「今のテレビを壊せるのはかねちーしかいない」ぺこぱ、EXITの刺激的なエンタメ論(てれびのスキマ)

2022.5.21
『クイック・ジャパン』vol.150 表紙

テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。

『あちこちオードリー』

ゲストはぺこぱとEXIT。松陰寺が「視野がお笑いからエンタメに変わりました」「お笑いをやっている人たちがお笑いの敷居を高くしちゃってる」などと語ると、りんたろー。が「兼近が言っていることの丸パクリ」と笑って指摘。『突破ファイル』のロケバスで、松陰寺と兼近がずっとテレビの今後についての話をしているという。兼近は「テレビで自分では言えないことを松陰寺が言ってくれるからうれしい」と笑う。

その兼近を「圧倒的にスター性がある」から「今のテレビを壊せるのはかねちーしかいない」と評する松陰寺。若さと歩んできた道のりで「物語がある」と。「僕らは先輩方が作ってきたお笑いの常識に迎合することでしか存在できない。そこを壊せるのも兼近なんじゃないか」と松陰寺がつづけると、「迎合してないもんね」と若林も同意する。

だが、兼近の自己評価は厳しく冷静で「迎合してないように見せつつやってる。テレビで活躍する人ってそういう人しかいない」と語る。『7.2 新しい別の窓』でも佐久間(宣行)らテレビマンと討論し、「テレビに出てる若者は大人に忖度できる若者だけ」「若者のフリしてるけど、若者のことわかってない。上をうまく転がせるヤツしかテレビに出られない」と語ったという兼近は、「場所場所でのルールがある中で、テレビを壊すことってテレビのファンからすると『おもんないヤツが出てきたな』にしかならない」と分析し「それぞれでできあがったものを壊すことは、果たして正解かなって最近考え始めた」と考え方が変わってきたことを明かす。その上で「おもんないじゃなくて我々がわかんないだけ。そこの配慮をしていかないからより分断が生まれてる」と語る。彼らが語るテレビ・エンタメ論や世代論はとても刺激的だった。

そんな中で「会うたびに若くなっていっている」と若林に言われ「きれいだと褒めてくれるのは若林さんだけ」と心底嬉しそうにするりんたろー。が可笑しくて癒やし。この日も「春日と型番が一緒。色の塗り方が違うだけ」「歳を重ねれば重ねるほどおもしろい。DJ KOOさんみたい」などさまざまな人物にたとえられていたが、美容の分野で「男性界のIKKO」を目指すと。これまで兼近の鋭い思考をテレビに合わせて言語化してきたりんたろー。だけど、その可笑しみもEXITの先鋭的な部分をマイルドに見せるのに重要な役割を担っているんだなあと改めて思った。

『タモリ倶楽部』

マンガ好きな川島の進行で絶滅の危機にひんしているという「スクリーントーン」特集。現在はデジタル処理することが主流でスクリーントーンを使うマンガ家は限られているそう。ゲストはスクリーントーンを愛するマンガ家の浦沢直樹と少女マンガ家の水瀬藍。

スクリーントーンは元々、イギリスで製図や建築図で使うために生まれたなどという豆知識を挟みながら、実際にその貼り方を見せていく。浦沢の超絶技巧は元より、水瀬の独特な使い方やそれを説明する語彙がおもしろかった。たとえば、「S-986」というトーンを貼るだけで「少女マンガ的にはふたりの世界ができあがる」と言ってみたり、通常、空に貼ることが多い「S-957」を服をぼかすように使うと「ふたりが付き合うことが確定する」といった、心の描写をトーンを使ってするのだと。

その見事な手さばきに浦沢がその場で『漫勉』への“スカウト”をするほど。一方、青年マンガでは、「洋服のトーンでキャラクターのムードが決まる」と浦沢が解説し、それぞれキャラクターごとに使うトーンが決まっていたことを明かす。

最後に、浦沢の描いたタモリの絵にタモリ&浦沢、水瀬がトーンを貼ることに。タモリ&浦沢は普通にロケで流浪する風のトーンを貼るが、水瀬が貼ると「恋するタモリ」風に。川島が「載ってる雑誌が違う」と喩えるように同じ絵を使っても、まったく違う感じになるのがすごかった。

やっぱりアナログ技術というのは、経験値はもちろん金銭的な部分がものをいうものだなとズラッと並んだトーンの種類を見て思った。デジタルは持たざるものが一気にそれらの差を縮めてくれる。それはやっぱり素晴らしいもの。一方でタモリも言っていた通りレコードがなくならないようにスクリーントーンのようなものもきっとなくならないし、なくなるには惜しいと強く思わせるとても見ごたえのある特集だった。

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