『あちこちオードリー』『チャンスの時間』でわかるダウ90000の現在地(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『あちこちオードリー』

ゲストは「劇団を率いていた人と劇団を率いている人」として吉本新喜劇元座長・小籔千豊とダウ90000蓮見。

もともと芸人が大好きだった蓮見だが『イロモネア』を観てこの人たちみたいにはなれないと芸人を諦めたという。「最終的には劇場に引っ込みたくて」「劇場を作りたい」と夢を語る蓮見は、そのために今はテレビに出て知名度を上げていると。テレビに出る自信がずっとなく、『ダウンタウンDX』などにも出たが全然うまいことできなくて「ほらね」と思ったと本人は言うが、『チャンスの時間』での立ち回りを見ると全然そんなことはないと思う。小籔も「自虐陰キャエピソードができてるからあなた勝ちよ」と評価。

Aマッソ加納には「こんなキレイな1トップ見たことない」と言われたというダウ90000。そんなメンバーについて、当て書きをやり過ぎたために「香車」のような役者になってしまったという。これには、若林も春日に当て書きしているため共感すると蓮見は春日のことを「当て書きの究極体」と形容する。やっぱり蓮見のこういう返しがいちいち秀逸。

春日が若林の台本でスベったとしても「スベらされたとは思ってない」と言うと「うれしいこと言ってくれるじゃん」と心底うれしそうな若林。それが金のテロップになっているのが可笑しかった。

メンバーはみんなまだ「蓮見についてきている」意識で「自分も評価の対象になっていることに気づいていない」、「こんなわかりやすくここ2~3年チャンスなのに何をダラダラやってんだよ」などメンバーへの不満を語る。昨年末に全員がバイトを辞められたため「バイトの時間が空いたぶん、何してくれるかが楽しみ」だという。今は「無責任に褒めてくる大人から遠ざける」ことに腐心していると。チヤホヤされてしまう若者あるあるで、若きリーダーの苦悩がビシビシ伝わってきた。

そんななかで小籔が「モチベーション、人間全員がそろうことないから」「人になんか言って人格変わる瞬間って(ない)。なんぼ言っても基本的に変わらない。言われてたことが『そうか』って自分で気づいたときに変わる」などと年長者ならではの達観した助言をしていたのがとてもよかった。

一方で「若い人怖い」とよく言われるが「おじさんのほうが怖いに決まってる」と蓮見。敵対心などがあるなしに関わらず「みなさんが思ってるより人の圧が出てる」と。これは自分も肝に銘じなければならないなと思った。

『チャンスの時間』

あまり知らない人からするととっつきづらい、世界観が強そうと勘違いされがちのダウ90000を「助けたい!」という企画に「めちゃくちゃよけいなお世話、ダウ90000絡んじゃダメよ、この番組と!」とノブ。この番組を好きで観ていたという蓮見は「観てるからこそ出たくはなかったです。シンプルな人間しかいないからバラエティに向いてないなと思ってこうやってやってるのに、純度100%お笑いのところに来させられても何もできない」と語る。

まずコントを見せると大悟は「これは危ないね。なんぼでも足していけるわ」とダウに足りないものを入れる、と「大悟軍団」を集結させる。そのメンバーは水玉れっぷう隊・ケン、はんにゃ金田、野田ちゃん、ネゴシックス、東坂みゆ。ノブ「お笑い刑務所やん!(笑)」。

まず金田の酔っ払いキャラを入れてみると「おもしろいだけですよ!」「じゃま過ぎる!」、ネゴシックスが入れば「ここで来たらじゃまだなってところでは来なかった」、東坂みゆには「ウケるわけないじゃないですか!」、野田ちゃんには「先輩がネタやり出したら止めれない!」、そしてケンには「関東の若者で絡みたい人いないですよ!」と蓮見のツッコミの切れ味が抜群。

後半では番組恒例のネルソンズ岸による改名案が提示される。改名案を1回捨てたら戻せない、俗にいう「Tinder無料会員システム」で選ぶというもの。「紅鴉興行」だとか「高菜漬け喜劇団」「DOREgaDAREdeDAREgaDORE(どれが誰で誰がどれ)」など絶妙に引っかかりある名前で相変わらず素晴らしいネーミングセンス。そんな改名案に「劇場で食べていきたいのでテレビに焦点を合わせた名前は別にいらない」とか「そういうの(親しみやすい)じゃないのでがんばろうってなってるじゃん。なんで今からそれに寄せに行くの?」など蓮見の返しがそのまま自分たちのスタンスの自己解説になっているのが秀逸だった。ダウ90000の輪郭がハッキリ見えてくる企画になっていた。

ふたつの番組でダウ90000の現在地がとてもよくわかった。

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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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