いつの時代も、人は“人”に惹かれる。テレビの世界でも、その原理は変わらない。
『激レアさんを連れてきた。』『キョコロヒー』『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』『秋山と○○』シリーズなどを手がけるディレクター・舟橋政宏(テレビ朝日)と、出演者かつ視聴者としてテレビバラエティを愛するタレント・でか美ちゃん。
でか美ちゃんは舟橋の携わる番組のファンで、Xで感想をツイートしまくっていた。その一方で舟橋も、彼女の出演番組やトークイベントをチェックしており、自身の担当番組にゲストで呼ぶようになったのがふたりの縁の始まりだ。
前編では、長年指摘されている「若者のテレビ離れ」とTikTokの違法アップロード問題から、今のテレビが求められている価値について、ふたりで考えた。
後編となる今回は、“人”に焦点を当てる。ディレクター目線でオファーしたくなる人や、思わず圧倒された出演者とは、いったいどんな人なのか?
※取材は2026年5月7日(木)に実施しました
目次
オファーするのは、根底に「優しさ」がある人
でか美ちゃん そもそもわたしが舟橋さんを知ったのは、『秋山とパン』がきっかけだったんですよ。
舟橋 2020年10月から翌年の3月まで放送していた番組ですね。
でか美ちゃん 当時はコロナ禍で仕事も制限されて、Twitterで発信することもないから、好きなテレビ番組のことをつぶやきまくってて。同時にテレビを作っている裏方の方々の発信もチェックするようになって、藤井健太郎さんの本を読んだり、自分の好きな番組のプロデューサーやディレクターの方をチェックしたりするようになったんです。
それで、あるとき気づいたんですよ。「わたしが好きな『秋山とパン』と『激レアさん』って同じ演出家の方がやってるじゃん!」って。それが舟橋さんだった。しかも、もともと相互フォロワーだったんですよね。

舟橋 ぼくはだいぶ前から、でか美さんのことは知ってて、SNSもフォローしてました。
でか美ちゃん わたし、業界っぽい人からフォローされたら必ずフォロバするんですよね。だから、最初は舟橋さんがどういう人かわからないままフォロー返してたのかも(笑)。なんで知ってくれたんですか?
舟橋 昔からトークイベントの配信を観るのが好きで、でか美さんがロフト系のイベントに出てるのも観てたんですよね。しゃべりがおもしろくて、この界隈の女王じゃないかと思ってました。
でか美ちゃん 女王ではないですけど(笑)。でも吉田豪さんとか南波一海さんのイベントを中心に出させていただいた時期はあって、完全にサブカル界隈でした。
舟橋 『有吉反省会』のでか美さんも印象的でした。地上波と、地下のロフト。それぞれで見せる一面が全然違って、幅を持ったおもしろい方だなって。

