笑い飯「体を熱くするもの」|正田真弘写真室「笑いの山脈」第23回

文・撮影=正田真弘 編集=竹村真奈村上由恵


カメラの前に立ちはだかり、ネタの瞬間ものすごい存在感でエネルギーを放出するお笑い芸人。その姿はまるで気高い山のようだ。敬愛するお笑い芸人の持ちネタをワンシチュエーションで撮り下ろす、フォトグラファー正田真弘による連載「笑いの山脈」。本業はポカリスエット、カロリーメイト、どん兵衛、Netflixなど見たことある広告をいっぱい撮っている人。

笑い飯「体を熱くするもの」

撮影場所は博物館。

閉館後にセッティングを開始し、まもなく笑い飯のふたりが現場に入ってくる予定だ。

アングルもライティングも準備万端だが落ち着かない。

僕の中で思い入れのあるネタを撮る。楽しみより緊張のほうが大いに上回っていた。

遡ること2004年、カメラマン石田東氏のアシタントを卒業した僕は渡米資金を貯めるため、家賃節約と思い4畳半の部屋を借りた。

家財道具を整理してベッドとパソコンとラジカセのみという、明日にでも出発できそうなほどの簡素な暮らし。部屋でDVDを観るのが唯一の楽しみだったそんななか、体が熱くなるような作品に出くわした。

何気なくレンタルした『Mー1グランプリ2003』(ABCテレビ・テレビ朝日)での笑い飯の漫才ネタ『奈良県立歴史民俗博物館』。その衝撃はすごかった。

ボケの応酬に笑い転げ、巻き戻しては再生を繰り返し、その後は何度もレンタルした。

パワフルな漫才で、笑いがもたらす活力が渡米準備の支えにもなっていた。

そして、笑い飯がカメラの前に立つ。

「ええ土ー!を撮らせてください」

実際、僕がどう言って伝えたかは覚えていない。

口が必要以上にパクパクと動いていた感覚だけは鮮明に覚えている。

撮影協力:大阪歴史博物館

帰りの新幹線で友人に勧められていた週刊誌での連載記事「笑い神 Mー1、その純情と狂気」を読んだ。第1回は笑い飯をメインに克明な描写が2000年代初頭を思い起こさせ、また体が熱くなるのを感じた。

笑いに情熱を捧げ、ブレずに生き抜くその姿。

長い年月が経っても笑い飯から受ける刺激は大きく、特別な存在だ。

そして、この連載「笑いの山脈」が写真集となって7月4日に発売になります。

8年間撮り貯めた芸人総勢55組のポートレイト、見応えたっぷりの一冊になっていますので、この「ええ土ー!」を大きな写真でぜひ見てください!


萩本欽一から空気階段まで、お笑い芸人55組が登場する初の“お笑いポートレイト集”『笑いの山脈』は、2022年7月4日から一般発売。正田真弘WEBサイトでは、2022年6月27日から先行発売。

笑い飯
西田幸治(1974年5月28日生まれ、奈良県出身)と哲夫(1974年12月25日生まれ、奈良県出身)によるコンビ。吉本興業所属。2000年結成。9年連続『M-1グランプリ』決勝に進出し、2010年に優勝。2022年6月29日に、DVD『笑い飯の漫才天国~結成20+1周年記念ツアー』発売。

【関連】笑い飯のふたりが目指すのは「中御所」。『座王』チャンピオン西田は「もうだいぶしんどい」

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