マツコが分析「一見すぐ消えそう」なやす子が生き残っている理由(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ”が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。2020年から毎日欠かさず更新中。


『有吉くんの正直さんぽ』&『マツコ会議』

どちらの番組も、ゲストはやす子。

有吉は、やす子がブレイクするきっかけになった『おもしろ荘』に立ち会った人物のひとり。「そういう方たちに会えると感慨深いですね」とやす子は語る。

寝られないくらい緊張したというが、やす子のかわいらしさ全開のさんぽロケ。有吉も「よくがんばってやってるなあ。一見すぐ消えそうじゃん?」と感心するが、その一見すぐ消えそうだけど消えない理由の答え合わせのような番組が『マツコ会議』だった。

こちらでは、迷彩服ではなく私服で自宅からの中継。山口の宇部出身と聞いて、有吉もマツコもセメント工場をすぐに思い浮かべるのがおもしろい。

自宅の壁には「2023年 稼ぎ楽しむ」「仕事を取り続ける」「目標 年収2500万」といった自筆の貼り紙。「昔すごく貧乏だったので、今はお金を稼ぐことがモチベーション」だとやす子は言う。以前の『しゃべくり007』などで垣間見せた家庭環境を考えるとよくわかる。

また、キース・ヘリング、NEKO KEN、草間彌生らの作品が飾られており、アート好きの一面をのぞかせる。

机回りにはBES、鎮座DOPENESS、Fla$hBackSのジャケットが配置され、パソコンのデスクトップにはFEBB AS YOUNG MASONの写真が設定されていたりと、ヒップホップなどの音楽好きの一面も窺える。

「全部諦めてた、18歳くらいまで。もう人生、はい、終わり~みたいに」と語るやす子に「自分も、社会とどう折り合いをつければ社会の一員になれるかまったく見えなかった」と共感を寄せるマツコ。

やす子は「ハタチくらいまでずっと生きづらくて、どこに行っても変に目立ってしまいますし、人間関係もうまくできなくて、自衛隊を辞めてトイレ掃除をひとりで黙々とやる仕事に就いたんですけど、もうこのまんま誰とも付き合わずにひとりでロボットのように働いて死ぬんだ~って思ってた」と吐露。

そんなときに出会ったのがお笑いで、ザコシショウの単独ライブを観て「ひとりで何百人の人を笑かしてるパワーがすごかったんです。人ってこんなにパワーがあるんだって思って、自分もそういうパワーを与えられる人になりたいと思った」という。

やっぱりザコシショウはスゴいとマツコ。「SMA(Sony Music Artists)が強いのもわかる」と。ちなみにマツコに最初に声をかけたのが、SMAのお笑い部門を作り上げた名マネージャー・平井だったという驚きの情報も。

マツコは「異物愛がスゴいんです、あたしは。テレビってあんまり異物が出なくなって、なるべく排除する方向に来てるじゃない? そんななかでやす子ちゃんって、ギリギリ令和のコンプライアンスに違反しない異物だと思ってる」「そういう人を観る“箱”であるべきじゃない、テレビって」と語る。

「観てる人のほとんどが明るいやす子ちゃんを観てるんだけど、ただ明るいやす子ちゃんだったらたぶん残れてなかったと思う。だからみんなどっかでいい意味での狂気性というか、今観ているやす子ちゃんがすべてではないんだっていうのをなんとなく本能で感じるから、もう一回観たいって思うんだよね」と、やす子が人気の理由を分析。

やす子は「ここしか居場所がない。ここで、今まで出会ってきてバカにしてきた人とか見返すぞ~って気持ちでやってます。あと、逆に自分のような立場の人をめっちゃ笑顔にさせるぞって」と反骨心をのぞかせる。「やす子というテレビに出てる存在は確かに自分なんですけど、より自分の理想形の自分」なのだと。

やす子が「自分の内面を触ってくれた人が初めてだったので、全部話したくなりました」と言うように、マツコは対談相手と自分との共通点を見つけて、その部分の本心を自らさらけ出すことで共感を寄せて、相手の核心を引き出すのが本当にうまい。

やす子自身もなぜか「5時間くらい」話したいと言っていたが、本当に5時間くらいふたりが話しているのを観ていたい、とてもいい対話だった。

途中、まじめな話をしつづけて、突然ブリッジを始めるやす子「どうしたらいいかわかんなーい(笑)」。


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2020年のテレビ鑑賞記録。

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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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