年間100本以上のお笑いライブに足を運び、週20本以上の芸人ラジオを聴く、19歳・タレントの奥森皐月。
今月は、テレビバラエティで乱発した事件を紹介。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の「ランジャタイ国崎七変化」、『有吉クイズ』の深夜特別編で目撃した“お笑い事件簿”とは。
目次
ランジャタイ国崎が『ガキ使』七変化に挑戦!
「事件簿」と銘打ってはいるものの、事件というものはそう簡単には起こらない。ところが、ここ数週間のテレビバラエティで、私は「これは事件だ」と何度か思った。
テレビを観ているだけで事件が起こってたまるか、とも思うが、起こってしまったからには書かざるを得ない。
直近で最も衝撃を受けたのは、9月10日放送『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』の「ランジャタイ国崎七変化」だ。
映像を観る前にSNSで波紋を呼んでいるのが少し目に入ってしまったのだが、実際に観たときの凄まじさはこれまで味わったことのないものだった。
この「七変化」企画は、今年1月にザ・マミィの酒井(貴士)さんが歴代1位の記録を叩き出していたため、それにつづいて国崎(和也)さんが好成績を残したらうれしいなと思い観たのだが、正直結果なんてどうでもよくなってしまった。
芸人さんにとって「七変化」とはやはり特別な機会なのだろうと思う。誰の回を観ても、とてつもなく気合いが入っているし、緊張が伝わってくることも多い。やり過ぎじゃないかと思ってしまうこともあるが、その本気度とガチさが大好きだ。
ちなみに過去の七変化で私が好きなのは、千鳥・大悟さんの回と、森三中・黒沢(かずこ)さんの回。日常でふと思い出すことがある。
松本人志「基本が一番わからない」国崎ワールドが炸裂
国崎さんの七変化は、1本目がまさかの全員セーフ(ひとりも笑った人がいない)で不安になった。
このままの調子で進んだらヤバいぞ……と思ったが、2本目はランジャタイらしいしつこさがきちんとウケていた。国崎さんってお寿司好きだよなぁとぼんやり思う。
序盤から松本さんに「基本が一番わからない」と言わせる国崎ワールド。わからないのにおもしろいのがランジャタイの魅力だと私は思っている。
「全財産を使ってその場で460万円分のアート作品を購入する」なんて、わからないの極みだ。どうしてそんなことをするのだろう。
わからないし、決済もうまくいかないし、ぐちゃぐちゃしているせいで、レギュラーメンバー全員の眉間にシワが寄っていて、その様子を見て笑ってしまった。
七変化でウケるでもスベるでもなく戸惑いを起こすのはすごいと思う。ハプニングが味方して全員の笑いを取っていたのも、ランジャタイ特有のランダム性を感じた。
空気が国崎さんの方向に流れ始めた後半、とうとう我々は国崎さんの内部に連れていかれてしまう。東京タワーの脳みそが三角で、そこにジャムを塗るネタ。
放送を観ていない人からすれば嘘すぎると思うかもしれないが、本当に私は観た。目撃したというほうが正しいかもしれない。
今から毎日18時間睡眠にしても、主食をハイチュウにしても、黄色いジャージで生活しても、絶対に辿り着かない、辿り着けない世界だ。
その次はヒーローものの敵集団が現れ、大量の煙で周囲が真っ白になり、煙が流れ去ると、そこにオール巨人師匠が回っている。そして終わる。国崎さんってオール巨人師匠好きだよなぁとぼんやり思う。
昨年のダイアン津田(篤宏)さんとのコラボネタのときにも感じたが、国崎さんのお笑いは大がかりになればなるほど笑ってしまうかものしれない。
ランジャタイ、唯一無二の“おもしろさ”と“怖さ”
そして問題の6本目。
「Take On Me」の陽気なメロディにノリながらバリカンで眉を剃り、よくわからない建物に祈る、食べ物が出てきてそれを食べる、ノリながらバリカンで髪を剃る、うしろではおばあさん風のふたりと茶色い謎のバケモノがノリノリで踊っている。
「高熱のときに見る夢」という表現が使われることがよくあるが、こんなもの見られてたまるかと思った。体温が48度になったとしてもこんな夢は見ない。
身体を張るボケとして芸人さんが坊主にすることはわりとあることだが、今回は話が違うと思った。坊主にする以上の要素があまりに多くて意味がわからなすぎる、怖い、わからないが同時に起こっているせいで目が離せない、結局おもしろい。
これまで見てきたランジャタイとも、これまで観てきたお笑いとも違う何かを、テレビ越しに確認した。
