「MOROHAが好きな私でよかった」奥森皐月がMOROHA武道館で感じた“燃え盛る冷静”

2022.3.10

文=奥森皐月 編集=田島太陽


2022年2月11日、MOROHAが結成15年目にして初めて日本武道館でワンマンライブを行った。5年ほど前からMOROHAのファンである17歳のタレント・女優の奥森皐月が、現地に参加して改めて感じたMOROHAの魅力とは。


17歳の私から見える景色とMOROHA

MOROHAの武道館“単独”公演に行った。あの日から、毎晩寝る前に武道館の景色を思い出す。特別じゃないところが特別だった。最高にカッコよくて、最高に楽しくて、最高に悔しい。私の中にいるMOROHAという存在が、いかに大きいかを痛感させられる。

MOROHAを言葉で説明するのは非常に難しい。しかし、MOROHAに突き動かされた心はどうにか文字にできるのではないかと思った。17歳の私から見える景色とMOROHA。これらをどうにか、この記事を読んでくれる人に伝えたい。

知らない人のために、簡単にMOROHAを紹介する。

MOROHAは高校の同級生であるMCのアフロとギターのUKによるふたり組だ。

楽曲はすべてアフロのラップとUKが奏でるアコースティックギターの音色だけで構成されており、ジャンル分けができない独自の音楽を形成している。

シンプルながらも洗練され尽くしたバッキングに乗せられる、力強く魂を突き刺すように強烈なリリックで人々の心を掴んでいくふたり。

2008年の結成以来、唯一無二のスタイルを貫き、活躍の幅を広げながら2022年2月に初の武道館ワンマンライブを終えた。

百聞は一見に如かず、百読は一聴に如かずと言えばよいのだろうか。一度聴いてみればMOROHAとは何かがわかると思う。昨年末に出演したYouTube「THE FIRST TAKE」も話題になっている。初めてMOROHAに触れる人は、まずはその目と耳と魂で確かめてほしい。

MOROHA - 革命 / THE FIRST TAKE

傷心中に聴くと刺さり過ぎてしまうMOROHAの音楽

MOROHA『“単独” @日本武道館』(撮影=MAYUMI -kiss it bitter-)

MOROHAに出会ったのは5年ほど前。音楽が好きで、さまざまなジャンルを徘徊していたときに突如ぶつかった。未知との遭遇なんて生ぬるいものではない。4tトラックに乗った未知が全速力でぶつかってきて轢かれた。わからないのに自然と惹かれた。あり合わせの知識では理解ができなかったが、「すごいものに出会った」という感覚だけはあったと思う。ただ、そのころは衝撃こそ受けたが魅力を存分に楽しめてはいなかった。

それからしばらく時を経て『MOROHAの!オニヤンマ獲りにいこうぜ!』(文化放送)を聴き、本格的にMOROHAが好きになった。

それまでに聴いていたミュージシャンのラジオとは違った。全然カッコつけていない。深夜ラジオ好きにはたまらない、パーソナリティの人間性が見えておもしろい番組だ。ふたりの会話を聴いているだけで幸せな気持ちになれる。くだらない話や恋愛事情を聞くことで、カッコいい楽曲からは見えてこなかったふたりの姿がわかった。そこからますます魅力に気づいたのである。

知れば知るほど、楽曲を聴けば聴くほどMOROHAを好きになっていると思った。けれど、今思えばそれは少し違うのかもしれない。

悔しい思い、抱いた希望、傷ついた心、愛する気持ち、それらが積み重なり自分が成長するたびに、MOROHAの音楽が沁みるようになっていくのだと思う。だからこそ過去の私より今の私、今の私より未来の私のほうがMOROHAが刺さる。もっともっと好きになる。

MOROHA『“単独” @日本武道館』(撮影=MAYUMI -kiss it bitter-)

伊集院光さんはある日のラジオ放送でMOROHAの楽曲をOAしたときにこんなことを話していた。「深夜放送を聴いている人に刺さり過ぎてしまうのが心配だ」と。

実際、悩んでいるときや傷ついているときに聴くとえぐられる感覚がある。現実を突きつけられて、とても苦しくなる。MOROHAはきらびやかな未来や明るい希望を見せてはくれない。背中を押してくれるワケでもない。そのときは、絶望の淵に突き落とされたのかと錯覚するが、気づいたときには自分が勝手に這い上がりたがっている。そのような不思議なパワーを授けてくれるのがMOROHAだと私は思っている。

