ミルクボーイ独占インタビュー【後編】なぜ這い上がり、M-1に優勝できたのか

2020.1.16
ミルクボーイ インタビュー

世の中が変わった。

僕らは何も変わってない

取材・文=鈴木淳史 撮影=長谷波ロビン
編集=森山裕之


M-1が一旦終了し(2010年)、ミルクボーイのふたりは進むべき道を失い、5年間漫才に向き合うことをやめる空白の期間が訪れる。駒場孝は先輩芸人と呑み歩くことを「仕事」とし、内海崇はギャンブルに明け暮れる日々を送る。そこからふたりがどのように抜け出し、M-1チャンピオンとなったのか。M-1優勝直後にこれまでのすべてを語った、ミルクボーイ独占1万3千字インタビューの後編。

■【前編】M-1がなくなり道を失った


やすともさんの言葉。オカンが倒れる

ミルクボーイが漫才に、お笑いに向き合うことができなかった空白の5年間。海原やすよ ともこがかけた駒場への言葉から、何かが変わろうとしていた。

駒場 その5年間は、今振り返っても本当になんにもなかったですね。あとから言われたんですけど、僕、「ネタは大事やけど、先輩方と遊びに行くのはもっと大事」と後輩に吹聴していたと。後輩も当時は、「ミルクボーイさんにはちゃんと漫才やって欲しかった」と心の中では思っててくれたようです。

内海 やすともさんに漫才のこと言われたって、僕にすぐには言ってこなかったよな。

駒場 やすともさんの番組で買ったムートンブーツを履いて、やすともさんに薦められた蝶々のタトゥーシールをくるぶしに貼ってたときは、「終わったな」って内海に言われたけどな。「お前もタトゥーシール貼れや!」とは思ってたけど。

内海 どういうことや!(笑)

駒場 僕、マジメやから、影響されやすいのよ。ある意味それは、芯がないってことでもあるけど。でもやすともさんは、ムートンブーツと蝶々のタトゥーシールみたいな女子の話もめっちゃするけど、漫才の話もめっちゃする。あの二刀流はすごいわ。

駒場は遠回りの末、ピンでの仕事を契機に本来の道に辿り着こうとしていた

2016年1月、やすよが体調を崩し番組を休み、ともこと駒場がふたりだけで韓国ロケに行ったことがあった。これが、駒場が再び漫才に真剣に取り組もうと思う大きなきっかけとなった。

駒場 韓国で毛皮を買いに行くというロケだったんですが、もう僕がまったく進行ができなくて。めっちゃ申し訳なくなってしまって……。そのとき、まだコンビふたりだったら戦えてたやろなと思ったんです。ロケからの帰り、着いた空港で実際に泣きました。そのすぐあとです。内海に、「そろそろちゃんと漫才やろ」と言いました。

内海 競馬できなくなるなとは思いましたけど……僕は、駒場がすっかり漫才をやる気はなくなって、これからも先輩と遊びに行ったり、漫才以外の仕事をやっていきたいのかなと思ってました。「もう一度ちゃんと漫才をやろう」と言われて、ようやくふたりの気持ちが混じり合ったと思いましたね。

内海はギャンブルに明け暮れながら、いつか駒場が戻ってくる時を待っていた

偶然、時を同じくして内海にも、漫才に改めて取り組むきっかけとなる出来事があった。

内海 そのころ、オカンがくも膜下出血で倒れてしまったんです。姫路の実家にいた弟から連絡があって、すぐに帰りました。当初、3分の1の確率で助からないと言われてましたから、親父と弟と僕の3人でいろいろ話し合いました。倒れた当日の朝、オカンがおでんをむちゃくちゃたくさん炊いてて、それをその夜に3人でつついたことを憶えてます。
たとえ一命をとりとめたとしても、麻痺などが残れば、今後介護の必要もあるやろし、果たして自分はそんな状態で芸人ができるのか。考えた末、「芸人をやめよう」と思いました。仲のいいいとこにも、「芸人やめるわ」と実際に報告しました。
すると翌日、オカンが目を覚ましたんです。すぐに病院に駆けつけたら、看護婦さんに「芸人さんをやってるの?」と言われて。オカンが目を覚まして、すぐに「息子が芸人や」と自慢したんだそうです。それを聞いて、「がんばろう」と思いました。ようやく尻に火がつきました。

(次頁「ライブイベント「漫才ブーム」が始まる」につづく)


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鈴木淳史

(すずき・あつし)1978年生まれ。兵庫県芦屋市在住。 雑誌ライター・インタビュアー。 ABCラジオ『よなよな・・・なにわ筋カルチャーBOYZ』(毎週木曜夜10時~深夜1時生放送)パーソナリティー兼構成担当。雑誌『Quick Japan』初掲載は、2004年3月発売号の笑い飯インタビュー記事。

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