『ラブライブ!サンシャイン!!』のPRイラスト論争。批判の声に怒っているのは誰なのか?(清田隆之)

2020.2.18
清田隆之_クイックジャーナル

文=清田隆之 イラスト=オザキエミ
編集=田島太陽


現在進行形で炎上騒動となっている『ラブライブ!サンシャイン!!』のPRイラスト。「過度に性的」とされるイラストが公共空間に置かれることの是非は、過去に何度も大論争となった。では、批判側は何を問題視し、激しく反論する擁護派は何に対して怒っているのか?

「桃山商事」の清田隆之が、これまで1200人以上の恋愛相談に耳を傾け、ラジオやコラムで紹介してきたジェンダー論の目線から疑問点を整理する。


「過度に性的な表現」という批判を受けた広告たち

アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の主人公・高海千歌(たかみちか)を起用したJAなんすん(南駿農業協同組合)のPRイラストがツイッターで炎上騒ぎとなっている。これは静岡県沼津市の特産品である「西浦みかん」の広告で、この地を舞台にしている『ラブライブ!サンシャイン!!』とのコラボレーション企画の一環として制作されたものだ。

高海千歌の「みかん大使」任命を報じる動画。ここでも登場しているイラストが批判の的となった

批判を集めているポイントは、描かれているキャラクターのスカートがとても短く、また影のような線で股のVラインが浮き出るように強調されている点だ。

スカートが透けているようにも見えるし、風で股間にピタッと張り付いているようにも見えるし、太ももの付け根で挟み込んでいるようにも見える。こういった描写が、広告内容と無関係な「過度に性的な表現」ではないかというのが批判している側の論旨だ。

内容が「性差別的だ」と批判を受け、企業や公的な機関の広告がツイッターで炎上する事態はこれまでもたびたび起こっている。記憶に新しいところで言えば、昨年の秋に日本赤十字社がマンガ『宇崎ちゃんは遊びたい!』を献血ポスターに起用し、乳房が強調されたキービジュアルに同様の批判が集まった。また過去には、海女をモチーフにした三重県志摩市のPRキャラクター「碧志摩メグ」や、東京メトロのイメージキャラクター「駅乃みちか」なども話題になった。

『宇崎ちゃんは遊びたい!』
『宇崎ちゃんは遊びたい!』3巻。日本赤十字社のポスターではこのイラストが使用された

繰り返される「反対派VS擁護派」の大論争

これらが炎上騒ぎになったのは、批判の声が多かったからだけではない。批判に対する異論や反論も同様かそれ以上の規模で巻き起こり、反対派VS擁護派の様相を呈した大論争が毎度ツイッターを中心に繰り広げられている。

たとえば『ラブライブ!サンシャイン!!』の件で言えば、「過度に性的な表現」という批判に対しては「パンツが透けてると見るほうがおかしい」「単なるスカートのシワに性的視線を向けるな」などの声があり、また「線の描き方が不自然」という指摘に対しては、「体勢によってはこう見えることもある」と実証まで試みる人もいれば、「原作からしてこう描かれているから問題ない」という趣旨の声も多い。

もっと過激なものになると、「単なる言いがかり」「クソフェミの妄想」「作家や表現の自由に対する冒涜」「毎度のオタク叩き」「気に入らないものをつぶしたいだけのクレーマー」「どうせお前らみかん買ってないだろ」「むしろJAなんすんへの風評被害」といった旨の声もある。これはほかの炎上騒ぎにも共通した構図だ。

これらの論争にはたくさんの論点が含まれており、ひとつひとつを検証していくためには相応の知識や繊細な議論が必要になってくる。個人的には批判の声に同調的な立場だが、問題の是非を判断できるほどの知識を持ち合わせているわけでもなく、ましてや『ラブライブ!サンシャイン!!』をちゃんと観たこともないため、さまざまな意見を読みながら勉強中というのが正直な現在地だ。

ただ一点、心底よくわからないのは、擁護派(批判に対して反論している側)は一体何に対して怒っているのだろうか、ということだ。

批判の対象になっているのは男性たちではない

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清田隆之

(きよた・たかゆき)1980年東京都生まれ。文筆業、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。早稲田大学第一文学部卒業。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオなどで発信している。 『cakes』『すばる』『現代思想』など幅広いメディアに寄稿するほか、朝日新聞..

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