井森美幸さん、ありがとう。過去を捨てる必要はないと教えてくれた人(モリィ)
新しいことに挑戦しつづけ、常に変化することが正しいと思っていた。バンドやアイドルとしてステージに立ち、『おぎやはぎの「ブス」テレビ』(ABEMA)にも出演するなど、スポットライトを求めて多彩に活動をつづけていたモリィ、25歳。しかし「自分の軸」は見つけられなかった。
自粛ムードで立ち止まることしかできない日々がつづき、長年ファンだった井森美幸のことを思い出す。
『YATSUI FESTIVAL! 2020』での公式キャンペーンガールオーディションで「QJWeb賞」を受賞したモリィの、連載コラム第2弾。
動けなくなった自分と、世界との距離
変わらないことや立ち止まることが怖い。
寂しさや焦りを埋めるように毎日酒を飲み、何度も何度も同じくだらない話をまるで初めてかのように笑い合って、たまには終電を逃して友人が歌う恋愛ソングを聴いて昔好きだった人のことを考えたりなんかして、朝焼けの商店街を抜けて鳥のさえずりを聞きながら眠る生活が、緊急事態宣言で一変した。
来る日も来る日も陽の光も届かない湿気ったワンルームにただひとりなのだ。
幼稚園の音楽発表会で、おそらくひどくボーッとした性格だった私は手を挙げそびれ、誰も選ばなかったシンバルの担当に抜擢された。当日お友達がシャンシャンと鈴やタンバリンを鳴らすなか、バッッッシャーーーーーーン!!!!!と力いっぱいシンバルを鳴らしまくった。一緒に演奏しているお友達も、我が子が一番かわいいであろう親御さんも、みんなが爆音を奏でる私を見ていた。
このときの快感が忘れられず、今日まで表舞台に立つことが何よりの生き甲斐になっている。それでもずっとシンバルを鳴らしているわけにもいかないから、バンド、舞台、地下アイドル、ネット番組、なんでもやれるだけやってきた。とにかく立ち止まりたくなかった。それがこんな世の中になり、radikoのオフタイマー120分が切れて無音になった明け方5時過ぎ、立ち止まってしまった自分と世界との距離に絶望していた。
「ヤラハタ」という下品な呼ばれ方をして
そんなとき、何気なく点けていたテレビに、元祖バラドル井森美幸が出演していた。私は井森美幸のファンである。
好きになったきっかけは、何かのバラエティでデビュー当時のキャッチコピーである「井森美幸16歳、まだ誰のものでもありません」をモジって「未だに誰のものでもありません」と本人が明るく笑い飛ばしているのを観たとき。
言葉のニュアンスは違えども、当時ハタチになっても性交渉をしたことがなかったため「ヤラハタ(やらずにハタチ)」という信じられないくらい下品な名称で呼ばれていた自分と重ね合わせて元気をもらったからだ。僭越ながら自分の生誕祭のタイトルを「まだ、誰のものにもなれません。」とオマージュし、同じ北関東出身なのも相まって、それから親近感を持っている。
数年前に芸能界で生き残るコツを聞かれた彼女は「ブレない、媚びない、すぐ売れない」と発言している。すぐ売れないとは、正統派アイドルとしてデビューするも数年間思うように芽が出ず、バラドルに転向した彼女だから言えることだ。それから現在まで三枚目のキャラクターで30年以上バラエティーの第一線で活躍し、まったく変わらず品格と美貌を保ちつづけている。
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