各国代表の“前職”が国家スケールの決定に及ぼす影響(川田十夢)

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2020.3.23

文=川田十夢 編集=鈴木 梢


開発ユニット「AR三兄弟」の公私ともに長男で、開発者の川田十夢。AR(拡張現実)技術を駆使し、多くの人々を魅了する世界を作り出している。

前回は、いくつかの国のパンデミック映画から国際色について考察した川田。今回は各国代表たちの“前職”から国家スケールの決定に及ぼす影響について考える。

有事のプレイリスト、国家編。

連日にわたって報道されつづける、新型コロナウイルス感染症関連ニュース。「コロナ疲れ」なんて言葉も流通する今日このごろ。いかがお過ごしですか? 通りすがりの天才、川田十夢です。

映画の物差しで世界を鑑賞する試みをしたのが前回。今回は『ドラクエ3』感覚で、国家のプレイリストを紐解いてみようと思う。各国を代表する首相の前職が国家スケールの決定にどのような影響を与えているのかを検証するとともに、封鎖してしまいがちな国際色のパレットを開いてゆく。

※ 各国の感染者と死亡者の数は、この原稿を書いた3月18日(水)現在のもの。
※ 情報ソースは3月18日正午までの各国機関やWHOなどから発表された内容によるもの。

欧米諸国のリーダーの選択と職業

ボリス・ジョンソン

国:イギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)
前職:歴史家/ジャーナリスト
感染者数:1950人
死亡者数:60人

ボリスはジャーナリストであり歴史家。細菌やウイルスと科学的に戦ってきた英国の歴史にならって、主席医務官と政府首席科学顧問を同席させて会見を実施した。個人レベルでは石鹸と温水による手洗いの徹底が最大のウイルス抑止策であるとともに、国家レベルの考え(4段階の行動計画)を示した。

細菌による感染症は、1929年にイギリスのアレクサンダー・フレミングによって世界で初めての抗生物質であるペニシリンが発見されるまで、根本的な治療法はなかった。ウイルスによる感染症は患者自身の免疫に頼らざるを得ない状況、つまりまだ決定打となる迅速な解決方法は見つかっていない。イタリアでの大きな被害がイギリスまで広がる見方もあり、予断を許さない状況だ。

「集団免疫を獲得したい」と世界でも稀に見る方針を打ち出すも、英免疫学会などから厳しく批判された。有事以前はトランプ大統領と近しい国際的評価であったが、真価が1分1秒問われる状況。歴史的な評価を第一義的に選択することが、必ずしも国際ジャーナリズムの正解とはならない。

ドナルド・トランプ

国:アメリカ合衆国
前職:実業家
感染者数:6362人
死亡者数:75人

トランプはビジネスマン(実業家)だから、経済の冷え込みに誰よりも敏感だ。いち早く減税に動いた。100兆円を超える規模での経済対策を準備するなど、行動が早い。リベラル層が実感できなかった支持の理由、いわば実質の部分を、皮肉にもコロナを契機に世界中が知ることとなった。選ばれた理由を自覚しているリーダーは強い。有事も迷うことなく、大きな決定をいくつも打ち出している。

新型コロナウイルスのことを「チャイナウイルスだ」とTwitterで発言してしまうところが、好戦的であると同時にチャーミング。誰も口に出さないし、差別につながるからウイルス発生源の国を責めてはいけないとわかってはいるけど、世界感情のガス抜きは必要だ。本業ではないものの、2700万人以上の視聴者を集めたテレビ番組『アプレンティス(日本語で「見習い」の意)』のホストを務めたときに発揮された職能もまた、トランプの強みである。

ジュゼッペ・コンテ

国:イタリア共和国
前職:法学者
感染者数:31506人
死亡者数:2503人

法学者だったコンテは、全土封鎖や(食料品店や薬局などを除く)全店閉鎖など大胆な施策に打って出た。美術館や体育館を閉鎖、さらには刑務所での面会も全面中止としたため、暴動による死者も出ている。欧米諸国の牽制を押し切っての中国への接近(中国の一帯一路協力の覚書にG7で初めて調印)するなど、法律の枠を越えた大胆な行動も時には示すことができる。財政危機、医療崩壊など、国内の問題は山積み。まずは組閣という名のパーティ編成に、医療と経済と文化の専門家を入れて欲しいところだ。

アンゲラ・メルケル

国:ドイツ連邦共和国
前職:物理学者
感染者数:7156人
死亡者数:13人

ドイツ史上、はじめての女性首相であり元物理学者のメルケル。専門は理論物理学というだけあって、国民に対しての説明も非常に理論的。

3月16日にビデオポッドキャストを更新。新型コロナウイルスがどれだけ危険で、治療薬もワクチンも存在しないなかで感染速度をなるべく遅くして国の医療をいかに破綻させないかが重要だと冒頭で述べた。次に連邦共和国の成り立ちを説明し、権限が‪一カ所‬に集中しないシステムであることを説明した上で、迅速な対応に移行できるよう閣僚委員会を組織したことを説明。いかに有事であるか、国としてできる最大限の方策とは何かを理論的に説明した。国民一人ひとりの理解と協力が不可欠であることを示した。

さすがは元物理学者(専攻は理論物理学)、部分と全体を把握している。死者はヨーロッパの中でも劇的に少ない。これがリーダーの手腕によるものなのか、結論を出すにはもう少し時間が必要。


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