『R-1グランプリ』“ヤラセ疑惑”を覆す「孤独な戦い」のかっこよさ

文=でか美ちゃん 編集=高橋千里


3月4日に生放送された『R-1グランプリ2023』決勝戦(カンテレ・フジテレビ)。ピン芸で戦うお笑い賞レースを観て、自身も“ソロアイドル”としてひとりで活動をつづけているでか美ちゃんが「背中を押された」瞬間とは?


「ひとりで生きられそう」なソロアイドル・でか美ちゃん

先日、Juice=Juiceの武道館公演にアイドル仲間の寺嶋由芙ちゃんと一緒に行きました。圧巻のパフォーマンスにほくほくとしたまま解散した帰り道、インスタグラムのストーリーズでタグづけが。寺嶋由芙ちゃんからです。

“「1人で生きられそう」ってあまりにも言われそうな2人で観にいきました”

寺嶋由芙ちゃんのインスタグラムより

Juice=Juiceの名曲『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』をもじったライブ鑑賞報告にクスッと笑いつつ、いやあまじでさ、まじでウチらってそうなのよね……となぜかその場で夜空を見上げてしまいました。

Juice=Juice『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』

寺嶋由芙ちゃんとの関係性を「アイドル仲間」と書いたのはそのとおりで、お互いユニット経験などはありながらも、ステージには基本的にソロで立ちつづけている私たち。由芙ちゃんの分はまだしも自分でいうのは恐縮ですが、アイドルイベントではなにかと小回りが効くので、急なトラブルの際も頼っていただけるタイプ。

そつなくこなせるし、芸歴も長くなってきたし、頼られたら断る理由なんてないし、もちろん支えてくれるファンの方やスタッフさんもいるし、その方々への感謝も尽きないし。

でも、でもさぁ!という孤独が私(たち)にはあるわけです。

そういう意識が言葉を交わさずともなんとなくうっすらあるのが、ソロアイドル界隈。そもそもでか美、お前アイドルか?とツッコみたい人のことはちょっと今回は置いていきますが、まあとにかく無言の連帯、みたいなものが私たちにはあるわけです。お互いが現場にいるとけっこう安心するというか。

だから、メンバーではないけど「アイドル仲間」って呼びたくなる存在、それが寺嶋由芙ちゃん。

『R-1』で“ヤラセ”をするメリットって何?

そんなわけで、「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?と聞きたくなるような夜はこれまで何度も越えてきましたが、結論からいうとコレ、褒めてます。褒め言葉です。

褒められてるってわかった上での孤独感ですよね。だから私は、この孤独感と共に、たまに仲間に会いながら活動していくって決めてるんですよ。

でも、でも! しつこいようだけど寂しいときは、ある! それはどうしても、ある! ひとり! つらい! やだ! 誰かー! 誰かいませんかー! 自分しかいねぇ! やるしかねぇ!

私だってメンバーと一緒にひとつの目標に向かっていろいろ分かち合いたかったし、同じ熱量で、同じ経験で、同じ志で、抱き合って泣いて、肩組んで笑いたかったんですけど?????

そもそも自分に関しては、集団行動が苦手だから結果的にソロになってる側の人間でもあるので、何をしたってないものねだりだよなぁとも思います。

そして、そんなわがままな私の背中を押してくれる大会がありました。

そうです! 『R-1グランプリ』!

R-1グランプリ2023
R-1グランプリ2023

言わずと知れたピン芸の大会。ピン芸であればなんでもありのお笑い賞レース。『M-1グランプリ』『キングオブコント』『THE W』と並ぶ、決勝戦が全国放送される代表的なお笑いの大会ですが、どういうわけかほかと比べて不思議な存在感を放っています。

ウエストランドが『M-1』で優勝した際のネタでは、「『R-1』には夢がない」とイジられていましたね。それを受けて、大会の宣伝文句に使われていたり(笑)。

リハーサルデータの誤表示の件で謝罪されていたり、大会終了後にアタフタしてしまったのは出場芸人さんや関係者にとってはかわいそうだなあと思いつつも、これに限らず「『R-1』ちゃんのすっとこどっこいなところ、けっこう好きだよ☆」と思ってしまう自分もいたり。

ほんとよくないファン代表みたいな言い方ですけど! 人がいっぱい集まっていろいろ作ってるんですから、大小問わずどうしてもミスはありますよね、と。世の中のすべてのミスに思うようにしているので、今回もそれでした。

『R-1グランプリ2023』やらせ問題について

ヤラセヤラセ言ってる人は、ヤラセをすることの労力を考えてみてほしい(笑)! メリットもないし! むしろデメリットばっかり!

それに、綿密にそんなことをする大会だったら、ファイナリストを武将の格好からモーフィングする演出とかしないと思うんですよ。なんともいえないあれ、めっちゃ好きだったな……。『R-1』ちゃんのそういうとこ好きだよ! 擬人化したら絶対かわいいよ!

でか美ちゃんが爆笑した『R-1』決勝ネタ

そんなことはさておき、本当に今年もファイナリスト7名と敗者復活者1名、皆さんおもしろかったー!

