「やっても地獄、やらなくても地獄」ライブ自粛に翻弄される現場の声

2020.3.1

厚労省「個人事業主への助成予定はない」

新型コロナウイルス発生の初期段階、日本では「台湾は危ない」と話題になっていたのに、実際は逆なのかもしれない。このことからわかるのは、日本人の“全体の空気に流される国民性”だ。ツイッター発のデマによってトイレットペーパーが品切れになるなど、集団ヒステリーのようなものも起こっている。自分の頭で考えず、全体で思考停止に陥る。東日本大震災のときもそうだったが、これでは戦前と同じだ。

経済産業省では企業支援の施策を案内しているが、ほかにも国がこの状況を救う特別な措置は用意しているのだろうか?

経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」より

厚生労働省に問い合わせると、

「雇用保険に入っている中小企業については、融資や助成金の用意があるが、現在のところミュージシャンなど、個人事業主に対してなんらかの助成金を用意する予定はない」

との回答を得た。非正規やフリーランスが圧倒的に増えていくなかで、国家のシステムは一向に変わる気配はない。安倍総理は2月29日夕方に行われた会見でも、スポーツ・文化イベントの中止や延期、規模縮小を改めて求めたが、その保障について具体的に語られることはなかった。

一方、株式会社ペイノアは中止になったイベントキャンセル費用を最大全額・手数料0円で「前払い」するサービスを開始。クラウドファンディングサービス「READYFOR」は損失が発生したイベントに対して7%の手数料が差し引かれ、5%の決済手数料のみで資金を集められるプログラムを、「CAMPFIRE」は中小企業や個人を対象に通常12%の手数料が差し引かれ、5%の決済手数料のみで資金を集められる支援プログラムを発表した。国家のセーフティネットがほぼ壊滅状態にあるなかで、社会での相互扶助システムがWEBから生まれてきていることは注目に値する。希望はある。

僕はこのあとFacebookにこう書き込もうと思っている。

「日本還沒完蛋(日本はまだ終わってない)」



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神田桂一

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神田桂一

(かんだ・けいいち)1978年、大阪生まれ。ライター/編集者/総合司会。カルチャーからジャーナリズムの領域まで節操なく執筆。著書に『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』シリーズ(宝島社・菊池良と共著)。初の単著(ノンフィクション)をもうすぐ出します。

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