写真を撮ることにこだわりを持つアーティストやお笑い芸人による連載「QJWebカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
ある日の出会い
第33回。
休日のある日。
いつものように都内での散歩を楽しんでいたらふと公園の芝生が視界に入り、たまには寝っ転がってみるかと横になったときの一枚。少し凍てつく空っ風に不安を覚える季節になりながらもそのぶん、昼間の日差しの温かみを感じられるような陽気でした。
そんな呑気な時間を過ごしていたら止まった1匹。
スウェットを不自然に揺らす感覚が伝わったのと同時に鳴り響く羽音に冷や汗をかきました。
僕は前前前世、虫に喰われて生涯を終えたのではないかと思うほどの虫嫌い。とにかく蜂ではないことを祈りながら恐る恐るスウェットに目をやるとそれはトンボでした。まあトンボだとしても本来、発狂モノなのですが。
とっさに動いてバタバタとされてもパニックになるのでじっと身体を固めて見ていると、本能のままに時を過ごすトンボの姿にほんのり好意が芽生え、数分間だけトンボの今後を観察しました。
ただただじっと風に揺れている姿を見ていると少しずつ“自分たち”という意識が芽生え始め、初めて虫というジャンルから君という存在として認識しました。
そして止まっていたかのような、あっという間に流れたかのような時は過ぎ、トンボは自ら飛んで行きました。
空に浮かぶ赤色にほんのりと寂しさを感じたからか、身体の冷えを感じ僕も家路につきました。
君とはまた会いたい。
加賀翔(かが屋)、中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ(BiSH)、長野凌大(原因は自分にある。)、林田洋平(ザ・マミィ)、森田美勇人が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。
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