90年代の音楽業界がいかにウハウハでわがままだったか、【鰻&塩カルビ】から伝わってくるその空気感(小宮山雄飛)

2022.9.29
小宮山雄飛「クイックジャーナル」2022年9月

文=小宮山雄飛 編集=森田真規


9月14日、通算10枚目のアルバム『Island CD』をリリースしたホフディラン。彼らが『スマイル』でメジャーデビューしたのは1996年、「音楽業界といえば、まだまだバブルがつづいていた時代」だ。

ホフディランのメンバー・小宮山雄飛は、そのころを「今では考えられないような贅沢やわがままが許された時代」と振り返り、「鰻に塩カルビ」について忘れられないエピソードがあるという──。


人生の中で一番濃い時間を過ごした90年代

90年代が始まったのは僕が高校2年生のときでした。

そして90年代が終わるのはホフディランでデビューして3年が経ち、初の武道館公演を行った翌年。

つまり、90年代前半は学生として一番多感な高校~大学時代、後半はミュージシャンとして(そこそこですが)世に知られる存在へと駆け上がって行く一番脂の乗った時期。いうならば、僕にとって人生の中で一番濃い時間を過ごしたのが90年代といえます。

そして、そのころの音楽業界といえば、まだまだバブルがつづいていた時代。業界全体が潤っていて、ウハウハしていて、今では考えられないような贅沢やわがままが許された時代です。

どのくらいウハウハしていたかを一例でいうと、ホフディランのデビュー前にインディーズで『ユウヒビール』というアルバムのレコーディングをしていたとき。スタジオでの作業は昼から夜中にまで及ぶことも多く、夕食はレコード会社が出前を取ってくれるのですが、なんとその出前が連日鰻重だったのです!

鰻ですよ、鰻!
今だったら鰻重なんて、めちゃ高級品ですよね。

シラスウナギの漁獲量が減少しててね、そこらへんの鰻屋行っても、鰻重3000~4000円なんて当たり前ですよ。いや、別に鰻の価格変化について言ってるのではありません。昔は鰻が安かったとか、そういう話ではないのです。

レコーディングで鰻重を取ってくれていたという話です。

当時まだ僕はレコーディング自体が初めての、ただの学生です。しかもレコード会社っていっても、インディーズですからね。ユーミンとかサザンとか、そういう人たちがメジャーレーベルから出すアルバムを、大きなスタジオでレコーディングしているとか、そういうのではありません。

都立大学前にある、リンキィディンクスタジオというめちゃ狭い安スタジオで、まだデビューしてない学生がちまちま録音しているだけです。そんな現場ですら、食事は出前の鰻重だったという、そのくらい業界がバブルだったということを言いたかったのです。

うーん、なんか規模がめちゃくちゃセコイですね。

もっとアメリカのミュージシャンみたいなね、自家用ジェットでどうとか、ホテルのワンフロア貸切でどうとか、そういう話があればいいんですが、都立大で鰻重食べてるくらいじゃバブル感ないですね。

90年代に体験した“かわいいウハウハ”

では、もうひとつ、いかにわがままだったかという例を。

デビューして2年目、シングル『欲望』が(そこそこ)ヒットして、わがまま言いたい放題のころです。大阪のある大きなイベントにホフディランが出ることになったのですが、正直僕らはそのイベントに出たくなかったのです。

ホフディラン - 欲望[Official Video]

僕らの出演は、小さなアコースティック用のステージだったのですが、そのころ僕らはバンドでのしっかりした演奏をしたい時期だったので、そのステージだったら出ないほうがいいんじゃないかと。

でもレコード会社はどうしても出てくれと。

今だったらわかりますよ、レコード会社が一生懸命営業して取ってきたステージです。むしろ、「ありがとうございます!」という感じです。

でもそのときは、わがままですから、そんな小さなステージでアコースティック編成だったら僕らは出ない!と断ったのです。しかし、レコード会社はホフを売り出すためにどうしてもそのイベントに出したい。

「出てくれ」
「絶対出ない!」
「頼む」
「嫌です!」

そんな平行線がつづくなか、わがまま三昧だった僕は
「条件つきだったら出てもいい」
という、まさかのデビューたかだか2年程度の若手ミュージシャンが、レコード会社と大イベントを相手に、条件つきで出演を許諾したのです。

その条件とは
「珍三カルビの塩ロースをおごってくれるなら出てもいい」
うーん、わけがわかりませんね。

珍三カルビというのは、焼肉屋さんの店名です(今でもあるようです)。そこの塩ロースをごちそうしてくれるなら、その大イベントに出てもいいよと。

実はこの直前のライブで大阪に行ったときに、この珍三カルビに初めて連れて行ってもらい、そこで食べた塩ロースがえらくおいしかったのです。なので、あのロースをまた食べられるなら、大阪行ってもいいぞと。

今となってみれば、これは果たしてわがままというのかなんなのか自分でもよくわかりません。レコード会社にしてみれば塩ロースでイベントに出てくれるなら安いもんです。

交渉は成立し、無事ホフディランはイベントに出演。そして終演後に出演バンドが全員出席する大打ち上げをボイコットして、珍三カルビに塩ロースを食べに行ったのです。

どうです、90年代の音楽界の空気感、少しは伝わったでしょうか?

