三四郎・相田周二の中にあるのは「旧・小宮」。アップデートされている僕を見てほしい【魅惑の相方 vol.4 ANSWER】

文・編集=佐々木 笑 撮影=TOWA


お笑いコンビに、相方の魅力を語ってもらう連載「魅惑の相方」。 

先手の相田は、中学校からの同級生である小宮の人間性や魅力を吐露した。長く一緒にいるからこそわかることがあるのだろう。

しかし、相田の中にある小宮の像は、果たして真実なのだろうか?
小宮に答え合わせをしていくと、ふしぶしで違いが見受けられた。

どんなことも、理由を聞いた先には「おもしろい」がある。生粋のお笑い芸人・小宮は、常に「おもしろい」に捉われているようだ。


“愛嬌”というより“信念”があるだけ

──この連載で6人取材してきた中で、相田さんから小宮さんの魅力を聞き出すのが一番難しかったです。なかなか言いたがらず、開発さんの話ばっかりしていました。

小宮 開発くんは、僕のほうが仲いいけどね(笑)。

──では、相田さんから聞いたお話の答え合わせを。小宮さんの一番の魅力は“愛嬌”とおっしゃっていました。小宮さんは“生意気キャラ”で世に出ましたが、これはもともと愛嬌がなければ成立しないですよね。

小宮 あぁ~、確かにそうですね。世間に認知されていってからは「愛嬌あるね」って言われることもあります。「大御所の人にグッといってください。小宮さんは愛嬌あるんで大丈夫ですよ」とか……怖いっちゃ怖いけどね(笑)。

──自分ではどう思いますか?

小宮 自覚はまったくないですよ。愛嬌があるから先輩に噛みつこうとか、許されるだろうとかはないです。愛嬌っていうより、ただ単に信念があるっていうか。バラエティでも、僕が噛みついたらおもしろくなるかもしれないと思うからだし、芸人さんもおもしろいことを求めてるから、結果大丈夫だろうって思います。怒られたらすぐに謝るから、それは愛嬌なのかもしれないけど、それも信念で先輩に対して申し訳ないって思うわけで。

──もともと、戦略として「生意気キャラでいこう」と考えていたわけではなく?

小宮 生意気キャラっていうか、“後輩が先輩に物申す”っていうのはおもしろいから、おもしろいの先にそれがあったのかもしれないです。「生意気キャラでいこう」って思ったら逆に大変だと思う。それをまとってたらもっと過激なことしてるだろうし、そこのバランスじゃないかな? 「バランスがいい」って、ルシファー吉岡さんとかまわりの芸人にもよく言われます。「怒られないギリギリのラインをいける」とか「この口調・語尾だったらいい」とか。あと、いたずらしてるとき本当に楽しんでるから、その愛嬌はあるのかも。

──相田さんも、しゃべり方に愛嬌があるとおっしゃっていました。でも、ゆえにナメめられることもあると。

小宮 あぁ、確かにめちゃくちゃナメられる(笑)。でも、偉そうにするよりナメられたほうがラクですよ、芸人だから。プライベートで道ゆく人にナメられたりするのは嫌だけど、それの対処法も見出したりしてます。

──どんな対処を?

小宮 ヤンキーが仲間とちょけて、番組みたいにイジってやりたいスタンスで来たときは「おぉ~! ありがとうございます!! ファンですか? 握手しますか!?」って感じでこっちからいくと、圧倒されて引いていきます。あと、そんなわけないけど「今、定点カメラでロケ撮影中なんで、ひと言いってみましょう!」って言うと、「え……テレビ?」って消えていく。

──すごい。本当にプライベートでそんなことされているんですか?

小宮 やるやる。それくらいやらないとダメなんです。それが一番いい、おもしろいし。

──ほかの芸人さんよりも対処力が長けている気がします。

小宮 ナメられがちですからね(笑)。

──相田さんも、愛嬌ありますよね?

小宮 笑ったりするところとか? 同じ文言でも相田のほうが強く聞こえちゃうことがあるんだけど、そのあと笑ってるからなんとかなることはあるかもしれない。けど、相田は先輩に噛みつくとかは向かないかもしれないなぁ。

三四郎小宮
小宮浩信(こみや・ひろのぶ)。38歳。変な人に絡まれるのは主に歌舞伎町

出川・狩野とは別の括り。「マセキ三兄弟」であるためのスタンス

──小宮さんは、出川(哲朗)さん・狩野(英孝)さんイズムを継承していると相田さんからお聞きしました。最初、その3人は同じ括りなのかと違和感があったんですが、相田さんの“不器用な3人”という表現でしっくりきたんです。

小宮 いやぁ~、自分では思わないです。不器用は不器用ですけど、狩野さんって、歌ったりギターが弾けたり器用なんですよね。だから狩野さんも“出川イズム”とは思ってないだろうし、だからこそいいと言われるんです。モグライダーのともしげはそろそろマセキ四兄弟目じゃないか?って言われてるんですけど、「じゃあ一緒にがんばりますか」ってスタンスなんだよな……。でも、そうじゃないぞと。あの枠に“入りたくないけど入っちゃう”っていうのがいい。「お前らとは一緒じゃねーよ!」って言ってないと、一緒になれない。本心を言うと、おこがましいと思いますよ。

育ちのよさは共通するのかもしれないな。意外とみんなおぼっちゃまなんですよ。出川さんは海苔屋の御曹司だし、狩野さんは実家が神社だし。僕も実家が不動産で土地を持ってるんで、そこが似てるのかも。不器用っていうよりポンコツ。まわりがやってくれちゃってたから、ちょっと世間を知らない部分もあって。

三四郎小宮
小宮の実家が大富豪で「総資産10億円」というどえらい記事が出たことは有名だ

──そういう共通点があるんですね。3人共「一生懸命だけど出来なかったときに笑いが起きる」とも。

小宮 細分化すると、ちょっとずつ違うんです。そこが違うからまたいいんだろうとも思います。そういう人らが同じ事務所っていうのが奇跡とは言われますけどね。

──マセキ三兄弟のお話が来たとき、どう思いましたか?