でか美ちゃん それから『激レアさん』や『キョコロヒー』に何度か呼んでいただいて。でも、ただの番組好きなよくわからないタレントを、よく呼んでくれましたよね。
舟橋 ぼく、「ファンだから、一緒に仕事したい」とか「好きな部分を広く知られてほしい」と思ってオファーすることが多いんです。たとえば、若林正恭さんとか太田光さんに対して“人への優しさ”を根底に感じるんですけど、でか美さんにもそう思ってて。
本当におこがましいですが、『キョコロヒー』のヒコロヒーさんもそうですけど、立場の弱い側を雑に扱わず、かつそれをおもしろく表現する、みたいな方が好きなんです。
でか美ちゃん めっちゃうれしいです! 自分も太田さんくらい優しくなれたらいいなと思っていたので。
舟橋 それにしても、でか美さんがあそこまでSNSで発信してくれる熱量はすごいなと思います。
でか美ちゃん そもそも“実況”っていう文化が好きすぎるんですよ。いろんな娯楽がある時代に、わざわざリアルタイムでテレビ観てハッシュタグつけてつぶやくっていうのが楽しいし、それをやっている人は仲間っていうか。
テレビってめちゃくちゃメジャーなメディアですけど、毎回リアタイで実況するっていう熱量はもうサブカルなんですよね。
舟橋Dが忘れられなかった、大病明けの芸人と「黒いちびまる子ちゃん」
でか美ちゃん 実は舟橋さんとのこの対談、定期的にやりたいと思っているんですよ。その時々のテレビ界のことを聞いたり、最近おもしろかったコンテンツを教え合ったりしたいなって。
舟橋 めちゃめちゃ光栄です。が……ここ2年弱は、子供が生まれたこともあって、映画とかドラマをあんまり観られなくなっていて。
でか美ちゃん そういうライフステージの変化とコンテンツとの向き合い方みたいな話もおもしろそうです!
舟橋 それならお話しできることもありそうです。それでいうと、今回はここ1年くらいで観た“忘れられないYouTubeの動画”を挙げたいんですけど、爛々の大国(麗)さんが復帰されたときの動画って観ました?
でか美ちゃん 観ました! 大国さんが大病から戻ってきて、後遺症はありつつも元気そうな姿を見せていて。
舟橋 あれ、めちゃくちゃ好きなんですよ。まず、2年越しに復帰されて、ふたりとも楽しそうなのがよくて最後まで観ちゃったんですけど、最後に大国さんが「みんな、あたしにいっぱい差し入れください」とボケるんです。
そしたら相方の萌々さんが、休養中に吉本の規定が厳しくなって「スターバックスカードとかも全部ダメになってしまいました」って指摘するんですよ。それを聞いた大国さんはショックでフリーズしてしまう。あの悲しそうな顔がめちゃめちゃおもしろかった。「一番ショック受けるの、そこなんだ」って思うとおかしくて(笑)。
でか美ちゃん 大国さんの素が出てて、かわいいですよね。
舟橋 あと、これもだいぶ前になるんですが、『豪の部屋』の梶原阿貴さんゲスト回もすごかったです。ぼく、梶原さんってテレビに出たらスターになっちゃう方だと思ってて。
でか美ちゃん 映画『「桐島です」』の脚本を書かれた方ですよね。彼女自身、お父さんが爆弾犯で、『爆弾犯の娘』(ブックマン社)という本も書いていて。けっこう壮絶な子供時代を過ごしてるのに、あっけらかんとしてるのがおもしろい。
舟橋 そうそう。「黒いちびまる子ちゃん」とも言われているように、キャッチーに毒気があるトークをされて、めちゃくちゃおもしろい方です。ご本人はテレビで活躍することに興味ないとは思うんですけど、意志があってテレビに出たらすごいことになる気がします。
ロバート秋山の企画力に圧倒「完パケの状態で出てくる」
でか美ちゃん わたしは、メ~テレ(名古屋テレビ)の『秋山の楽しすぎる約30分』ですね。本当にロバート秋山(竜次)さんが大好きで、この番組は秋山さんのやりたいことをただただ叶えるっていうコンセプトだから最高なんです。最近だと「シール交換」の回がめちゃくちゃ好きで。
秋山さんのシール帳が冷蔵庫なんですよ(笑)。実家の冷蔵庫って子供がシール貼ったり、水道会社とかのマグネットが貼られてたりするじゃないですか。あれで交換するって言って、冷蔵庫を台車に乗せて町中を運ぶんです。家族で撮った色褪せたプリクラに「うお、これやばい!」って食いつく(笑)。
舟橋 最高ですね。秋山さんって企画力がすごくて、『秋山と○○』シリーズでも打ち合わせから毎回楽しいんですよ。日常で気になったことが全部、秋山さんの脳内に吸収されてて、アイデアのストックが膨大なんです。普段から企画を練ってるわけでもないのに、簡単に打ち合わせをしているだけで、完璧な企画になっていくんです。
『秋山と映画』に、映画『レディ加賀』主演の小芝風花さんが出てくれたとき、映画にちなんで、秋山さんが旅館の女将に扮して小芝さんをもてなす企画を考えたんです。そのとき「『クンクン出動 赤だし捜査犬』っていうのはどうですか?」って言い出して。
でか美ちゃん なんですか、それ(笑)。
舟橋 「旅館といえば赤だしだから、旅館中に器に入れた赤だしを置いて、探してもらおうよ」って(笑)。それで庭の鹿おどしだったり、お風呂に浮かべたりするのを、小芝さんに探してもらう。ひっかけで、白味噌や合わせだしの味噌汁も置いて(笑)。
「旅館といえば赤だし」っていう、秋山さんが思う“あるある”から、連想ゲーム的にパッと組み立てていくんですよね。
人間のおもしろさ、かわいさが見えるコンテンツが好き

でか美ちゃん 『秋山と映画』でいうと、『ババンババンバンバンパイア』とのコラボ企画で、一般のおじさんに吸血鬼メイクをしていくのも好きでした。街で出会ったおじさんに、ただ化粧していってエキストラに仕上げるっていう(笑)。
舟橋 秋山さんは、街で会うみなさんとかエキストラさんに、妙なこだわりがありますよね。愛情も感じるし。
でか美ちゃん 『秋山の楽しすぎる約30分』の最新回は、エキストラに登録されてるおじさんたちとドライブするだけの回で。いわゆる「かかっちゃった」状態のおじさんもいれば、戸惑っている人もいる。
でもプロのエキストラの方々だから、秋山さんのムチャブリに応えようとするんですよね。あの一生懸命さ、油断してたら泣いちゃってたかもしれない(笑)。秋山さんの手にかかると、人間が愛おしく思えるというか、かわいく見えてくるんですよね。
こうやって話してて気づいたんですけど、わたしは「人間っていいなぁ」と思えるコンテンツを好きになりがちかもしれないです。ガッツリ、パッケージングされたものより、ちょっとほころびがあったほうがおもしろかったり。
だから秋山さんの、一般人やエキストラさんとの絡みが好きだし、舟橋さんの作る『激レアさん』のような番組に惹かれるんだと思います。
舟橋 もう終わっちゃったんですけど(笑)、そう言ってもらえるとうれしいです。
ぼく自身、「芸能人じゃなくても、こんなにおもしろい人がいるんだよ」とか「みんな誤解しているかもしれないけど、この人にはこんな一面があるんだよ」っていう、個人個人のかわいらしさ、おもしろさを見せたくてやっているところがあるので。

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