コロナ禍で髭を伸ばし、わかったこと(トリプルファイヤー吉田靖直)


文=吉田靖直 編集=森田真規


ソリッドなビートに、なんとも形容し難いユーモラスな歌詞で人気を誇るバンド「トリプルファイヤー」。作詞を担当するボーカルの吉田靖直は『タモリ倶楽部』や大喜利イベントに出演するなど、独特なキャラクターを活かして幅広いフィールドで活躍している。

そんな吉田氏が緊急事態宣言が発令された数カ月前に思ったのは、「もしかしたら自分も、髭を生やしてやっと完成するタイプの見た目なのかもしれない」ということ。多くの芸能人も髭を伸ばしていたコロナ禍で、彼が気づいたこととは――。

髭のない自分は、いわば修行用の鉄下駄を履いて暮らしているようなもの……かもしれない

数カ月前、緊急事態宣言が出された時期。外出が憚られる空気が世の中に満ちていた。私も大人しくずっと家にこもっていて他人と会う機会がなかったため、風呂に入る頻度が減り、身だしなみにまったく気を遣わなくなった。

自ずと髭を剃る習慣もなくなり、伸ばしっぱなしのまましばらく経つと、今まで生きてきた中で最長レベルの髭になった。今後しばらく他人に会う予定もない。この機会にいけるところまでいってみよう、とそのとき思った。

私は髭に憧れを抱いていた。髭のある人の発言はいくらか説得力が増すように感じる。髭があったほうが、深みのある人間っぽく見えて他人から軽んじられない気がする。しゃべるのが遅く声の小さい私は、覇気があるタイプの人間からナメられやすい気がしていた。しかし髭があれば、ボソボソとしたしゃべり方も思慮深さの表れと取ってもらえるかもしれない。

髭が効果的に作用しているな、という見た目の人もいる。私がいつも思い出すのは、広島東洋カープの菊池涼介選手のことだ。あの人の見た目は髭があることによって完成していると思う。

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もしかしたら自分も、髭を生やしてやっと完成するタイプの見た目なのかもしれない。そんな期待を心の片隅に置きながら生きてきた気がする。髭のない今の自分はポテンシャルの70%のルックスで生きている状態、いわば修行用の鉄下駄を履いて暮らしているようなものではないか。鉄下駄を脱いだとき、やっと本来の力が解放される。髭が似合う根拠は何もなかったが、一度やってみない限り可能性がゼロだとは言えない。

そんなことを考えていた男は私だけではなかったように思う。あの緊急事態宣言のさなか、私の体感では男性の半数以上が髭を伸ばし始めていた。もちろん、ただ剃るのが面倒くさかっただけだという意見もあるだろう。しかし、これを機に自分に髭が似合うかどうか確認し、あわよくばそのままサラッと髭の人に移行していこう、という発想がまったくなかったか、自分の心に問い直してみてほしい。恥ずかしいことではない。長期間他人に会わないあの時期は、過去の自分を脱ぎ捨てイメチェンを図るにはこれ以上ない絶好の機会だった。

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