ゆりやんレトリィバァ「登った先で跳躍する人」|正田真弘写真室「笑いの山脈」第26回

文・撮影=正田真弘 編集=竹村真奈村上由恵


カメラの前に立ちはだかり、ネタの瞬間ものすごい存在感でエネルギーを放出するお笑い芸人。その姿はまるで気高い山のようだ。敬愛するお笑い芸人の持ちネタをワンシチュエーションで撮り下ろす、フォトグラファー正田真弘による連載「笑いの山脈」。本業はポカリスエット、カロリーメイト、どん兵衛、Netflixなど見たことある広告をいっぱい撮っている人。


ゆりやんレトリィバァ「登った先で跳躍する人」

圧倒的な受賞歴。
2017年に『NHK上方漫才コンテスト』につづき、『女芸人No.1決定戦 THE W』でも優勝。
2021年には『R-1グランプリ』優勝。
挑みつづけて、結果を出しつづける。
芸人としての強さやタフな精神を少しでも感じて写し取りたい。そう思いながら撮影準備を進めていた。

ロケ場所は『サザエさん』(フジテレビ)とは真逆の雰囲気の一軒家。
2階のキッチンで照明のセッティングが終わり、1階に降りると同時にゆりやんさんが現場に到着。
センスあふれるファッションは、これから「カツオ」となって登場するとは想像できない愛らしさだった。

準備が整いカメラ前に現れてからは「カツオ」モノマネで現場を沸かしつづける。
そして、撮影の合間でさえもずっとずっと「カツオ」のままだ。

撮影後、私服に着替えたゆりやんさんを玄関で見送る。
帰り際の最後のひと言までも「カツオ」のまま。みんなの笑いと共に扉が閉まった。
ゆりやんレトリィバァという芸人としてのタフネスさを深く感じる瞬間でもあった。

話は変わるが、ニューヨークのAperture Foundationが主催するPhotoBook of the Year Awardのコンペに写真集『笑いの山脈』(欧文タイトル:The Signature Acts of Modern Comedians in Japan)をエントリーした。結果発表までのドキドキ感がまた楽しい。

2005年に撮影現場で僕がニューヨークに引っ越して間もないことを知った、衣装スタイリストから「Welcome to jungle」と声をかけられたことがある。
当初は深く理解できなかったが、海外で活動し生き抜くことの大変さ、壁の高さは凄まじく、今でも痛切に染みる言葉だ。

2019年、アメリカの人気番組『アメリカズ・ゴット・タレント』でパフォーマンスを披露し注目を集めたゆりやんレトリィバァ。
コメディアンとして日本を飛び出しそのジャングルを駆け抜けて、あっさりと壁を越えていくかもしれない。
挑みつづけている人の“輝き”は自然と写真に写る、改めてそう思った。


ゆりやんレトリィバァ
1990年11月1日生まれ。奈良県出身。吉本興業所属。大阪NSCを首席で卒業し、デビュー直後から数々のメディアに出演。2019年にアメリカの公開オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』(NBCネットワーク)に出場。2017年『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ)、2021年『R-1グランプリ』(フジテレビ)2冠を達成。11月20日より芸能生活10周年を記念してツアー『0120-ゆりん-ゆりん』を開催予定。

ゆりやんレトリィバァ日本ツアー『0120-ゆりん-ゆりん』
11月20日(日)大阪・なんばグランド花月
12月2日(金)奈良・大淀町文化会館・あらかしホール
12月3日(土)奈良・大淀町文化会館・あらかしホール
12月9日(金)福岡・よしもと福岡 大和証券/CONNECT劇場
12月11日(日)宮城・電力ホール
12月16日(金)東京・よみうりホール

正田正広写真集『笑いの山脈』
正田真広写真集『笑いの山脈』

萩本欽一から空気階段まで、お笑い芸人55組が登場。
“芸”を真っ向から撮影した、“お笑いポートレイト集”『笑いの山脈』が誕生!
お笑い芸人たちの一発ギャグ、鉄板ネタ、代表コント、その最高のパフォーマンスを4×5の大判フィルムに焼きつけ、写真で切り取るからこそ迫力と活気に満ちあふれているお笑い芸人たちの“芸”を、金箔の見返し、180度開く手製本など豪華な造本に閉じ込めました。


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正田真弘

(しょうだ・まさひろ)1977年生まれ。東京造形大学卒業後、石田東氏のアシスタントを経て渡米。2008年、『IPA(International Photography Award)』のセルフポートレイト部門で金賞受賞。翌年帰国して以降は、グラフィック広告、テレビコマーシャル、雑誌連載等、幅広いジャン..

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