坂本龍一「そもそも国というものは国民を助けない」|得体の知れないD vol.01

2020.3.11
D2021 坂本龍一

Photo by Zakkubalan
文=坂本龍一


2020年3月11日。

東日本大震災からちょうど9年が経った今日、『QJWeb』で新たな連載がスタートする。その名も「得体の知れないD」。

2021年3月に行われるイベント「D2021」に向け、1年間つづく予定のこの連載。「D2021」とは何か、「D」とは何を意味しているのか。第1回目として、イベント実行委員会と、中心人物である坂本龍一からの声明を掲載する。

来るべき「D」に向けて。(D2021実行委員会)

私たちは震災から10年という、2021年を迎えようとしています。

この10年、どのような日々を歩んできたのか、そして次の10年をどのように生きるべきなのか。過去と向き合い、未来を志向するためのひとつの岐路に立っているのではないでしょうか。

そこで、坂本龍一とGotchが中心となり、震災(Disaster)から10年(Decade)という節目にさまざまな「D」をテーマとしたイベント「D2021」を、2021年3月13日と14日に日比谷公園にて開催します。

「D2021」は、不条理に対する抵抗の声(Demonstration)であり、民主主義(Democracy)を維持させるためのムーブメントです。ダンス(Dance)対話(Dialogue)を通じて、社会の分断(Division)を乗り越えることを目指しています。

「D2021」は、社会の別のあり方をデモンストレーション(Demonstration)する実験の場でもあります。イベント中は、資本主義社会の別のあり方を模索するさまざまな試みを企画しています。参加費無料はもちろんのこと、交換経済の可能性を探ることのできるアプリを構想しています。

「D2021」では、多様性(Diversity)を尊重します。主催者/参加者、アーティスト/観客という垣根を越えて、人々の対話の場となることを望んでいます。

「D」は未だ定義されない漠然としたものであって、多様な価値や意味を包摂するシンボルとしてみなさんに開かれています。

「D2021」開催をおよそ1年後に控えた2020年3月11日、こうしたさまざまな「D」を探るための連載がスタートします。ここでは執筆者それぞれが自由に「D」を端緒として自身の記憶や所感を紐解き、「D」を通じてその可能性を掘り下げていきたいと思います。

来るべき「D」に向けて。(D2021実行委員会)

国家というものは「棄民」するもの(坂本龍一)

坂本龍一
坂本龍一(Photo by Zakkubalan)

「D」ってなんだろう。

よくわからないまま、イベントのようなフェスのようなものを始めようとしている。と言われても読者は困惑するでしょうけど。わからないものをわかろうとするのは無理だよね。

今、新型コロナウイルスのせいで株価は激しく上下し、世界経済が危機的な状況に突入かというときに何を言ってるんだ、ですよね。でもこのカオスの既視感、どこかで見覚えないですか。2011年の再現じゃないの。

全国からコロナウイルスの検査が受けられないという悲鳴が聞こえる。このまま感染が拡大するとオリンピックができなくなるから、検査せずに隠蔽しているの? 放射能の影響が明からさまになるのが怖くて、福島や関東、東北の子どもたちの検査をしないのと同じ?

いきなり学校が休校になって困惑が広がっていますよね。学校を閉鎖しても、学童保育でまた集まるんじゃ、意味ないし、子どもたちは暇だからどんどん遊びに行っている。感染を避けるために会社を休めるのは「上級国民」だけという声も。

ま、そんな混乱が広がっているなかで、政府の方針はというと「ほとんど何もしない」……。

丸投げだ。めちゃくちゃだわ。民間が勝手にやれ、国は何もしない、高齢者を放置、人権無視。今でさえこんななんだから「緊急事態法」が成立したあとの日本社会を想像すると本当に怖くなる。

代替紙幣、多様性、脱構築……あらゆる「D」

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坂本龍一

(さかもと・りゅういち)1952年東京生まれ。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、YELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)を結成。 散開後も多方面で活躍。映画『戦場のメリークリスマス』(大島渚監督作品)で英国アカデミー賞を、映画『ラストエンペラー』(ベルナルド・ベルトリッチ監..

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