小宮 それこそおこがましいし、やだなぁこの括り……と。「そんなに奇跡起こるか? 無理だよ」って怖さがありました。

──出川さん、狩野さんとは少し違うとのことでしたが、ほかにイズムを受け継いでいる方っていらっしゃるんですか?

小宮 あぁ~、どうだろう……。ずっと好きで観てたのは、ダウンタウンさん、板尾創路さんとかかな? 飲んだりして思ったのは千鳥の大悟さん。大悟さんは学校で番長みたいな感じだけど、僕は真逆。なのに、なんか話が合ったんです。最初は「会話でミスしたらどうしよう」ってちょっと怖かったんですけど、本心でしゃべっても、会話の2択が間違えないなって思って。僕の考えてることは間違いじゃなかったんだって思いました。

収録で「あのときの相田、ちょっとよくなかったな……」って僕が思ったことがあって、それを大悟さんに言ったら、大悟さんも気づいてて共感してくれて。イジメられっ子だと繊細っていうのはわかるんだけど、番長なのに繊細な部分を持っているんですよね。

──そういう深い部分で繋がっていたんですね。

小宮 そうそう、心の細かい部分、感情の機微とか。


相田とは性格が真逆

──小宮さんの“未来のポジション”についてお話しした際、相田さんからアンガールズの田中(卓志)さんのお名前が上がりました。

小宮 田中さんではない。あの人はすごいですから。あと、ビジュアルがかなりおもしろいから全然違いますよ。意識してる部分もあるかもしれないけど……。

──相田さんは、マルチプレイヤーな部分や、裏でしっかり考えていらっしゃるところが似ていると。

小宮 どうなのかな……。僕は苦手なことも多いですし、マルチプレイヤーではないです。ひとりロケが苦手なんですよ。

──相田さんは、小宮さんのロケにかなり魅力を感じていましたよ。

小宮 それはコンビでのロケじゃない? 初めましてのスタッフさんの中でひとりでおもしろいことを言うって、かなり難しいんですよね。昔、人見知りが出て難しかった思い出がフラッシュバックするのかわからないんですけど。

──相田さんは「小宮にヤバい人が寄ってくる」と。

小宮 でも、相田が話してた獅子舞話も、自分からおじさんに「観に行きますか?」って行ってるから、寄ってきたわけじゃないんですよ(笑)。開発くんとかも自ら絡みに行ってるし、奇跡的に集まってくるとかではなくて、僕がそういう人のことを好きだからってだけなんです。

──獅子舞、自発的にだったんですね。

小宮 そうそう。相田とは性格が真逆なんですよね。学生時代も帰り道「時間あるから寄り道して帰ろうよ」とか僕が言っても「なんで? 遠いのに」って。相田は同じ道をずっと行く。

──相田さんが小宮さんといると楽しいと思う理由は、そこなのかもしれないですね。

小宮 自ら手振っちゃったりしますからね。電車内のヤンキーのは違うよ?(笑)。でも、ロケでもおもしろそうなおばちゃんとかには自ら声かけますから。普通そうな人でも、ちょっと噛んだりしたら「あら? 今噛みましたよね?」って細かいところに食いつくから、だんだんあっちの本性が出てくることもあります。

三四郎小宮
ロケ中、食いつき過ぎて怒られることも多々あるという

──今のお話を聞いていると、ロケが苦手だとは思えないです。

小宮 ひとりはちょっとねぇ……。スタジオ仕事が一番楽しいです。

──スタジオでは、どのポジションが一番得意ですか?

小宮 何をするかわかってるひな壇がいいかな。だから『アメトーーク!』ですよね。でも、一番蛍原(徹)さん寄りの“責任を感じなきゃいけない位置”はちょっと嫌だな。責任がないところ……2番目くらいの立ち位置がちょうどいい(笑)。プレゼンしなきゃいけないのも嫌だし、自由にできるとこがいいです。

──自由であり、なおかつ事前に知っておける番組。

小宮 何をやるかわからない『ロンドンハーツ』はソワソワしちゃって、けっこう大変で……ストレスもあるわけですよ。

──『アメトーーク!』の蛍原さんの隣の位置はいかがですか?

小宮 あそこもあそこで楽しいです。責任があるわけじゃないから。

──小宮さんは、責任があるほうがお好きなのかと思っていました。

小宮 責任があるポジションは相田がやったほうがいい。言うならば、僕は作り上げるよりも壊すほうが向いてると思います。だから、今の僕は田中さんのポジションだとけっこう大変だと思います。

スタッフと飲みに行かない理由は「敵対視しているから」


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佐々木 笑

(ささき・えみ)1996年生まれ。宝島社ムック局編集部のち、フリーランスの編集者・ライター。笑と書いてエミ読みます。本名通りお笑い大好き人間に育ちました。『フワちゃん完全攻略本』『#麒麟川島のタグ大喜利』『KOUGU維新 公式本で、イザ参ラン!』(すべて宝島社)など。アイコンは川島さんに描いていただ..

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