ハリウッド最大のスキャンダル映画化!など2023年1月のオススメ映画

2023.1.13

映画ファン必見の1月公開予定作をラインナップ! 映画評論家・映画ライターのバフィー吉川がセレクト&推薦する、注目の映画作品をお届けします。


ハリウッド最大のスキャンダルがついに映画化!『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

(c)Universal Studios. All Rights Reserved.
(c)Universal Studios. All Rights Reserved.

監督:マリア・シュラーダー
出演:キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー、サマンサ・モートンほか
2023年1月13日(金)全国ロードショー

ストーリー

ジョディとミーガンは共にアメリカ大手新聞社のひとつ、『ニューヨーク・タイムズ』紙の調査報道記者。大統領選挙から職場環境まで数多くの問題を調査報道し実績を残してきた。そんななか、ハリウッドから大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの数十年に及ぶ権力を行使した性的暴行の噂を聞きジョディは調査へと乗り出す。ジョディは産休中で産後うつ気味のミーガンと共に、さまざまな嫌がらせや生命を脅かされる目に遭いながらも懸命に調査をつづけるが……。果たして、自身の未来と引き換えに秘密保持契約と多額の示談金で口を封じられた女性たちを説得し記事で告発することはできるのか?

おすすめポイント

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)や『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』(2017)、『スイング・ステート』(2020)など、アメリカの汚点を描くことが大好きなブラッド・ピット製作総指揮によって、またもアメリカの汚点が描かれた!!

日本でも連日報道されたハリウッドの歴史的スキャンダル。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどを手がけた大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ、パワハラ事件。それを告発した実在の記者が書いた実録本『その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』を映画化したのだ。

2016年「FOXニュース」の会長兼CEOロジャー・エイルズによるセクハラ告発事件の翌年でもあったことから、テレビ・映画業界、一般社会をも巻き込んで#MeToo運動を巻き起こすきっかけとなった。

しかし、その告発はけっして簡単なものではなかった。声を上げるとその業界に留まることができなくなる抑圧された環境下で起こっていたことだけに、誰も口を開かなかったからだ。

事件を暴こうと奮闘するふたりの記者と、勇気を持って口を開いた被害者たちの闘いが全編にわたり描かれる。

子供を守るために必死に戦うパク・ソダムの雄姿『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』

(c)2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.
(c)2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.

監督・脚本:パク・デミン
出演:パク・ソダム、ソン・セビョク、キム・ウィソン、チョン・ヒョンジュン、ヨン・ウジン、ヨム・ヘラン、ハン・ヒョンミンほか
2023年1月20日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

ストーリー

“ワケあり”荷物を届ける特殊配送会社「特送」。天才的なドライビング・テクニックを持つウナが、ある日、引き受けた依頼。それは海外ヘの逃亡を図る賭博ブローカーと、その息子ソウォンを港まで運ぶこと。しかし、思わぬアクシデントにより依頼人不在のまま、ソウォンと300 億ウォンが入った貸金庫の鍵を抱えて追われるはめに。貸金庫の鍵を狙う悪徳警官ヤクザ、冷酷非情サイコパスな殺し屋、さらには「脱北」の過去を持つウナを秘密裏に調査する国家情報院までをも巻き込んだ、命がけの追走劇カーチェイスが始まる……。

おすすめポイント

ワケあり仕事もなんなくこなす運び屋で天才ドライバーのウナ。報酬がすべてというスタンスのウナは、命を狙われた子供を見捨てることができず、成り行きから助けることになってしまうが、ヤクザや悪徳警官が襲いかかる……という、巻き込まれ型のよくあるプロットだ。

しかし、今作が少し違うのは、ウナは天才ドライバーであっても、戦闘スキルがあるわけではないということ。だからこそ観ている側も逆に安心できない。それに加えて、仕方なく連れている子供だったはずが、なんとか守りたいという必死さと愛情の芽生えが伝わってくるのだ。

巻き込まれた人間がすべてにおいてパーフェクトであるほうがおかしな話で、弱い部分があるからこそ、キャラクターの魅力も増すのだが、その点において、絶妙過ぎるバランスでキャラクターが構築されているといえる。また、主演のパク・ソダムと子役のチョン・ヒョンジュンは、『パラサイト 半地下の家族』(2019)において、家庭教師と教え子の関係性だったふたりであることにも注目してもらいたい。


映画配給会社エクストリームが見つけてきたヘンテコホラー!だけど……『キラーカブトガニ』

(c)2021 RAVEN BANNER ENTERTAINMENT INC.
(c)2021 RAVEN BANNER ENTERTAINMENT INC.

