『キングオブコント2022』決勝ネタと審査員コメント振り返り。松本「恐ろしい時代になってきた」(てれびのスキマ)

キングオブコント

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。


『キングオブコント2022』

『お笑いの日』の10月8日19時から放送された『キングオブコント2022』決勝戦。梅田サイファーによるオープニング曲、ナレーションがキングオブコメディ今野というのがまずテンションが上がる。

クロコップ キングオブコント
クロコップ(左・荒木好之、右・しょうた)

トップバッターはクロコップ。「クロコップから始まる『キングオブコント2022』、たまらんと思います」という荒木の言葉どおり素晴らしいスタートだった。「あっち向いてホイ」とカードゲームを組み合わせた対決をひたすらやる最高のバカコントで飯塚「立派なショー」山内「世界で通用するような」松本「ムダがほぼなかった」と全員が90点以上を出す高得点。

ネルソンズ キングオブコント
ネルソンズ(左・和田まんじゅう、中央・青山フォール勝ち、右・岸健之助)

つづくネルソンズは山内が96点を出しクロコップを上回る。「3人の役割がしっかりしてたし、いないお客さんの使い方もよかった」と。飯塚は「よくある設定の中で新しい展開が散りばめられてたのがすごかった」と評価。ここで「俺、言うぞーって人?」と浜田が審査コメントに「挙手制」を導入するボケ。

かが屋(左・加賀翔、右・賀屋壮也)

かが屋は前年王者・空気階段につづきSMコント。小峠が「扉の使い方が気になったけど見事。扉に入る数がちょうどよかった」と評すも、得点は思ったほど伸びず。松本は「最後の詰めですよね。もっと責めてくれって俺もMなんで思ってしまう」とさすがのコメント。「大反省会」では自分もMだという加賀が、賀屋の言葉責めを「あんなもんでは興奮しない」と言っていたのも含めておもしろかった。

いぬ キングオブコント
いぬ(左・有馬徹、右・太田隆司)

いぬは、松本が「僕は好きだったんですけどね。この世界観。フランス大会だったら優勝」と95点をつける一方で飯塚が89点と最低点をつけ脱落。「一番笑ったと思うんですけど、やっぱキスは禁じ手だと思うんですよねえ」と飯塚。山内「起承転結を意識して見るんですけど、起キスキスキスだったんですよ(笑)」。

ロングコートダディ(左・堂前透、右・兎)/『キングオブコント2022』優勝予想アンケート 第4位(QJWeb調べ)
ロングコートダディ(左・堂前透、右・兎)

「兎くんのヤバさがずっと出てた」(秋山)というロングコートダディはクロコップをわずか1点上回りこの時点で3位に。飯塚が「バカなのにかわいくないというキャラクターはなかなかいない」と兎のキャラを評す。松本は「90点が厳し目と思われるくらいレベルが高い」と称えつつ「僕の中では一番低い点数ですね」と笑わせると兎「金髪だから印象に残るんですよ!(笑)」。

や団 キングオブコント
や団(左・ロングサイズ伊藤、中央・本間キッド、右・中嶋享)

や団は、これまでひとつのボケを(さまざまな角度から)繰り返すバカコントが多い今大会の中で、毛色の違う暴力性漂う狂気のストーリー性の高いコント。松本「狂気と笑いのバランスが絶妙。ぎりぎりのラインを攻めてくるよくできたネタ。素晴らしい」飯塚「めちゃくちゃいいネタでした。死体処理のリアリティが半端なくてこれで笑わすのがすごい」秋山「とにかくヤバい劇団をずっと見ているよう」と高評価連発で470点を獲得しトップに躍り出る。

コットン キングオブコント
コットン(左・西村真二、右・きょん)

つづくコットンもや団と並ぶ470点でトップに。や団がまんべんなく高得点だったのに対し、コットンは山内、秋山、松本が96点。松本は「心技体がバッチリでしたね」「言葉でも動きでも笑かせてストーリーもおもしろい」と絶賛。

ビスケットブラザーズ キングオブコント
ビスケットブラザーズ(左・きん、右・原田泰雅)

煽りVTRで「笑うことを諦めるな」と語ったビスケットブラザーズは前年王者・空気階段同様、ブリーフコントに。松本が「100点つけてもよかったぐらい」と歴代最高得点の98点をつけたほか、全員が95点以上の481点で頭ひとつ抜け、決勝進出を決める。小峠「全ボケおもしろかった。凄まじかった」「展開もあっておもしろかった」飯塚「全ハマリでしたもんね」と文句なしの内容。

この時点で1位ビスブラ、2位にや団、コットンが並ぶ。だが、準決勝でとりわけ評判がよく本命視されていたニッポンの社長と最高の人間がまだ残っているため、ラスト3組がファイナル進出となってもおかしくない展開に。

ニッポンの社長 キングオブコント
ニッポンの社長(左・辻、右・ケツ)

しかし、ニッポンの社長は最下位に沈んでしまう。ここで焦点となったのは「暗転」を多用したこと。「暗転をたくさん使うコントはなかなか難しい。次はどう来るのかをこっちは先回りして考える。それを超えてなかった」と松本。「そうじゃないぞー、俺はそうは思わないぞーって人?」と浜田が挙手制を再び発動させると「はい」と手を挙げたのはまさかのニッ社・辻。「暗転を使うよさもあると思うんです」と反論。素晴らしい切り返しだった。

実際、山内の「暗転を挟むのでショートコントっぽくなるんで、そのショートコントっぽさを活かして最後なんかつながってたりとかそういう方向で行ったらもっとウケやすいのかなって。単発で行くのならもっと爆発的にウケてかき回してほしかった」というコメントどおり、暗転そのものよりもその使い方が肝なのだと思う。

最高の人間 キングオブコント
最高の人間(左・吉住、右・岡野陽一)

ラストは、初のユニットでの決勝進出を果たした最高の人間。「コントで結んだ悪魔の契約」というキャッチフレーズが決まっている。こちらは暗転をうまく使ったように見えたが「見たことない展開、それが猟奇的なほうに行くっていうのはすごくおもしろかったけど、最後、暗転の連続でバーッと行ききれなかったのかなって」と小峠が評すように得点は伸びず6位に。

「『暗転が……』って言われたとき、ヤベェって思いました」と笑う吉住。飯塚は「ふたりにしか出せない独特な世界はすごくよかったけど、ホントに岡野の緊張感が伝わってきちゃった」と直の先輩ならではの評。

ファイナルは松本がや団に「2本目ってちょっと落ちるコンビが多いんですけど、遜色なかった」と評したが、彼らだけでなく全組が1本目を上回る得点を取る稀有な回に。コットンもこれで優勝すればとても美しい内容のネタ。そのあとの『情報7daysニュースキャスター』で、三谷幸喜がもともとコットンが大好きできょんの演技に注目していたと語っていたとおり、抜群の演技力が光った。

が、やはりビスブラが1本目、2本目も最高点で完全優勝。「大阪にはまだまだおもしろい芸人がたくさんいるんですけど、えらい差ついてしまったなって」と原田がボケるなか、きんの「じゅうぶん楽しい人生なのに、もっと楽しくなっちゃう」というひと言が印象的だった。

個人的には1本目はクロコップ、や団、最高の人間が、2本目はコットンが好きだったが、結果についてはまったく文句なし。松本が総括で去年につづきこのハイレベルな状況を「恐ろしい時代になってきた」というように、本当に全組全コントおもしろく、すごい完成度の大会だった。


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てれびのスキマ

1978年生まれ。ライター。テレビっ子。著書に『タモリ学』(イースト・プレス)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)、『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(文藝春秋)など。

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