バカリズムが他人の言葉で笑うようになったきっかけの番組とは?「初めて番組のことを考えるようになった」(アンタウォッチマン!)

バカリズム

トップ画像=『クイック・ジャパン』vol.121より

文=てれびのスキマ 編集=梅山織愛


テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『アンタウォッチマン!』(5月30日放送)

2週にわたりバカリズムを特集。前編はバカリズムの“原点”の話が中心であまり聞いたことがない話が多くてとても興味深かった。

子供のころは、「チビ」と言われたら100%殴りかかっていたというバカリズム。背が小さいことをコンプレックスに思っていたというよりは、それを「優劣の劣にしようとしてくることが許せなかった」と、世間に対する疑問と戦う彼のルーツを感じさせる話。そんな話の合間に紹介される少年時代のバカリズムの写真が、ことごとくへの字口をしているのがおもしろい。

独自の目線を使った理屈っぽい笑いに目覚める話も。小学6年生のときの担任は、理屈でねじ伏せて怒ってくる先生で、いつか言い負かせたらと思っていたそう。あるとき、保健室の掃除をタラタラやっていたら、保健の先生に怒られ「帰れ!」と言われ、教室に戻ると、それを聞いた担任に「なんで帰ってきたんだ!」と怒られた。そのとき、バカリズムは「掃除をタラタラやったことを怒られるんだったらわかるけど、帰ってきたことを怒られるのは納得がいかない」と抗議。それを指摘されその先生が「うっ」という表情をしたのを見て「勝った」と思い気持ちよかったという。それが理屈っぽい笑いを志向した始まりだったのではないかと語る。

ほかにも、『ひょうきん族』のパッケージの仕方がバカリズムのスタイリッシュなライブの作り方に影響を受けているだとか、幼稚園のとき、トレースして描いた絵が褒められ、それをつづけたことで「手が覚え」て絵がうまくなっただとか、無機質な衣装を使っていたのは、日本映画学校時代の発表会で、いろいろな役をやるときに全身黒ずくめの「基本衣装」を着るのをいいなと思い、お笑いに流用したもので、自分たちが最初ではないかという話だったり、どれもバカリズムらしく理があっておもしろい。

盟友のふかわりょうはテレビでブレイクしたあと「彼がワイプで抜かれて他人の言葉で笑っているというのが衝撃」と語る。やはりバカリズムは笑顔を見せるようになって“かわいげ”を獲得し、テレビでもブレイクしたと思う。

そのきっかけとなったのは、ピンになってすぐに抜擢された『アイドリング!!!』の司会だという。「自分が笑わないと番組が楽しそうに見えない」と考え笑うようになった。「今までは自分のことを考えてたけど、初めて番組のことを考えるようになった」と。この『アイドリング!!!』という番組は菊地亜美、朝日奈央らの才能を発掘したけれど、なによりも「テレビタレント」バカリズムを誕生させた番組なのだと思うと、意外なほど芸能史にとっても重要な番組なのかもしれない。

『午前0時の森』(5月30日放送)

以前、アメリカロケで現地の人のウケがよかったことから、若林の「アメリカのコメディの舞台立ったら盛り上がるかも」というひと言をきっかけに「TAIGAがニューヨークのステージに立つ!の森」と題して、アメリカの舞台挑戦に密着。ナレーションに花澤香菜を起用する力の入れよう。

当初は「日本」を意識した躰道ネタをやろうとも考えていたTAIGAだが、18歳までアメリカに住んでいた後輩芸人わっきゃいの「お客さんと一体で作っていくのがアメリカのコメディ」「ネタというよりショー」「観客を巻き込むネタがいい」といったアドバイスを受けて、やはりエルヴィスの格好でツイストを踊り、歩数計を100ちょうどで止めるネタを選択。

そしていよいよニューヨークのブロードウェイ・コメディ・クラブの200人満員の観客の前でネタ。出てくるなり大笑いする観客もいて、ネタが始まると、さらに大ウケ。ネタを終え、充実感に満ちたTAIGAの表情が感動的だった。

VTRが終わりスタジオに登場したTAIGAもどこか自信に満ちあふれている感じ。番組全体がTAIGAへの愛情に包まれていた。最後に自伝『お前、誰だよ!―TAIGA晩成 史上初!売れてない芸人自伝―』(いいタイトル!)を告知すると、若林「宣伝で出るのはちょっと生意気(笑)」。


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2023年のテレビ鑑賞記録。

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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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