オードリー若林が中田敦彦に明かした“自身の変化“とは?『あちこち』史上屈指の深い話(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『あちこちオードリー』

ゲストは中田敦彦。オードリーとしても芸歴は後輩でも“テレビの先輩”であり『笑っていいとも!』で共演し「関係が深い」間柄。近年の活動からか「どのくらいしゃべってくれるのか」と不安がってもいたが、蓋をあけると、番組史上屈指の深い話が連発した回だった。

中田は『しくじり先生』から生まれた「中田歴史塾」に勝負を賭けていたが、結果が伴わなかったことで「MCになる実力がない」と挫折したと明かし、YouTubeも「絶望の淵でギリだった」のだとぶっちゃける。「人の気持ちがわからない」から「愛されたい」のに、結果「最後ひとりでしゃべってる」のだと。「俺の話を聞いてくれ」という思いで「鳴りやまないんです、中田コールが」と。

そんな中田に若林は「『人の話を聞く』っていうのと『本を読む』というのは違いがある?」と聞くと「素晴らしい質問な気がする!」と前のめりになり、深い自己分析が止まらなくなっていく。そうした「人の話を聞くのがうまい」若林に「憧れる」という中田。

すると今度は若林が、中田に触発されたのか、あるいは中田へのお返しか、自らの考えをあけすけに語っていく。「自分のお笑いの教科書が強い人が芯を取る。現場に教科書を押しつける力だと思う。そういう人がその時代の天下を獲る。お笑いのルールを自分のルールにしちゃう人。それは(自分のように)共感力高過ぎるとできないなと思ってる。わかりたいと思っちゃう」と。「スゴいセリフですね」と驚嘆する中田に若林は自身を車にたとえてつづける。

過去を「なんでみんなと違う速度で、みんなよりこんな燃費悪いんだろうって自分のボンネット開けてずっと見てた。みんなと何が違うからこんなに学校についていけないんだろうとか」と振り返り、「どの部品が足りないかわかってきたくらいから、他人の車が気になってしょうがない。だから『あちこちオードリー』でボンネット開けまくってるの!」と核心を語る。自己分析と内省はすでに「完了した」のだと。

これは本当にスゴい話。おそらく若林は人一倍、自己分析と内省を繰り返すタイプ。そこから「他人への興味」に大きく「変化」したタイミングが、『あちこちオードリー』が始まった時期なのだろう。先日のラジオでも「佐久間さんは人間をよく見てる」と若林は評していたが、佐久間Pも以前「若林くんが他人に興味を持ち出した」からこの番組を始めたと語っていたとおり、若林の「変化」を敏感に感じ取った佐久間Pが、最も今の彼に合致した番組として『あちこちオードリー』を企画したということだろう。やっぱり作り手との幸福な出会いというのを改めて実感する。

さらに中田は「もし『M-1』の審査員のオファーがあったらやるか?」と若林に切り込む。すると若林は「春日に当て書きしかやったことない」と自らを評した上で、「言葉を選ぶんだけど」と前置きし、「単純におもしろい・おもしろくないじゃなくて、わからない漫才がいっぱいあるの。人間性を引っ張り出した漫才しかわからない」と語る。

設定やワードセンス、振りのうまさを評価して点数がつけられないから審査しようがないのだと。「逆に『PERFECT HUMAN』のほうがわかる。めっちゃ中田敦彦だから!」と笑う若林。そう思うと、オードリーの漫才同様、『あちこちオードリー』も「めっちゃオードリー」なニンが出た、つまりは人間性を引っ張り出したような番組だ。そんなことを感じた対話だった。

一方、審査員としては若林に自分よりできるのではと言われた春日は「オファー来たらもちろんやります」と断言。若林「来るわけねえだろ! 『M-1』なめんなよ!(笑)」。 「OKです」と収録が終わると「俺まだ帰りたくないです」と名残惜しそうにまだまだ話したがっていた中田。やっぱり彼をテレビで観たいし、本質的にはとても「テレビ的」なタレントなんだと改めて思った。


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  • 【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)

    毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。

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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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