コロナ禍の正月、実家の神社を手伝って抱いた「コロナの沈静化」の願い(トリプルファイヤー吉田靖直)

2021.1.24

文=吉田靖直 編集=森田真規


ソリッドなビートに、なんとも形容し難いユーモラスな歌詞で人気を誇るバンド「トリプルファイヤー」。作詞を担当するボーカルの吉田靖直は『タモリ倶楽部』や大喜利イベントに出演し、2月18日には初の著書『持ってこなかった男』(双葉社)の発売が決定するなど、独特なキャラクターを活かして幅広いフィールドで活躍している。

そんな彼の実家は香川でも有名な神社であり、吉田氏は高校生のころから毎年、年末年始には実家の手伝いをしているという。コロナ禍の2020〜21年に神社を手伝い、感じたことを綴ってもらった。

一生無理だと諦めていた、コタツでミカンに『紅白』という憧れの時間も過ごせるかもしれない

こんなことさえ大っぴらに言うのも憚られるご時世だが、年末年始は地元の香川県に帰省していた。実家が神社を営んでいるため、繁忙期である年末年始は毎年呼び戻される。実家に戻ってからは毎日しめ縄や松の飾りを作って針金で鳥居にくくりつけたり、竹ボウキや熊手で境内を掃除したり、神主の装束を着て厄除けや厄払いのお祓いをしたりする。

私が高校生になったころから本格的に神社を手伝わされるようになって以来、年末年始が来るのが憂鬱で仕方なかった。だが今年はこのコロナ禍、宮司である父親や神社を手伝ってくれる高齢の人たちもナイーブになっているはずで、「もう今回はいいから帰ってくるな」と言ってもらえるのではないか。そうなれば、いつぶりかわからないがゆったりとした正月を送れる。

もう自分には一生無理だろうと諦めていた、コタツでミカンを食べながら『紅白』や『RIZIN』、『爆笑ヒットパレード』などを鑑賞する憧れの時間も過ごせるかもしれない。

12月の初頭。私の期待を裏切る電話が父親からかかってきた。人手が足りないので帰って来てもらわないと困るとのことだった。「でも東京は今かなりコロナ増えてるからなあ」「東京から帰ったら地元の人が怖がるかもしれないよなあ」とやんわり不安を煽ってみたものの、父の判断は覆らなかった。まあ、今年は初詣の参拝客が少ないだろうからいつもよりは手伝いも楽かもしれない。

帰省の前に新橋でPCR検査を受けた。検査に2〜3万円かかったという知人の話も聞いていたが、「PCR 安い」で検索して見つけた、そこの検査は3000円くらいですんだ。受付に並んでいる人にどんどん検査キットが渡されていく。受け取ったキットに自分で唾液を入れ、登録番号を書いたシールを貼って受付に返す。それだけの作業で、5分もかからず終わった。

確かにこれで3万円取られたら納得いかない。しかし高いPCR検査は何がよくてそんなに高いのだろうか。もしかしたら精度の差などがあるのかもしれないが、きちんと調べていないのでよくわからない。もしコロナだったら正月休めるな、と不謹慎な考えが頭をよぎったりもしたが、翌日送られてきた検査結果は問題なく陰性だった。

陰性だったにもかかわらず実家に入ることは父から拒まれ、氏子会館という神社の施設の一角にコタツを置いてひとり寝泊まりすることになった。例年なら数人の氏子さんがやって来て一緒に作業をしたりもするのだが、向こうが私を恐れるだろうという配慮で「お前はひとりで掃除をしておけ」と命じられ、地域の人との付き合いがあまり得意でない私としては気楽だった。

ホームページが10年間更新されていない、時流に気を遣う姿勢がほとんど見えないうちの神社も、さすがに今年は関係者が敏感になっているためかさまざまな新しい配慮が施された。

神社も“密集防止”で・・・初詣の新型コロナ対策(2020年12月31日)

賽銭箱の前のガラガラ鳴らす鈴の綱を多くの人が触れるのはよくないだろうということで、ハシゴに登って人の手が届かない高さの柱に巻きつけたり、手を洗うところ(手水舎)の柄杓も撤去され竹筒からチョロチョロ流れる水で手を洗うシステムに改造されていた。

初詣などしなくとも人は生きていけるけど……


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