ウイルスより宇宙人を警戒していたトランプの意外な素顔(粉川哲夫)

2020.4.16
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文=粉川哲夫 編集=森田真規


『メディアの牢獄』(1982年)や『もしインターネットが世界を変えるとしたら』(1996年)などの著書を持つメディア論の先駆者として知られ、ラジオアートパフォーマーとして今も精力的に活動をつづけるメディア批評家の粉川哲夫。

そんな彼が、新型コロナウイルスの騒動を中国やフェイクメディアによる“陰謀論”とするトランプ信奉者、この混迷に乗じて「世界改革」を目論む人々、そしてトランプ大統領が“敵”と想定していた意外な対象など、今のアメリカを賑わせているトピックを縦横無尽に論じた。

グローバルな「侵略」が終焉を迎えるとき

去る3月28日、ニューヨークのヤスナオ・トネと電話で長話をしたら、ニューヨークがえらく懐かしくなった。ここで言うニューヨークとはマンハッタンのことだが、あるときから私はニューヨークに嫌気が差し、足が遠のいた。マンハッタンの同じ地域に住んでいた知り合いたちも大半がブルックリンに移り、マンハッタンに住むのはロクな奴じゃないといった意見に賛同していた。

まあ、ジェントリファイされたマンハッタンへの貧乏人のヒガミみたいなものもある。が、それでも911のようなことが起こると、懲りずに馳せ参じた。しかし、911以後のニューヨークの通関の係官の感じの悪さは並大抵ではなく、それでまた「もうニューヨークには来ないぞ」と思い直したりもした。

にもかかわらず、今度のCovid-19(新型コロナウイルス感染症)で「ニューヨークは終わりだ(New York Apocalypse)」なんて記事を見ると、居ても立っても居られなくなるのは、なぜだろう。近年、飛行機自体が嫌いになっていたにもかかわらず、「これからニューヨークに行きたい」という思いが込み上げてくるのだ。入国できないということがアマノジャクの私をそういう思いにさせるのであろうが、今後、おそらく、ニューヨークに限らず、これまでのように個人的な目的で気軽に国境を越えるということ自体が難しくなるだろう。

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ニューヨーク市でのCovid-19による死者は推定1万人を超える(4月15日時点)

考えてみれば、この間に我々はコロンブス以後の冒険家たちがやったことをもっと気楽なかたちで真似てきたのだった。領土や物品を奪ったり、住民を陵辱したり、性病をばら撒いたりはしないにしても、文化や感情のミクロなレベルではグローバルな「侵略」をして憚らなかった。それが今、最終的に終わるのかもしれない。

Covid-19の蔓延は、「グローバリズムのツケ」だという意見がある。それは確かだが、今回の危機への対処は都市のレベルでお茶を濁している。本当は、地球環境を陵辱してきたツケなのだと考え、単なる「都市封鎖」ではなく、「地球封鎖」をしなければならないのかもしれない。それは不可能なことではない。が、それには地球(グローブ)の住人が人間だけではない、ということを考えなければならない。都市封鎖だって、デリバリーやテレワークだけで生きていける者たちだけではないことが無視されるのだから、そういうことは土台無理かもしれないが。

ウイルスよりも宇宙人を警戒していたトランプ

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