<18歳成人>奥森皐月、高校3年の当事者が考える「私はもう一人前の“おとな”か?」

2022.8.26

18歳成人で「変わったこと」「変わらないこと」

喫茶店での奥森皐月
純喫茶が大好きな奥森皐月

このような具体的な危険は、新成人やこれから成人する人たちにあまり伝わっていないと思う。ネット上の呼びかけサイトでは注意喚起がされているものの、それを若い世代に届けるのは非常に困難だ。

世にいうZ世代は、取り入れられる情報にとにかくムラがある。自分の好きなコンテンツにだけ触れて、興味のない情報は無視したり遮断したりすることがいくらでもできるからだ。プラスに捉えれば、それぞれが狭く深く探求することができるのだが、そのぶん入ってこない情報もある。

10代向けにTikTokで発信したとしても、1秒も経たずスクロールされてしまっては届かない。若い世代に情報を伝達することの難しさを痛感した。

ほかにも成人年齢引き下げによって、国家資格が18歳から取得できるようになったり、裁判員に選ばれるようになったり、事件を犯して起訴された場合に実名報道されるようになった。ちなみに婚姻年齢は女性が引き上げになり男女共に18歳になった。引き下げの話の中に引き上げが出てきて混乱する。

それに加え、タバコ・お酒・ギャンブルは今までどおり20歳からのままだ。変わらないことと変わることが細か過ぎて「成人」自体がなんなのかがさっぱりわからなくなってきた。

極めつきは成人式問題だ。成人式という場に行くことでようやく成人したことを実感する人もいると噂で聞いた。私はまだ行っていないのでわからない。この成人式だが、現時点で18歳で成人式をする自治体はほとんどないらしい。今年度に関しては、18〜20歳が同時に成人したため同時に実施できないという理由もあるだろう。

ただその前に、多くの18歳にとって、成人式の時期は受験真っ只中である。そのため、成人式は今までどおり20歳のタイミングで行うというケースが大半を占めているそうだ。こうなってくるといよいよ成人の実感が湧かない。今後の世代は振袖も着ることなく、お酒を飲むこともなく、ただ静かに成人するようだ。

せめて「成人しました」のタスキくらいもらうことができれば堂々とかけて街を練り歩くというのに。いま私は完全に成人を持て余している。困ったものだ。

全国民共通の話題としての「選挙」

唯一、最近で18歳になったことを実感した出来事は先日の参議院議員選挙だ。選挙権を得てから初めての選挙で、ようやく社会に認められる年齢になれたと思えた。これまで幾度となくTBSラジオ『マイナビラフターナイト』の投票をしてきた。投票に対する意識は高いつもりである。もちろん投票に行けばいいだけではないので、公示されてから少しずつ情報を集めた。

私はSNSの中でツイッターが一番好きだ。ツイッターに住んでいるとまでは言わないが、職場くらい長い時間をツイッターで過ごしている。選挙前の時期はフォローをしている一部の人が、選挙にまつわる記事をリツイートしたりそれに言及したりしていて、SNSのありがたみを再確認した。自分で調べるのには限界があったが、わかりやすくまとめられたサイトなどをツイッターから見つけられた。

ほかにもツイッター内の「スペース」という、音声をリアルタイムで公開して会話ができるツールで選挙にまつわる話をしているコミュニティを聞いてみたのもおもしろかった。もちろん、「誰が発言しているか」は重要だろう。ただ私が聞いたのは選挙に関心がない人にわかりやすく説明したり質問に答えるという内容で、まんべんなく情報を話していたので参考になった。
ツイッター上の情報をすべて鵜呑みにすることはそれこそ危険だが、ひとつの側面として人の意見や情報を見るという点では大変役に立つ。また、フォローしているお笑いの人であれ、音楽の人であれ、業種や普段の活動とはまったく別に全国民共通の話題として選挙があるのだということがよくわかった。

実感も変化もない「18歳成人」

今までは選挙権がないため見落としていたことなのかもしれないが、ニュースや新聞以外にも選挙にまつわる話は転がっている。“興味さえ”あればいかようにも若者は情報を得られる。この出発点に多くの人が立てればと思う。ここでもまた関心を持たせることや情報を伝達することの難しさを思い知らされてしまった。もしかしたら今のさまざまな問題に共通する課題なのかもしれない。

「18歳成人」という一見すると大きな変化。しかし当事者になってみると影響は案外なかった。実感する機会がないし、変化もあまりない。ふとしたときに「そうか、私はもう成人なのか」と思うくらいだ。やはり成人式を迎えるまでは自覚が芽生えないかもしれない。ようやく大人になれるとワクワクしていたのは束の間。早く大人になりたい、その気持ちをもう少し抱えたまま生活する。いつの日かこのモラトリアムを振り返って笑う、余裕のある大人になりたいものだ。

連載「奥森皐月は傍若無人」は、毎月1回の更新予定です。

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