ちなみに、失恋したときにMOROHAを聴くのはあまりおすすめできない。刺さり過ぎて、致命傷になってしまう恐れがあるからだ。以前、私はそれでノックアウトした。立ち上がれなくなった気がする。私が弱いのではなく、それだけMOROHAの効力は凄まじいということだ。MOROHAのせいで、MOROHAのおかげで、これまでに何リットルの涙(かわ)が流れたことだろう。


「MOROHAが好きな私でよかった」

生まれて初めての武道館ライブはMOROHAになった。もちろんひとりで行った。いつだってひとりで聴いてきたのだから。私がMOROHAを聴きたいと思って、私の意志で足を運ぶ。当たり前だが幸せなことだ。その場にいる人が皆、その人の意志でMOROHAが好きで武道館に集まっているかと思うとワクワクした。ライブとはそのようなものなのだと、わかっているつもりなのに気持ちが昂ぶった。

勢いでグッズを爆買いしたこともまったく後悔していない。そして武道館前で近くにいた男性に記念写真を撮っていただいたが、盛れる撮り方をしてくれた。イケメンだったし。ありがとうございます。

いいライブだったことは言うまでもない。細かく記すのは野暮なのでやめておく。ライブの映像がU-NEXTで配信されているので観てください、としか伝えられない。ただただ、ライブが敢行され、そこに辿り着けたことを幸せに思った。

武道館でMOROHAを目撃したことで、新たに気づいた魅力がある。どこまでも物事を美化せず、事実を事実としてしか捉えていないということだ。夢の舞台に立てたとはけっして言わない。「武道館おめでとう」を振り払い、そこまで支えてくれた周囲の仲間にはおめでとうと言い放つ。マッチングアプリをやっていることも包み隠さない。最高だ。

人だから、誰しも孤独を感じるときはある。けれどMOROHAに悲観する言葉はない。恵まれている側面にも目を向けられるから、どこまでも悲劇のヒーローにはならないのだ。だから私も悲劇のヒロインとして生きることはない。楽しくても苦しくても人間なのだと感じる。

あの日の武道館にいる人は皆同じような気持ちだったのではないだろうか。好きなアーティストの武道館公演なんて、興奮するに決まっている。だけども、舞い上がる様子はなく地に足ついた人ばかりだと私は思った。開演前は、試験前のような張り詰めた空気感。終演後は皆足早に会場を立ち去り、誘導に従ってスムーズに列が進む。名残惜しそうな様子はあまり見受けられなかったが、どことなく列の内部に熱さを感じた。

MOROHAの先に、観客は何を見たのだろう。もしかしたら、自分自身を見ていたのかもしれない。ふとそう思った。燃え盛る冷静を、愛おしく思う。MOROHAが好きでよかった。

17歳、まだまだ少女だと思う。未熟で若くて青い。悩むし、嫌なこともあるし、悔しいことばかりだ。本当はカッコよくなりたいし、誰にも負けたくない。だからこそ、進みつづけるMOROHAに憧れている。勝ち負けじゃないと思えるところまで私はMOROHAに負けたくない。負けそうなときはMOROHAを見ればいい。

うれしいことに、2月から新たにMOROHAのPodcast番組『MOROHAの!ワリカン!』も始まった。ふたりのトークも好きなので、またひとつ日々の楽しみが増えて幸せに思う。

あたしMOROHAもっと聴きたい。聴きたいから行きたい。行きたいから生きたい。「MOROHAがいてくれてよかった」とはもちろん言えるが、「MOROHAが好きな私でよかった」と思わせてくれるのがまたひとつの魅力だ。

MOROHAが好きな私だから、何かが起こるって信じてる。

連載「奥森皐月は傍若無人」は、毎月1回の更新予定です。

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(たじま・たいよう)1984年生まれ。編集者。ニッポン放送『ももクロくらぶ』『ナインティナインのオールナイトニッポン』番組本や、『水溜りボンド トークライブ2020 オフィシャルブック』、テレビ朝日のウェブメディア『LoGiRL』記事コンテンツなどを制作。『あいちトリエンナーレ2019』音楽プログラ..

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