柔道金メダリスト松本薫の闘争本能を呼び覚ます岡田准一の格闘技術(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『明鏡止水~武のKAMIWAZA』

ケンドーコバヤシと「武術翻訳家」岡田准一による武術を紐解く番組。今回のテーマはいよいよ「柔術」。この番組でかつて岡田は一流のブラジリアン柔術家のマイキー・ムスメシを紹介しているように、自身も柔術を嗜み造詣が深い。「護身術として一番勧めるのはブラジリアン柔術」だと語る。この番組らしく、柔術の源流である「竹内(たけのうち)流」から嘉納治五郎による柔道に至る流れも紹介。大東流合気柔術の84歳になる師範・石橋義久による演舞もとても興味深い。

今回すごくよかったのは、柔道金メダリストの松本薫がいたことだろう。柔道のすごさは一般的にもすでに伝わっている。そのトップ選手が柔術の技術に接して驚いているから、そのすごさがわかりやすく伝わってくる。彼女の言葉一つひとつもわかりやすかった。たとえば、柔道の寝技の特徴を松本は「グリグリ」だと表現。「相手の急所を押さえてグリグリする」と。に対し、即座に「ゴッチ式っすか?」(岡田)、「ゴッチ式じゃないですか」(ケンコバ)とほぼ同時に反応するふたり。松本がゴッチが何かわからないというと「(プロレスの神様)カール・ゴッチですよ!」とふたりが声を合わせて言うのがおもしろかった。

大東流合気柔術が「掴まない」ことが真髄なのに対し、柔道はいかに「掴む」か。ということで松本と岡田が組み手争いを実践することに。するとすぐに「あ!動ける人だ!マジか!」と松本が声を上げ「強い!」と楽しそうに言いながら、明らかに闘争本能のスイッチが入っていくのがいい。鎖骨を極める組み手で完璧に掴むも、岡田に「踏み込みと同時に打撃のように」切りに行く“裏技”で切られると「強い!くそー!」と吠える松本。まだまだつづけたがっている松本の表情が印象的だった。

さらに日本におけるブラジリアン柔術の先駆的レジェンド・早川光由vs松本という夢の“対決”も。それらを完璧に解説する岡田の「武術翻訳家」っぷりが今回も見事だった。ケンコバ「岡田さん、(柔術)アカデミーちゃう!(笑)」。そして終始、「なぜ自分はここにいるのか?」といった感じでキョトンとした顔をしているトリンドル玲奈も最高だった。

『有吉ダマせたら10万円』

最後に行われた「この大喜利の回答 バカリズム・狩野英孝どっち?」がおもしろかった。狩野は常々、「狩野英孝が答えている」という色眼鏡がなければ自分の大喜利はおもしろいと主張している。無記名ならば、大喜利で屈指の実力を誇るバカリズムの答えと区別がつかないのではないかということだろう。バカリズム「有吉さん、これだけは当ててもらわないと、僕の名誉に関わってくる(笑)」。

事前に回答済みのふたりの答えから一方を有吉に見せ、それがどちらかを当てるというルール。「並べちゃうと絶対わかる」が、一方の答えだけで判断するのは難しそう(事実、特別に、とふたつ並べるとほぼ迷いなく回答していた)。

ここで光ったのは有吉の大喜利理論。「普通の答えをしないのがバカリズムだし、普通の答えを絞り出してくるのが英孝」「狩野さんにこんな高度なことはできない。大喜利ってパッと思いついたものはダメだって捨てていく作業。短時間のうちに自分の中でブラッシュアップしていく。狩野さんは1番に思いついたものを書く」「お題がけっこう単純だから崩し方がいっぱいあるわけじゃない(から難しい)」「(このお題は)まぐれ当たりがあるパターン」「バカリズムだったらもっと削ぎ落とす」などと理論的に回答を導き出していく。さすが、今はあまりイメージにないが『IPPONグランプリ』でも2度優勝している大喜利の猛者。優秀な大喜利の答えがいかなる思考で出てくるのかというヒントにもなっていて興味深かった。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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