でか美ちゃんが「幸せへの正しい道筋」を考える。『ゴッドタン』で“腐り芸人”サスペンダーズ古川が与えてくれた気づき

でか美ちゃん

文=でか美ちゃん 編集=高橋千里


でか美ちゃんが「テレビから聞こえてきた金言」について考える連載、第10回。今回は『ゴッドタン』(テレビ東京)より。


価値観を更新することで生まれる“おもしろさ”

日々さまざまな情報がもはや自動的に入ってくるなかで、あらゆる価値観を更新していかなくてはいけないなぁと自分なりに気をつけている。

気をつけていても間違えることがあるのだから、気をつけるに越したことはないのだ。

コンプライアンスだとか表現の自由だとか、すべてはゾーニングありきのものだと個人的には思う。だから大好きなテレビやバラエティも、ゴールデンの番組と深夜番組ではまるでおもしろみが違う。

価値観の更新が日々行われていくと窮屈さを訴える人も少なくはないが、よくよく見ていくと、実は棲み分けが進んでいたり、決められた枠内での挑戦が個性を引き立てていたりして、各々の持ち場ではより伸び伸びと遊べるようになったとも思う。

そもそも窮屈を過剰に訴える人に対しては、その苦しみを今までごく一部の人に背負わせていたことに対しては……どうします?と思ってしまうので(自分も背負わせていた一員として)。

まぁなんというか、みんなでジワジワと生きやすくなっていきましょうや、という気持ちです。

「幸せって、自分から追い求めると逃げていく」

テレビ東京で毎週土曜深夜に放送中の『ゴッドタン』は、出演者の人間味が愛おしく映るような企画が多くて大好きだ。人の痛みや心の柔らかい部分を鋭く衝くことで、結果的に優しさに着地する不思議な魅力がある。

どストレートに超バラエティでもあるし、ドキュメンタリーのような側面を感じることもある。

最新回で扱ったのは「腐り芸人オーディション」。同番組で大人気の腐り芸人企画だ。

そもそも「腐り芸人」とは、メディアに迎合できなかったり、お笑いや相方への想いをこじらせたりした結果腐ってしまった芸人たちを表す言葉だ。

この「腐り芸人」というジャンルが生まれたこと自体も、そして人気企画になったこともすべて含めて、『ゴッドタン』の優しさや懐の深さを感じる。

今回は新たな腐り芸人を発掘するためにオーディションを開催。当然、オーディションでは「腐り芸人三銃士」ことハライチの岩井(勇気)さん、インパルスの板倉(浚之)さん、平成ノブシコブシの徳井(健太)さんも見守っている。この人たちなしでは今の「腐りブーム」はなかったのだから、偉大な存在だ。

御三方がそろい踏みな時点で、確実に最高の土曜深夜になる……そう思いながらテレビを観ていると、やっぱり金言が聞こえてきた。

「幸せとかポジティブなことって、自分から追い求めると逃げていって……」

腐り芸人候補として登場したサスペンダーズの古川(彰悟)さんが、心からこぼれ落ちるように話す。深夜に聞く言葉としてはあまりに重く、そして発言する本人が妙に飄々としているので、よけいにスルリと入ってきた。

古川さんはつづけてこう言った。

「不幸は逃げたら追いかけてくるって認識があって。だから幸せとか、テレビに出ることに対して出たいとか思わないほうが、逆に舞い込んでくる……」

これには板倉さんも「胸を打たれるわ」とひと言。古川さんの悟りっぷりに、本来ならば相方の腐りを主張しに来たはずの依藤(たかゆき)さんの表情が、あれよあれよという間に曇っていく。

「俺が間違ってますか?」

やる気が満ちあふれていることも、ポジティブに変えていくことももちろん正しい。でも、古川さんだって正しい。

しかも古川さんは、一見ネガティブなように見えて、不幸に向かって行くわけではない。幸せを手に入れるためのスタンスが人とは少し違うだけ。

腐っていたって正しい。腐っていなくたって正しい。

そもそも正しさや腐りをジャッジすること自体がおこがましいことかもしれないけれど、澱(よど)みの中にいる人間をホイッとすくい上げる、この“ホイッ”はほとんどの人が他人に対してなかなかできないことなんだと思う。

古川さんのための企画かと思いきや、依藤さんに気づきを与える回になったのも、『ゴッドタン』という番組だからこそできる優しさであり、意地の悪さでもあり……!

すくい上げたその先は知らん顔するところも、『ゴッドタン』らしさだなぁと思う。めちゃくちゃ面倒見がいいのに、成長はお任せしますという一貫したスタイルが絶妙な緊張感を保たせる。


もはや、ひとりの人間のドキュメンタリー

番組全体、そしてきっと私のように多くの視聴者も古川さんの考え方に傾き、依藤さんの価値観が揺らぎ、本音を吐露し始める流れもめちゃくちゃにおもしろかった。

心が解放されていくスピード感と“真実の壁”、さっきまでとは打って変わって晴れ渡るような表情でオーディションに向き合う依藤さんの最後のひと言、シンプルに大笑いしました。

ひとりの人間のドキュメンタリーとTVショーとしてのバラエティが、何度も何度も反転し乱反射して、芸人を照らしていく。

観終わったあとはなぜか私も清々しい気持ちになれました。

TVerでも4月23日深夜まで見逃し配信がありますのでぜひ!

古川さんのように背伸びせず、依藤さんのように変化を恐れず、そんな人間になりたいですね。

【関連】インパルス板倉も「胸打たれるわ!」若手芸人サスペンダーズの持論

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