買い物も投資も、選挙みたいなもの。投資家のバンドマンが考える、くそ笑える未来のつくり方

2020.8.16

新型コロナウイルスが社会に与えた影響はあまりに大きく、この機にお金の使い方を見直す人も増えたのではないだろうか。好きなミュージシャンや劇団、また好きな飲食店などが経済的な打撃を受けていることを知り、クラウドファンディングやグッズの購入をした人も少なくないだろう。

2020年6月に発売された『くそつまらない未来を変えられるかもしれない投資の話』は、バンドマンであり個人投資家でもあるヤマザキOKコンピュータさんが、以前より実践していた「投資」について書いた本である。よくあるような、投資の始め方やノウハウを謳ったものとは一線を画す内容だ。

お金とのつき合い方をアップデートしつづけるヤマザキさんが、沖縄での暮らしから考える欲しい未来のつくり方とは――。

お金の流れを自分好みにカスタマイズする

少しだけ早起きして、いくらか離れた場所の小さな商店に足を運んだ。その店で買ったのは、お気に入りのきび砂糖と新鮮なレモン。東京から取り寄せておいたスパイスを石で潰し、砂糖やレモンと一緒に煮込む。別の鍋で作ったカラメルと混ぜたら、濃厚で重たいシロップが爽やかな香りを放ってきた。その茶色くてトロトロの液体に氷を入れて炭酸で割れば、自家製コーラのでき上がりだ。これさえあれば沖縄の夏でも乗り切れそうな、パワーのこもった味がする。

20代後半、WEBメディア運営の仕事を始めてどこでも働けるようになった。東京の生活はおもしろいイベントが目白押しだけど、固定費が高くて自然は遠い。刺激的なインプットを求めた20代が終わって、アウトプット中心の生活をしたいと思うようになった。それならそんなに無理して東京に住まなくていい。さっそく、理想の生活を求めてタイや福岡に移り住み、数カ月前に沖縄県のコザという街に引っ越して来た。

それから「ネオポゴタウン」というオルタナティブ・スペースの運営に関わっている。ここはライブができる広さの音楽スタジオとカフェ&バー、古着や雑貨を売るお店などがひとつになったようなスペースで、だいたい6人くらいで運営している。

ALTERNATIVE BASE「NEO POGOTOWN」

メンバーごとにそれぞれの店を経営していて、手刺繍をやっているメンバーやタトゥーアーティストのメンバーもいるし、デザイナーのメンバーもいる。Tシャツや缶バッジなど、いろいろなグッズを作る機材もひと通りそろっているし、フリーマーケットをやる日なんかもある。みんなの作業スペースでもあり、お店でもあり、生活の場でもあって、言葉で説明するのは難しいけど、一応「この場に関わるすべての人が想像したことを実現するための自律空間」と定義していて、あらゆるマイノリティとあらゆるマジョリティが共存可能な遊び場のようなものを目指している。

最近はみんなで改装作業を進めながら、ネオポゴタウンで販売しているドリンクのメニューや、トイレに置くハンドソープ、イベントのときに使うカップのリユースについてなど、これからこの場所をどうよくしていくか話し合いながらギターを弾いたり絵を描いたりボードゲームしたりして日々過ごしている。

その一環で、今日はコーラを試作することになった。コーラを自作したのは店をおもしろくするためや俺たちが楽しむためでもあるけど、もうひとつ大きな理由がある。

それは、自分好みの未来を獲得するためである。

自販機やコンビニで売られている真っ黒なコーラに何が入っているのか、俺はよく知らない。コーラを買うのに払ったお金がどんなふうに使われているかは、もっとよくわからない。

コーラを手作りするのは、くそ笑える未来のため

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