オードリーにとって「タフ」な企画で心境に変化「本来こうなのかもな。大人の仕事って」「与える側になったってことだな」(てれびのスキマ)

てれびのスキマ

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『じゃないとオードリー』

オードリーが「企画主導ゴールデンMC男」から「オードリーじゃないと」と言われるような「その男ありきゴールデン男」を目指すための番組の第2弾。

クイック・ジャパン vol.099
2011年、オードリー特集が掲載された『クイック・ジャパン』

『日向坂で会いましょう』の収録前、『あちこちオードリー』の打ち合わせに訪れた佐久間Pは、突然「『じゃないとオードリー』!」とタイトルコール。「今から収録します」と。困惑するオードリーを尻目に、本番とそれ以外の時間とのオンオフの差が激しい彼らへ「オンオフを切り替えるのは本物のスターじゃない」と「オフゼロオードリー」なる企画を説明。この日のメイク・着替えから打ち合わせ、収録までずっと「オン」の状態でいろ、と。それを聞いて「ちょっとタフだな」と春日。若林も「『黄金伝説』じゃん!」とその前途を予想するオードリー。しかも『ひなあい』の収録は3本あり、約10時間の長丁場。若林「ということは今日俺たち5本撮りをやってるってこと?(笑)」。

この日の楽屋入りでも、ふたりは挨拶はおろか目も合わさなかった。だが、ふたりだけのときも「オン」でいなければならない。楽屋で春日が若林に「どう最近は?」などと話しかけると、モニタリングするサトミツは「楽屋で若林正恭が顔を上げている。これ奇跡ですね。そして春日から若林くんに話しかける。ここも奇跡でございます。もう2奇跡」と解説。メイク中や打ち合わせ中もボケまくり「『DAISUKI!』の松本明子」「アヴリル・ラヴィーンの本番前か!」「『フレンドパーク』のリーダーじゃないほう」などといった名フレーズを連発。

本番のスタジオ入りしたあとも「オン」を維持し、スタッフや日向坂のメンバーに話しかけると、すぐに違和感を抱く日向坂の面々。「おもしろい番組撮りまーす!」と若林が宣言し本番がスタートすると、タイトルコールを噛む若林。いかにムリしているかがわかる。「ちょっとキツい仕事です」(若林)、「収録中ボーっとしちゃったなあ」(春日)と収録の合間に感想を述べているときに、自然と春日の肩に手を添え寄り添う若林という構図がめちゃくちゃよかった。春日「本当に明るい人たちはノーギャラでこれやってるんでしょ?」。

しかし、話しかけられて戸惑いつつも心底うれしそうな表情をする日向坂と接し、オードリーのふたりの表情も少しずつ変わっていくのがわかる。「本来こうなのかもな。大人の仕事って」と若林が言えば、春日「そうか。与える側になったってことだな、春日は。与えられる側から」。

これは、まさにその立場が大きく変わっていっている「今」のオードリーにとってめちゃくちゃ大切な企画になりそう。今だからこそ、今じゃないといけない番組。後編の予告でそれを確信させてくれた。

『アンタウォッチマン!』

「1991年の野沢直子」を特集。デビュー当時は事務所から「すぐにテレビタレントとしてやってくれ。ネタとか従来のことはやるな」と言われ売り出された野沢は、3カ月後にはさんまのバーターでテレビ東京の『お昼だドン!』に出演。芸歴1年でレギュラー3本、芸歴3年でいいともレギュラーと下積みなしでブレイク。「芸能界っていうか人生チョロいんだなって」と野沢。

彼女を多く起用したテリー伊藤も「小屋の匂いがない」と評し、事務所の戦略が当たっていたことを窺わせる。たけしからとんねるずへの流れ同様、山田邦子から野沢直子という流れがあったとテリー。88年には『夢で逢えたら』が始まる。常に上の世代を相手に活躍してきた野沢は、同世代に囲まれた現場に最初は「部活」のように楽しんでいたそう。

だが、ほかのメンバーとの実力差に初めての挫折を感じたという。アドリブになるとスゴくて敵わないと。「ほかの5人全員がおもしろくて自分だけそうでもない。みんなの足を引っ張りたくない、と毎回思ってた」と回想する。これは同番組で以前、清水ミチコが感じていたと話したのとほぼ同じ。それだけダウンタウンとウッチャンナンチャンはすごかったのだと思うし、清水は野沢、野沢は清水を自分より上だと感じていたというところに、芸人の繊細さ、自己評価の難しさを感じる。

91年、番組を降板。すぐに売れたゆえ、自分には引き出しがない、どこかで修行したいと考え「そうだ、こういうとき、ドラマだとみんなニューヨークに行くからニューヨークに行っておけ、と思ってヒコーキに乗った」と「事務所には1年で帰ります」とウソをついて渡米。

テレビの作り手側が書いた本などを読むと、野沢直子こそこの番組の中心と考えていたようなので、もしそれが本人に伝わっていてそのまま日本で活動していたらどうなっていたんだろうと運命のあやを感じずにはいられない。けれど、結果として渡辺直美らの海外進出の道を切り拓いていったのだから、それもまたスゴい。いずれにしても稀有な存在だと改めて思った。


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1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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