その衝撃にうろたえているまま、最後は眉も髪もなくブリーフ一枚で、なぜか腹部に巨大な十字架のタトゥーのようなものが描かれている国崎さんが自由に動き回る。人間が鳥のように自由に飛ぶことを夢見ているのならば、あの国崎さんには翼が生えていた。
2本の足では説明がつかないくらいの自由。その無敵感がおもしろいし、同時に底知れぬ恐怖も感じる。ついこの間観たホラー映画より断然こちらのほうが恐ろしかった。
結果は3位という好成績。これだけ好き勝手やってきちんとウケているのがかっこいい。トラブルが起こってしまった「全財産を使うネタ」をYouTubeでやり直した動画もおもしろかった。
なぜかランジャタイのチャンネルではなく、国崎さん個人のほとんど稼働していない『ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん』チャンネルで更新されているのもよくわからない。全部わからない、わかりようがない。
Travis Japan・松田、『有吉クイズ』で“最高のお笑い”
さて、個人的にうれしいバラエティ関係の出来事でいえば、『有吉クイズ』の深夜枠復活だ。
有吉(弘行)さんが勝手気ままに振る舞う姿や、深夜でしかできない企画、あまりにニッチな内容が大好きで毎週観ていた。ところが昨年からゴールデン枠に移り、かなり番組のテイストが変わって放送されるようになった。
深夜時代の『有吉クイズ』で有吉さんがオリエント工業のショールームに行っていたのに感動して、私も18歳になってから聖地巡礼のようにきちんと足を運んだ。自由奔放な有吉さんの姿のファンなので、当然『有吉クイズ』は大好きな番組だ。
それ以外にも「野田クリスタルさんが街中の重たいものを持ち上げられるか予想する企画」や「季節にちなんだどぶろっくの『イチモツ音頭』の歌詞を予想する企画」、「U字工事・益子(卓郎)さんの料理をただ見る企画」など、どれも好きだったので、ゴールデンに移ってそれらが観られなくなり残念に思っていた。
しかし、今年10月からまた深夜放送に戻るとのこと。レギュラー放送に先立って、9月9日に深夜特別編が放送されていたのだが、これがたまらなかった。
なによりうれしかったのは「持ち上げクイズ」が観られたこと。今回は野田クリスタルさん、Travis Japanの松田元太さん、和田まんじゅうさん、元力士で俳優の澤田賢澄さんの4名で、パチンコ玉12箱(100kg)を持ち上げられる人を予想する企画だった。
持ち上げファンとしては大興奮の内容だったが、Travis Japanの松田さんが最高にお笑いをしていて、テレビを観ながら笑い転げてしまった。
スタジオの期待を背負って挑戦するものの、持ち上げる前に箱のバランスを崩してパチンコ玉をぶちまける。どうにか立て直して持ち上げようと鬼の形相で箱に手をかけるが、どんどんバランスが悪くなり、全部倒す。バラエティとして最高。
そして、落とした玉を拾い、まわりから「アルバイトで失敗したヤツ」のように扱われている姿がアイドルとは思えなくて本当におもしろかった。
その後、和田まんじゅうさんが発案した“バランスが崩れにくい持ち方”で松田さんが再挑戦するのだが、箱と箱の間に股間を挟んでしまい、結局全部ぶちまけて股間を抑えながら床に悶絶して倒れ込んでいた。
今まで観たアイドルのバラエティシーンで一番笑ったかもしれない。お笑い全部載せ。終始おもしろかった。
後半の、下ネタを交えながらカルタを考える謎企画も含めて、深夜の『有吉クイズ』が帰ってきたという幸せな気持ちになれる放送だった。
レギュラー放送では、野田さんの持ち上げクイズと、どぶろっくの歌詞当てクイズがまた観られることを心待ちにしていようと思う。
「テレビはオワコン」とは言いたくない
『水曜日のダウンタウン』での「チャンス大城さん、うどん強奪事件」や、『千原ジュニアの座王』での「初グリーン車のライス、無双事件」など、今月はバラエティでの事件が乱発していた。
残念ながらすべては書き切れないし、前者に関してはもはや書きようがない。ただ、涙が出るほど笑った。暗闇でうどんを奪って、明かりがついたらうどんを食べている、それだけなのにしばらく笑える。
ネットでもライブでも配信でもお笑いを観ているが、やはりテレビバラエティはおもしろい。テレビの時代は終わった、というのは本当だろうかと最近思う。
まだまだおもしろいテレビ番組はたくさんあるし、それを作っている人がいる。だから適当にオワコンなんて言わず、素直に観つづけたい。
テレビで観るお笑いも、劇場で観るお笑いも、全部お笑いで全部おもしろい。これを人に強いるつもりはないが、自分くらいは忘れずにいようと心がけている。
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