監督・脚本・製作:ピアース・ベロルゼイマー 
出演:カート・カーリー、ロバート・クレイグヘッド、アリー・ジェニングス、プライス・ダーフィーほか
2023年1月20日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテ ほか 全国ロードショー

ストーリー

廃炉となった原発が爆破処理されたカリフォルニアのある海辺の町で、謎の行方不明事件が続発し、白骨と化した人間たちが発見される。保安官は当初、人喰いザメの出現を疑うが、被害者たちを食べたのはサメではなくカブトガニ、それも放射能の影響で凶暴化し、さらに巨大化したカブトガニの群れだった……。やがて1匹の殺人カブトガニがゴジラ級に巨大化し、町は壊滅の危機に陥るが……。

おすすめポイント

『食人雪男』(2020)や『ドーン・オブ・ザ・ビースト/魔獣の森』(2020)など地雷みたいな海外映画を配給してくる「映画配給エクストリーム」も、たまに『PITY ある不幸な男』(2018)や『奇蹟の人/ホセ・アリゴー』(2022)のような当たり作品を見つけてくるのだが、今作は当たりだ。

ロジャー・コーマンやトロマ作品、アサイラム作品のようなテイストのおバカ映画かと思うかもしれないが、実は『グレムリン』(1984)などのアドベンチャーやティーン向けホラーのオーソドックスなプロットを下敷きにしている。インディーズ作品だからこそのチープ感がジャマをしてくるものの、内容的には意外にも筋の通ったものとなっている。かと思えば、最終的には、やっぱりおバカ映画に着地しているのが逆に安心できるという複雑な気持ちにさせられる作品だ。

ピアース・ベロルゼイマー監督は、今作が長編監督デビュー作となる。一つひとつのエピソードとしては悪くないセンスの持ち主でもあることから、トロマ出身者である『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)のジェームズ・ガンや『サウスパーク』シリーズのトレイ・パーカーのように、将来的に化ける逸材かもしれない……。

時代によって終わりゆく文化の中で奮闘する者たちの生き様『グッドバイ、バッドマガジン』

(C)ふくよか舎/ピークサイド
(C)ふくよか舎/ピークサイド

監督・脚本・編集:横山翔一
脚本:山本健介、宮嶋信光
出演:杏花、ヤマダユウスケ、架乃ゆら、西洋亮、山岸拓生、菊池豪、岩井七世、西尾友樹、タカハシシンノスケ、長野こうへい、カトウシンスケほか
2023年1月20日(金)全国順次公開

ストーリー

オシャレなサブカル雑誌が大好きな詩織は、念願叶って都内の出版社に就職。しかし、そこはオシャレのカケラもないどころか、卑猥な写真と猥雑な言葉が飛び交う男性向け成人雑誌の編集部だった。理想とかけ離れた職場に最初こそテンションがダダ下がりの詩織だったが、女性編集長の澤木や女性ライターのハルなど、女性が「エロ」を追求している姿に刺激を受け、成人雑誌に対して興味を持ち始める。しかし、そんななか、編集部で取り扱っていた雑誌で「とんでもないミス」が発覚。それを境に共に激務を戦ってきた同僚の編集者たちが次々と退社。オーバーワークで心も体も疲弊し切った詩織だったが、さらに追い打ちをかけるように衝撃的な事実を知ることになる……。

おすすめポイント

時代の変化によって終わりゆく文化というものがある。成人男性向け雑誌、いわゆるエロ雑誌もそのひとつだ。2018年から2019年にかけて、外国人観光客やファミリー層などに配慮、そもそもの販売不振なども加わり、大手コンビニチェーンが取り扱いを中止した。

しかし、そんな雑誌にも作っている人たちがいるわけで、背景にはそれなりの苦労と葛藤がある。特にエロ雑誌においては、読者が文章をそれほど丁寧に読んでいるわけでもなく、求められているのはグラビアや付録DVDである。そこにどれほどまじめなコラムや社会派なコメントを掲載したところで目にも触れられない。

そんななかで、やりがいや自分らしさをどうやって見出し表現していけるのか、さらに、人はなぜエロを求めるのかをまじめに追及した哲学的な側面も描くなど、切り口がなかなか斬新。大泉洋主演で映画化もされた、出版社が生き残るための戦いの日々を描いた『騙し絵の牙』(2021)のエロ雑誌版ともいえるだろう。

今作は、あくまで成人男性向け雑誌の現場を扱っているし、ジャンル的に特殊性も多少あるかもしれないが、描かれていることはすべての出版社だけに留まらず、常に市場を意識し、生き残りをかけた競争に向き合わなければならない世界で働く人々に共通する物語なのだ。

一般市民の目線だからこそ浮き彫りになる異常な環境『母の聖戦』

(C)MENUETTO FILM, ONE FOR THE ROAD,LES FILMS DU FLEUVE, MOBRA FILMS,TEOREMA All rights Reserved.
(C)MENUETTO FILM, ONE FOR THE ROAD,LES FILMS DU FLEUVE, MOBRA FILMS,TEOREMA All rights Reserved.

