有吉弘行の想いがあふれた『紅白』歌唱と「アメトーーク大賞」受賞「天国のジモンさんに(笑)」(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『アメトーーーーーーーーーーク年末5時間SP』

年末SP恒例の「さんまvs売れっ子若手芸人」では、蛍原が体調不良のため代理MCに陣内。そこに「ホトちゃんひとりになったから(助けるために)出ようと。その蛍原が4年目でいなくなった」と苦笑しつつ、さんまが参加。もはや『お笑い向上委員会』のような座組みに。

その『向上委員会』を今回出演している若手芸人の半数以上が「断っている/断ったことがある」と知ると「ホンマに待ってくれ!」と熱くなるさんま。「お笑い芸人だけのバラエティを残したいと思って、その一心でがんばってやってる」「お前らの道を作ってあげるために俺は一生懸命……!」とその思いを吐露するも、吉住は「その熱い思いがちょっと迷惑」とばっさり。

吉住はほかの場面でも果敢にさんまに立ち向かい、たとえばさんまのファンへの神対応についても「さんまさんがすると芸人の正解がそれになる」「私みたいな人間からしたらそれは美談じゃなくて奇行」と鋭く切り込んでいたのが印象的だった。

「アメトーーク大賞」に、MC横ゲストとして参加した有吉は「大好きな番組なので今日楽しみにしてます」と俳優ゲストのような挨拶で笑わせる。同じくMC横ゲストの出川は「芸人にとっての『紅白歌合戦』ですから!」といつもどおりまっすぐ。

今回、初めてノミネートされたのは春日。女性が好きな芸人のアンケート結果に盛り上がっているなか、「今、ぐわーっと盛り上がっててひと言も発さない春日って素敵だな」と有吉が指摘すると、春日「ええ、いずれ順番、回ってきますから」。

ビジュアル映像部門で3位に濱家とザキヤマの「シャッフル漫才」が入ると、濱家は「誰とでもできる」とザキヤマが評した流れから春日と濱家が漫才をすることに。身体の大きなイメージのある春日だが、長身の濱家と並ぶとひと際小さく見える。それに川島がすかさず「こども店長」とたとえていたのが秀逸だった。

流行語部門10位に入ったのは「兆楽大好き芸人」でオズワルド伊藤が「宇田川三権分立」と明らかに用意してきたフレーズを発したときに、MC横だったケンコバが「トーク番組で前の晩に考えてくるやつ、大嫌いや!」とばっさり斬ったひと言。これには有吉が「ケンコバさんが厳しいな」と笑う。「あんなのは俺のこと嫌いじゃないと言えない」と振り返る伊藤に「言い過ぎた」とケンコバ。だが、この「用意してきたボケ」がこのあと、キーワードとして番組のひとつの軸になっていた。

江頭と出川によるVTRでは、出川が「生きてる実感するぜ!」と叫びながらカースタント。車で障害物を取り除くとそこにはダチョウ倶楽部のギャグフレーズ「みんな仲良く和気あいあい」が。最後は江頭が逆バンジーでくす玉を割るのだが、ズレてしまう。だが、足をしっかり伸ばしていたため、見事に身体が回転し、その足先が当たる奇跡。そこには「来年も、がっぺ笑える一年に」という文字。本当にふたりらしいステキなVTRだった。

そしてグランプリに輝いたのは、ノミネートされていた芸人ではなくMC横にいた有吉弘行。有吉本人も「俺?」と驚くが、2022年、全曜日のゴールデンプライムで帯で冠番組を持つ偉業を成し遂げたことを考えれば納得。上島竜兵の死後、「ダチョウ倶楽部を考えよう」という素晴らしい回を放送し、上島との長く深い関係がある『アメトーーク!』だからこそ、有吉をあえてこの番組で選ぶというのもグッとくる。

「今年ちょっとやっぱり、出川さんも、みなさんもアレなんですけど、なかなかツラいことが、ありましたんで……。ちょっとねぇ、あのー、なんか、なかなかちょっと引きずってて……。まぁちょっと、思うところいろいろあったんですけども……」と涙をこらえるような表情で受賞のコメントを寄せる有吉。「そういうなかなかツラい思いも吹っ切って、2023年も、皆さんの協力もいただきながら、がんばっていきたいと思います」という感動的なスピーチを「あのー、なにより……天国の、ジモンさんに感謝したいと思います」とボケて締める。出川「めちゃめちゃ生きてるわ!(笑)」。

番組を締め括るのは今回も出川。「竜さんの魂と芸風は引き継いで全員でがんばりたいと思っております」と語った上で「有吉、何ニヤニヤしてんだよ」とケンカからキスのくだりを振る出川。有吉も応じて顔を近づけるとすかさずアクリル板代わりの透明なCDケースを取り出しキスをする出川。有吉「これぞ、用意してたやつ!(笑)」。

『紅白歌合戦』

純烈×ダチョウ倶楽部のコラボに有吉弘行が参加し「白い雲のように」を歌う。これまでさんざん、森脇と比べ下手だとイジられていたが、有吉の優しく甘い歌声は絶品。歌い終わって「有吉さん、ステージからのペンライトが星のようにきれいでしたけれども、そちらからの景色いかがでしたでしょうか」と櫻井翔に聞かれると「上島も喜んでおります」と笑って「最高でした」とひと言。

歌う前、なぜ今回出ることになったのかを聞かれ、25年前には出られず「こんなチャンスを逃すわけにはいかない」と語っていた有吉だが、これは筆者の勝手な想像でしかないけれど、上島の件がなければきっと有吉が出ることはなかっただろう。上島のために、という深く強い想いを感じ、胸がいっぱいになった。

桑田佳祐 feat. 佐野元春, 世良公則, Char, 野口五郎の「時代遅れのRock’n’Roll Band」も素晴らしかったし、氷川きよしが休止前最後に歌ったのが「限界突破×サバイバー」というのもよかった。「白い雲のように」もそうだが、やはり「これしかない」という文脈を感じさせる選曲が胸に響く。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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