(C)カンテレ

トップバッターのYes!アキトさんは、ギャガーらしくギャグをふんだんに織り交ぜたコントを。去年のギャグの羅列が個展だとすれば、今年はでっかいキャンバスに描かれたひとつの作品をドカンと観られたような気分!

おもしろかったなー。あと、アキトさんってめちゃくちゃ声がいいですよね。いい声だし、おもしろい声。ギャグの発声に一番適した声してませんか! 早く音声つきのLINEスタンプを個人で出してほしいです。「プリン冷えてんじゃん!」をマストで入れてほしいです!

寺田
(C)カンテレ

寺田寛明さんは『ことばレビューサイト』。寺田さんのネタって、自分も参加したくなる大喜利感もありつつ、自分じゃ絶対思いつかないフリップ(今回はモニター)が次々に出てくるから、気づいたらいつもずーっと笑っちゃってます!

なんらかのオタクをしている人たちに特に響きまくった「付和雷同」のくだりは、熱烈なアイドルオタクの寺田さんならではで最高でした! 私だけが「同」のよさを知ってるんだってみんなに言いたくなる。こういうオタクに限って、入口は絶対に「雷」なんだよな。「同」、無限回収します。

サツマカワRPG
(C)カンテレ

サツマカワRPGさんは、審査員の野田クリスタルさんも評していたように、小道具や音響など演出なし身ひとつのネタ! 痺れました! 独特の世界観でさまざまな登場人物を演じ分けていて、食い入るように観ちゃったけど、やっぱ気づいたらゲラゲラ笑ってましたね。

あの街の地図が見たい。ラーメン屋、バー、空手教室、ひと駅ほど過ぎたらマジックが趣味のSEがいるロボット研究所(?)があるはずですね。ネタ終了後の、いわゆる「平場」がハチャメチャなのも爆笑しました! ラッキーって言葉があんなに違和感あったの初めて。

カベポスター永見
(C)カンテレ

ポツンと置かれたイスにサラリと座り、「世界でひとりは言ってるかもしれないひと言」をとにかく繰り出したのは、カベポスターの永見さん。審査員の小籔千豊さんも「(ひと言から)想像してしまう」というように、こちらの脳味噌をちょうどよくくすぐるようなネタに何度も大笑いしました……。

表情も、常になんともいえない品のよさ。やろうとしてもできないです、あの表情。まじで鏡の前で一度チャレンジしてください。絶対できないんで!

そんな永見さんは、普段はコンビで活動されていますね。コットンのきょんさんも同じくです。コンビ芸人の方でもピン芸であれば出場できるというルールが、『R-1』という大会をより盛り上げているのでは?と個人的には思います。

優勝・田津原理音のカード開封ネタに「女オタとして共感!」

R-1
(C)カンテレ

そしてファイナルステージに進み、見事優勝を果たしたのは田津原理音さん! トレーディングカード開封の様子を映像と実演どちらもステージ上で観られる仕組みも新鮮だし、とにかく一枚一枚のカードの完成度も超高くて、全部おもしろかったー!

2本目のネタでは乙女ゲームのカードになり、スリーブがキラキラにデコってあるのとかも爆笑! この時代にあえて強調していいますが、「女オタ」としてかなり共感しました。最高。てか、あのカードかなり欲しい!

田津原
(C)カンテレ

しかも、ド緊張するはずの本番で、あの機材さばきはすご過ぎますよね。あとで見直してから冷静に思ってしまいました。カメラワークうめぇ!

『R-1』の事前番組によると、田津原さん、プロ級のカメラの腕前をお持ちだそうで。写真コンテストでも優勝経験あり! Wikipediaの受賞歴に当たり前のように「ネモフィラ祭り2021 Instagramフォトコンテスト グランプリ」と「第21回 R-1グランプリ2023 優勝」が並んでいるのもおもしろ過ぎます。

いやはや改めて、田津原さん優勝おめでとうございます!

ひとりで舞台に立つのは、かっこよくて、おもしろい!

でか美ちゃん
でか美ちゃん

『R-1グランプリ』を通して確信しました。やっぱり「ひとりで生きられそう」って それってねぇ、褒めていますね、と!

プロとしてうまくいくのが当たり前で、何か起きたらすべて自分の責任。ひとりで舞台に立つのって孤独だけど、やっぱりかっこいいし、美しいし、なによりやってて一番おもしろい!

これからも、時には孤独を感じながら、つらくなったらあの武将モーフィング映像を思い出してがんばるぞ! 最前線に立つ武将は私ひとりだけど、うしろにはきっと仲間がいますから!


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でか美ちゃん

(でかみちゃん)一度聞いたら二度と忘れられない名前と、ふざけた芸名とは裏腹に的確なコメント力を武器に、場所を選ばず大活躍。『有吉反省会』(日本テレビ)レギュラー出演のほか、自身の楽曲の作詞作曲やライブ活動、楽曲提供、グラビア、映画出演、コラム執筆などジャンルやメディアに捉われず活動中。さまざまなユニ..

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