監督:テオドラ・アナ・ミハイ
出演:アルセリア・ラミレス、アルバロ・ゲレロ、アジェレン・ムソ、ホルヘ・A・ヒメネスほか
2023年1月20日(金)公開

ストーリー

メキシコ北部の町で暮らすシングルマザー・シエロのひとり娘ラウラが犯罪組織に誘拐された。誘拐犯の要求に従い、20万ペソの身代金を支払ってもラウラは帰ってこない。警察に相談しても取り合ってもらえないシエロは、自力で娘を取り戻すことを胸に誓い、犯罪組織の調査に乗り出す。そのさなか、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉と協力関係を結び、組織に関する情報を提供したシエロは、誘拐ビジネスの闇を目の当たりにしていく。人生観が一変するほどのおぞましい経験に打ち震えながらも、最愛の娘を捜しつづけるシエロは、いかなる真実をたぐり寄せるのか……。

おすすめポイント

第34回東京国際映画祭にて『市民』というタイトルで上映された作品が劇場公開されることに。

日常的に誘拐や行方不明事件が多発するメキシコ。私たちはそれを映画やドラマというメディアを通して、離れた国のフィクションとして観ているかもしれないが、人身売買組織や麻薬カルテルはメキシコ内で暗躍していて、多くの被害者を出しているのも事実だ。本作は、メキシコに住む市民、普通の母親の立場から描いているからこそ、日常的に起こる行方不明事件の恐怖や不安が切実に描かれている。

首だけの死体、首しかない死体がゴロゴロと転がっている死体安置所などにも足を踏み入れながら、情報を集めていくうちに、いつしか事情通になっていくなかで、犯罪組織を撲滅したいと考えているメキシコ軍が近づいて、共同作戦になっていく流れは、アクションやエンタメとしても楽しめるが、それでは消化し切れない歯切れの悪さがあり、かつ、人間ドラマに落とし込んでいるところも印象的である。

本作は実話がベースになっている作品だが、メキシコが舞台と聞くだけで納得できてしまうのもおかしな話。フィクションの枠を大幅に超えているということを感じずにはいられないのは、やはり、ヒーローや警察ではなく、一般市民の目線から描いたからだろう。

閉鎖された環境のなかで人間はどうなってしまうのだろうか…『ピンク・クラウド』

(c)2020 Prana Filmes
(c)2020 Prana Filmes

監督・脚本:イウリ・ジェルバーゼ
出演:ヘナタ・ジ・レリス、エドゥアルド・メンドンサ、カヤ・ホドリゲス、ジルレイ・ブラジウ・パエス、ヘレナ・ベケルほか
2023年1月27日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

ストーリー

一夜の関係を共にしていたジョヴァナとヤーゴをけたたましい警報が襲う。突如として発生した正体不明のピンクの雲。それは10秒間で人を死に至らしめる毒性の雲だった。緊急事態下、政府はロックダウンの措置を取り、家から一歩も出られなくなった人々の生活は一変する。友人の家から帰れなくなった妹、主治医と閉じ込められた年老いた父、自宅にひとりきりの親友……オンラインで連絡を取り合ううち、いつ終わるともしれない監禁生活のなかで、彼らの状況が少しずつ悪いほうへ傾き始めていることを知るジョヴァナ。そして、見知らぬ他人であったジョヴァナとヤーゴも現実的な役割を果たすことを迫られる。父親になることを望むヤーゴに反対するジョヴァナだったが、長年のロックダウン生活の中で男の子・リノを出産する。パンデミック以前の生活を知らないリノは、家の中という狭い世界で何不自由なく暮らしており、父となったヤーゴも前向きに新しい生活に適応している。しかし、ジョヴァナの中で生じた歪みは次第に大きくなっていくのだった……。

おすすめポイント

『ソングバード』(2020)や『KIMI/サイバー・トラップ』(2022)など、コロナ禍をモデルとしたり風刺したりした映画が多く制作されているブラジル映画。本作は、偶然にもコロナ禍を予言してしまったと話題になっている。

ピンク色の雲に触れると死んでしまう……。といっても、今作は『NOPE/ノープ』(2022)のようなパニック映画ではない。ソリッド・シチュエーションのデスゲームでもない。

本作が描いているのは「外の世界を絶たれてしまった人間はどうなってしまうのか」ということで、精神的・感情的に子供の教育はどうするべきか考えさせる、実験的な作品にもなっている。

雲に触れなければ生きていられるのだから、安全な室内であれば、大好きな相手と一緒に過ごせ、一緒ならどんな困難も乗り越えられる……わけでもなく、毎日、毎日、顔を合わせていると窮屈になってしまうのが人間という生き物。

数カ月、数年とそんな終わりの見えない日々がつづいたとしたら、身体的には生きていられたとしても、生きている価値はあるのか……。そんな究極の問いを投げかけられるような作品だ。


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バフィー吉川 

2021年に観た映画は1100本以上。映画とインドに毒された映画評論家(ライター)、ヒンディー・ミュージック評論家。2021年9月に初著書『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房)を出版。Spotifyなどで映画紹介ラジオ『バフィーの映画な話』、映画紹介サイト『Buffys Movie & M..

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