<鰻に塩カルビ>

まあ、ウハウハでわがままといえば、ウハウハでわがままですが、実にかわいいもんですよね、そのくらいが90年代のJ-POPだったのです。

なんとなく、そのくらいの空気感というのを思いながら、90年代の音楽やファッション、カルチャーを見返してみると、90年代の魅力をもっと感じることができるんじゃないでしょうか。

ホフディラン(左から:ワタナベイビー、小宮山雄飛)
ホフディラン(左から:ワタナベイビー、小宮山雄飛)
ホフディラン『Island CD』
ホフディラン『Island CD』は発売中!

ホフディラン、アルバムリード曲「生まれ変わり続ける僕たち」MV公開!
監督:ALi(anttkc)、タイポグラフィ:かねこあみ、によるミュージックビデオを公開中!

ホフディラン「生まれ変わり続ける僕たち」【MUSIC VIDEO】

ホフディラン『Island CD』リリース記念のインストア&ワンマンライブ開催!
■『Island CD』リリース記念インストアイベント
日時:2022年11月23日(水・祝)13時〜
場所:タワーレコード渋谷店5F イベントスペース
内容:ライブ&特典会(写真撮影会、サイン会)

■『Island CD』リリース記念 ワンマンライブ『花』
12月18日(日)@京都紫明会館
12月25日(日)@Shibuya WWW
両日ともチケット発売中!

詳細は、ホフディラン『Island CD』特設サイトにてご確認ください。
URL:https://hoff.jp/p/islandcd/


この記事の画像(全3枚)



  • ホフディラン『Island CD』

    ホフディラン通算10枚目のニューアルバム『Island CD』

    デビュー26周年を迎えたホフディラン、通算10枚目となるニューアルバム『Island CD』をリリース。
    アニメ 『コジコジ』とのコラボレーションCMが話題になった先行配信第1弾「ココカラ銀座」(作詞・作曲:ワタナベイビー)、先行配信第2弾「生まれ変わり続ける僕たち」(作詞・作曲:小宮山雄飛)、先行シングル曲2曲を含む全12曲収録、渾身の新作!

    発売日:2022年9月14日(水)
    ■初回生産限定盤(CD+DVD)
    収録曲:CD全12曲、DVD全16曲
    価格:4,400円(税込)
    ■通常盤(CD)
    収録曲:CD全12曲
    価格:3,000円(税込)
    <購入者特典>
    ※初回プレスに限定盤と通常盤でデザインが異なるステッカーを封入
    ※タワーレコードとライブ会場購入者は、先着でアルバムのインスト音源CD付き
    (初回生産限定盤:M-1~M-6インスト音源、通常盤:M-7~M-12インスト音源)
    <CD収録楽曲>
    01.Island SE
    02.生まれ変わり続ける僕たち
    (アルバムリード曲/ミュージックビデオ9/3公開)
    03.デジャデジャブーブー
    (日テレ系『ぶらり途中下車の旅』イメージソング)
    04.病に臥して 
    05.スレンダーGF
    06.花
    (アルバムリード曲)
    07.Island SE2
    08.風の誘いで
    (日テレ系『ぶらり途中下車の旅』イメージソング)
    09.ココカラ銀座
    (アルバムリード曲/アサヒグループ食品カルピス健康通販「ココカラケア」CM曲)
    10.ガンバレ小中学生
    11.STEP BACK
    12.キミが生まれたから feat.かもめ児童合唱団
    (アルバムリード曲/NHK Eテレ『シャキーン』書き下ろし楽曲)

    関連リンク


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

小宮山雄飛

Written by

小宮山雄飛

(こみやま・ゆうひ)1973年、東京・原宿生まれ。1996年、ホフディランのVo&Keyとしてデビュー。音楽活動以外にもラジオ・テレビ・雑誌など活躍の場を広げ、今最も多くレギュラー・連載を持っているミュージシャンであり、カルチャー・流行面で同世代へ大きな影響力を持つひとりである。また、食通と..

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太