当時の光景そのものだ」と大きな反響を呼んだ。
2021年1月、この作品が改めて劇場版として公開されることになった。
柄本佑さん演じる安和隆は、オールバックに銀縁のメガネ、患者さんと話すときは目線を合わせ、囁くように小さな声で話す。柄本さんがこれまで演じることの多かった危ない雰囲気のある役やエキセントリックな役とは対照的だ。
「安心の安です」、和隆が患者さんに自己紹介するときの決まり文句。その声を聞いていると、とても安らかな気持ちになって、この先生になら自分のつらい体験がわかってもらえるのではないかと思える。
この安和隆にはモデルがいる。
2000年に39歳で肝臓がんで亡くなった精神科医・安克昌だ。自ら阪神・淡路大震災で被災しながらも避難所で精神科救護所を開設したり、全国から救援に駆けつけた精神科医ボランティアのコーディネートを務めたりした。その経験を綴った『心の傷を癒すということ』(作品社/1996年)は、第18回サントリー学芸賞を受賞した。
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